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ここから始まった僕の物語

 皆さんはじめまして、僕の名前は狸元(りげん)。昔いた組織の異名をそのまま使っている。何故それが僕の名で紹介するかと言うと、僕は本当の自分の名前を知らないで今まで生きてきたのだ。知らないのは名前だけではなく自分の誕生日も歳も未だに僕は知らない。でも何で狸元と言う名を付けられたかは説明が出来る。その説明をする前にまず始めに僕がいた組織の事を説明しなければならい。 

 僕がいた組織の名前は『(もと)』この組織では女性なら『○(げん)』、男性なら『(がん)○』と別れている。○の部分はその者の役を動物で表している。僕の場合は元の前に狸があり、この役は敵陣の機密情報の収集や変装等をするスパイとしての役の意味を持って『狸元』と着いたのだ。【狐じゃダメなの? 】と言われるが理由は二つあり、一つが既にその名を持つ者がいた事。もう一つは狐の七変化狸の八変化と言う(ことわざ)にそって付けられたのだ。狐の名を持つものより上そして他の連中よりも上と言う意味があって僕は狸元と付けられたのだ。正直僕はこの(ことわざ)があまり好きではない。意味としては上には上がいると言う意味ではあるが、具体的には狸の方が変化は一枚上手とされる一方で、狐は演技力を用いて巧みに出し抜くのに対し、狸は単に化けて脅かすのが好きだと言われている。つまり量より質か質より量かと言う二択の問いにもなってしまい質では劣る事になっている。僕がこれからお話しするのは僕がどんな人物でどんな人生を歩んできたのかをみんなに話そうと思っている


 数十年前、とある村

 此処は町としては国に認められる事が出来ておらず人の人望のみで出来た小さな村。此処の人達は行き場を失い路頭に迷う者や武者修行者が長に惹かれて自然とできた小さな村。皆金銭を持たず一人一人が分け与える心を持ち、食物や飲料も村のものが工夫をして生活をしているのだ。各国の長は此処の村を厄介な村と確信しどうにかして潰す事を考えていたのだ。それは此処の土地が農作物が生き生きと成長し清らかで美味しい水が通っている国の利益を得る重要な場所だったのだ。だが此処の村は安易に国が手を出して良い村ではなかった。幾たびの戦場を潜り抜けてきた猛者どもが集まっているため小さな村を落とすには大きなリスクを伴うことになるが放置しとけばやがては厄介な事になる。その事を一番に危機を感じたある隣国の会議では

「例の村の件ですが如何なさいますか国王様? 」

 国王は迷っていた。もし戦争になった場合必ずその情報が隣国にまで知れ渡り、弱くなった所を狙われ、放置しとけば必ず領土を求め戦争になる。どちらを選択したとしても自分の国が近い将来潰れてしまう事が安易に予測が立てる事が出来たのだ。 

「うむ。困った事だな。攻撃を仕掛ければ戦争になり我が国民の命が多くなくなり一次的に戦力が大幅に弱まり、放っておけば村はどんどん大きくなってやがては町として、いや国として成り立ってしまう。迎え入れる交渉も既に決裂している どうしたものか? 」

 国が残る手段を考えていた時だった。

「私達の組織がその村を潰しても構わないよ」

 何処からか声が聞こえた

「何者だ 姿を現せ! 」

 近衛兵が大きな声をあげ国王を守るように囲み声の主を探していた。天井から何者かが降りると同時に近衛兵を瞬時に気絶させ、一人の男の姿があった。

「初めまして国王様。私は(はじめ)と申しまして組織【(もと)】の長を勤めている者です」

 (はじめ)とかいう男は軽く御辞儀をして王に話しかけていた。国王は現状を把握し問い掛けた。

「貴様は何者で何が望みだ。この国に協力して貴様に何の得がある? 」

 国王は質問しながらも窓の外にゆっくりと移動をし逃げる準備をしてたが王の背後にいつの間にかもう一人の姿があった。

「そんなに警戒しなくても大丈夫ですよ。(はじめ)様は王様と交渉しに来たのですから」

 背後に立っていた女性の剣士が国王の肩を掴み話しかけた。国王は自分が逃げられないと悟った。元と言う男が国王に近づきながら交渉を始めた。

「我々が欲しいのは領土でなく組織を維持し続ける為の訓練場と金のみ。この国が提供してくれるのであればその村の者共を抹殺し今後も裏側から王を護ってやる。断ればこの国には本日をもって崩壊してもらうがどちらがいい? 」

 選択肢のない選択に王は頷き(はじめ)に返答した。

「分かった。貴様の言う通り、あの村を壊滅できれば貴様が望むものを用意しよう」

 国王の言葉を聞いて笑みを浮かべた二人は窓から外に出た。王は絶望してしまった。村が残っても(もと)とか言う組織が残っても自分の国が救われる事がないと理解し立ち竦んでしまった。

 (はじめ)と女性剣士が高速で移動しながら作戦を話し合っていた

「例の村には元狐(がんきつね)が既に数ヶ月前から潜入しています。彼一人に任せますか? 」

猪元(いげん)、君は相変わらず行動が早いね! ただ彼一人では流石に荷が重いだろ。こちらの被害を出さず終わらせる」」 

「分かりました。では私と元龍(がんりゅう)も向かう形でいきます」

 (はじめ)は猪元に言われた事を少し考えた。

「私も同行しよう。君らだけで事足りるが念には念を入れとけば確実だ。決行は明日元龍と元狐には伝えとけ」

「承知」

 猪元と(はじめ)は二手に分かれ姿を消した。そして翌朝、(はじめ)たちは動き村を襲った。(はじめ)は自分達の犠牲者を出さずほぼ無傷で村を壊滅させた。

「元様今回の戦利品です」

 猪元は赤ちゃんを抱え(はじめ)に見せた。

「では一度各国に散ったメンバーを集めとてくれ。一週間後に此処に集合だ! 私はあの国の王と話してくる」

 (はじめ)は王のもとに行き、村を壊滅した事を報告した。

「王よ。これが私の組織『(もと)』の実力だ では約束の報酬を用意して貰おう!」

 国王は(はじめ)の言葉に頷き案内をした。

「此処に貴殿が望んだ契約書がある。好きな土地を選ぶと良い。そこの土地を貴殿に与え、金も必要な分だけ連絡くれれば好きな額を渡そう! 」

 元は国王の段取りの良さに何かあると悟り部屋の中に入った。すると辺りには銃を持った兵士が数十名が囲むように構えていた

「これはこれは皆さん自殺希望者ですかな? 発砲すればそのものを殺す。  国王あなたの意図を聞きたい」

 銃を構えた兵士たちは動けずにいた。自分達の命は引き金を引いた瞬間に殺されるのと全員が理解をし、王に逆らえば命令違反になりどんな処分を下されるかという恐怖から撃たねばと全員が理解している。頭の中に、撃つと撃たないの指示が入り困惑して動けずにいたのだ。

「国王を兵士はどうやら理解してくれたみたいだ。自分たちが自分たちの命の引き金を引こうとしていることを! 私は優しいから今回の君らの行動は私へのテストという事にしてあげよう ただし誰か一人でも発砲すればこの国はその瞬間に滅んでもらおう」

 (はじめ)の言葉に安心した兵士達は国王の支持の前に銃を降ろした。

「宜しい 国王では交渉の続きだが」

 こうしてこの国の一部は(はじめ)の物となり形上国を外敵から守る集団になりその代わりに国は彼らに対し生涯の支援を約束したのだ。彼の望みは組織の拠点と訓練場と衣食住の負担だった。国は彼の望みを叶え直ぐに用意をした。

(はじめ)殿拠点や訓練場の施設にはどうしても3ヶ月ほど掛かる それまではこの城を拠点にしたら如何かな? 」

 国王の心変わりの速さに驚いた(はじめ)は訳を尋ねた

「どういう訳だ。先程まで私を厄介者と感じた貴様が、こうもあっさりと協力的になったのだ。理由を聞こうか」

「簡単な話さ。先程の状況で我が兵達は、あの状況で貴殿に負けを認めたのだ。即ち今の我が国では貴殿一人にも敵わない事になる。ならば貴殿を厄介と認識をするので無く貴殿を味方と思い、全力で支援すれば国は守れると思って貴殿に協力的になったのだ」

 国王の真意は分からなかった(はじめ)だが今の所は敵意がない事が判断できた。

「では国王の提案に乗っかるとしよう」

 (はじめ)は納得をして城を去った。それから1週間が経ち組織は全員揃って国の城の中に入った。(はじめ)は国王が用意した場所を使って散った組織が集め、戦利品を並べた。その戦利品とは数十名の赤子だった。

「では例の物をこの子らに入れるとするか、さて今回は何人適合者が現れるかな」

 (はじめ)は全ての赤子に注射器で薬を投与した。結果残ったのは6人が生き残った事に(はじめ)は喜びを感じていた。

「どうやら今回は6人も適合者が居たか。前回もそうだったが中々いい人材が集まってくれてこれでこの組織ももっとでかくなり世界を我が手中に収めることができる」

 その夢を叶えるため組織(もと)は全力で国の護衛と育成に力を注いだ。(もと)が集めた全ての子供達のなかで薬の適合者は赤子から3歳までに限られ全部で百人は超えていた。

 10年という年月が流れ生き残った子供達は10名にまで減少していた。ある時(はじめ)が子供達の前に立ち10名の子供達に四つの武器を用意した。剣・巻物・槍・盾の四つだ。

「さて過酷なトレーニングを耐えた君達にプレゼントを用意した。今から呼ばれた者は前に来て好きな武器を選べ まずはNo.28」 

 男の子が前に出て刀を持った少し経つと男の子は悲鳴を上げ倒れた。

「次はNo.34お前だ! 」

 今度は蒼髪の少女が先程ほどの男の子が持った刀を持った、その瞬間少女と刀が微かに光った。その後少女は悲鳴を上げる事なく刀を持つ事ができた。その瞬間何故か体が軽くなった事に気が付いたが余り興味が無く気にしなかった。(はじめ)は少女に近づき刀の説明をした。

「この刀は妖刀『無』 この説明をしてやろう

 ・触れた者はその触れている期間の能力を無効化される。勿論この鞘に触れた者もだ。

 ・斬られた者は数時間能力が使えなくなり発動中の技も無効化され消える。斬るのが人で無くても技を消す事が出来る 魔術や妖術、結界や呪術等を斬ればそれが無効化され消す事が出来る

 ・この刀を持っている限り技の影響を全て無効化する

 ・その対価としてこの刀に選ばれし者はその代償に生涯の能力が無くなる

 今日から君はこの刀と共に成長をし、まだ知られてないこの刀の力を発揮させ我が組織の矛となるように! 今日から君は刀の使い方をこの者が個人的に教える、来い猪元。今日からお前の弟子として育てろ」

「承知 」

 No.34は猪元の背後に立ち次の者が呼ばれた。

「では次No.46お前だ」 

 今度はブロンドヘアーの少女が選ばれた彼女は武器の所に向かい巻物を選んだ

「ではその巻物を開いて手を当ててみろ」

 少女は言われるがままに行動をした。すると巻物の中から狸の精霊が8匹現れ少女の周りをグルグルと回って精霊が少女の事を査定をしていた。

「お〜いお嬢さん! 」

一匹の狸がNo.46に声をかけた。

「俺の名前はポンこの中では1番下っ端だ。よろしくな! 下から順に名前を言うぞ 『ボン』『ブン』『プン』『トン』『モン』『コン』『ドン』だ 姿は皆似ているけど性格は全然違うからな! 」

No.46は何が何だかわからないまま狸たちを見ていた。少し時間が経つと狸たちは少女にハイタッチを求め少女は狸の指示に従って狸達とハイタッチをした。すると狸達は少女の体内に入り込んだ。

「この子も合格だな お前は今日からスパイを専門としてその術を身につけろ勿論その精霊の力もコントロールしろ その術を教えるのは元狐お前だ」

 突如細い体の男がNo.46の背後に現れた。その男は白髪のロングヘアーだった。No.46はお辞儀をして背後に立った。そして次々と呼ばれ結局残ったのはNo.34とNo.46だけが生き残り、他の者は適合者でなかった為亡くなった。生き残った二人は長い地下生活から地上の生活に移動され、彼女らは初めて外の世界を見た。

「これからどうなるの? 」

 No.46は眩しそうにしながら元狐に尋ねた。元狐は目線を少女の位置に合わせるようにしゃがみ答えた

「これからお前は俺と一緒に訓練を2年程行いこの組織の一員になれるように俺がお前を育てる」

 元狐はそう言ってNo.46を掴み(はじめ)の方を見てお辞儀をして姿を消した。

 豬元とNo.34も(はじめ)にお辞儀をして姿を消した。四人の気配が遠くなった事を確認し(はじめ)は王城に向かった。王城に着いた(はじめ)は歩きながら部下を呼んだ。

元亀(がんがめ)何処にいる! 」

 その声を聞いた瞬間一人の男が現れたその男は服越しでも判るぐらいのぎっしりとした筋肉質で頭に布を巻いていた

「お呼びですか()()()(はじめ)様」

「そんな呼び方をするなと何度も言っただろ何代目なんて関係無いだろ今の組織は私が作りあげたんだから それともお前らの師であった2代目を殺した事がそんなに憎いのかな? まぁいいそんな事はどうでも。暫く私たちの組織は国を離れるがあの拠点とこの国の護衛を頼むぞでは」

  姿を消した(はじめ)に軽くため息をついた元亀だったが後ろから女性が近づいてきた

「こんな所に居た国王(お父さま)が呼んでましたよ。私達の結婚式についての話みたい」

「あぁ今行く」

 元亀は(はじめ)の行方を気にしながら王室に向かった。

 その頃元狐とNo.46は新たな場所に到達していた。

「さてまずは山に籠って訓練だ。この山は霊宝山(れいほうざん)と言って精霊と共に修行ができる数少ない場所の一つだ。まずここで貴様の精霊の狸達を自身の支配下にコントロールするんだ。 1年間までにある程度の術と身のこなしをつける。今までの訓練と比べ物にならないから覚悟しておけ」

 元狐はそう言って早速訓練を始めた。攻撃の仕方や回避の仕方、武器の使いかたや武器の奪い方、精霊の使い方など緊急時に必要な事を半年間徹底的に教えた。

 それから一年後No.46は元狐が認めるくらいの身のこなしをつけて旅をする事にした。

「師匠どうして訓練やめてこれから旅をするんですか? 」

「お前と俺の仕事はスパイとしての行動を中心として動く、変装等を駆使して相手を騙して情報を得る。その為には、どこの言葉も最低限は言えるようにならないと場所によっては見抜かれて始末される場合がある。一年間お前を鍛えたのも、万が一我らの変装や正体がバレて追われる身になったとしてもある程度強くなれば相手も追ってこないのさ。警戒が今後されるがな。」

「じゃぁ今からはその言葉のお勉強ですか? 」

「いや言葉の勉強と変装の慣れだ。お前は今から一週間男の変装をし、いかなる場合も解くな。少しの恥が任務失敗に繋がる。これから一年間は俺が言った者の変装をし、恥などを消して貰う」

「分かりました師匠」

 No.46は満面の笑みで返事をして、元狐の言う事にほんのわずかな疑いもなく返事をした。その顔を見た元狐は変な子だと思い微かに笑った。その事を見たNo.46は嬉しくなり村まで手を繋いで歩いた。

「よしもう直ぐだな。とりあえず20代前半の男に変装だやってみろ」

「はい!ちゃんと見てくださいね私の変装 。  ポン行くよ『変装』」

 No.46の掛け声で一匹の狸の精霊が現れその狸の力を借りて変装した。変装はしっかりとでき満足そうにしたNo.46だが、元狐は一度No.46を物陰に連れて行き身体検査を隅々までした後に頷いた。

「よし細かいところまで問題は無い後は男口調に慣れろ」

 No.46は不思議そうに元狐の顔を見た。

「なんで私は女性ではなく男性に変装したのですか? 」

 ため息をつき元狐は答えた。

「今の世の中は基本的には男が中心に戦や仕事をしているからな、中には女性もいるが人数が圧倒的に少ない今、潜入するとしたら男性という事になる。勿論ずっとでは無い。村や町、組織に入り俺らが化けるターゲットを見つけ、そのものの行動パターンや話し方等を覚え、始末して化けるのだ。始末しなくても絶対に動けなくしバレないようにすればいいという事だ。今のお前に足りないのは男性の仕草や口調などだ。その訓練だと思え」

 元狐は細かな指摘などをして色々とNo.46に教えたのだ。その指導は厳しく少しの妥協も許されなかった。ため息の仕草から歩き方まで隅から隅まで調整し風呂の時もトイレの時も一切の妥協なく徹底的だった。その指導あってかたった半年後にはNo.46の一人称が私から僕に変わってしまっていたのだ。

「先生僕達はいつまで旅を続けるの? 」

 元狐はNo.46を見ながら少し考えて答えた。

「何だ旅が飽きたのか? これはお前のスパイとしての能力を高める旅だ お前が一人前になればこの度も終わる。 だが今のままじゃ到底無理だな」

「師匠お言葉ですがここ数ヶ月間僕の変装はバレてません そこの何処に問題があるのですが? 」

 No.46は元狐の言葉に不満を抱いた

「今のお前がバレてないのはその対象が戦闘を行なってないからだ。戦いになれば確実にバレる。今のお前は見てくれだけ誤魔化しているにすぎない 」

「でも僕は師匠から多くの事を教わりある程度の武器や技は使えます」

「それがダメなんだよ ある程度では戦闘になった瞬間バレる。 変装した状態ではまず動きづらいし、人と入れ替わっての変装の場合は、その者の些細な仕草や癖、特殊な技を真似る事が出来ない」

「師匠は出来るのですか? そんな事‼︎。 微々たる癖や仕草等、特に特殊な技などを真似る事が」

「出来るさ。  だから言っているんだよ。 勿論お前にもそうなってもらう。 次の村からはその特訓をするが今度ばかりは貴様は死ぬかもしれないが覚悟だけはしておけ」

 現代

 ここまでの話は『(もと)』の歴史書に書かれてたことだよ。この歴史書に書いてある事が事実かどうかは知らないけど、僕が覚えている中で言える事がある。僕が育った時代は争いが多く行われていた時代だったんだ。勿論組織『(もと)』の創造者、初代様の時代は僕がいた世界よりもっと争いが多かったらしい。国と国の争いではなく、初代様がいた時代は誰が国の長を勤めるのかを決める争いが行われていた。力ある者も統率力がなければ闇討ちされ、その逆は力で潰されていた時代。少しの油断も許さず誰を信用するか慎重にしなければ生きていけない世界だったらしい。そんな中その場から追い出された者や合わなかった者、死にかけた者をを集めてできた組織が(もと)だ。因みに組織の名前『(もと)』の意味と、組織の長の名前『(はじめ)』の意味があり、組織名の(もと)は元々いた場所から追い出した者捨てた者共を復讐する事の意味である。長の名前の『(はじめ)』様は周りからは必要とされず追放された者に生きる場所と目的を与えてくれた初代様の本名、(はじめ)様に敬意と感謝の意味を込めて僕らの名には『元』が使われ、二代目様が初代様を敬愛しその名を受け継ぐ事にしたのだ。 なんでこんな話をしたかって?  物事には必ずしも意味があるって言うからさ、僕らの名前の意味を知って貰おうと思ってね。 余談はこの辺にしといて続きを話すね。 此処からは僕もしっかりと覚えている事だから詳しく話せるよ。



 師匠が僕に新たな課題を言い与え、それを目標に僕は人を観察する様にした。変装する対象を観察し自分が劣っている部分を見つけ数日で克服する。それが無理ならその身近にいる者に化け情報を得る事にしていたが僕は師匠にその考えを怒られた。

「お前はまるで解ってないな。 お前の考え方は今までと同じで非戦闘員に化けようとしているだけだ。 その程度の変装なら誰にでも出来る事なんだよ。 何の為にお前が特訓しているか考えろ! 」

「師匠お言葉ですがこの方法以外に僕は知りません。 近くで戦闘でもしてくれない限り戦い方が解らない以上戦闘員に化ける事など無理です。」

 僕の返答に師匠は笑った。何故笑われたのか理由を幾つか思い当たる事があった。僕が相手の技を盗める技量が足りない事か観察が足りない事だと思った。どんな理由にしても僕の力不足で笑われたと僕は思った。師匠は僕の頭を掴み答えを教えてくれた

「なんだ解ってんじゃねぇか! お前の言う通り戦闘員の技を盗むには戦闘させるのが一番早い! だが今の時代だぁそんな運良く戦闘などしてくれる筈も無い じゃぁどうする?  簡単な話だお前がそいつと戦えば良いのだ」

 この時初めて師匠があの時言った言葉の意味を理解した。師匠は僕に【次の村からはその特訓をするが、今度ばかりは貴様は死ぬかもしれないが覚悟だけはしておけ】その意味が−死にたくなければ、相手の技を盗み自分が化けれる環境を作ったら殺せ。 さもなくば生きる意味なし。− その言葉を思い出し僕はゾッとしたのだ。僕を此処まで育てた師匠が、僕に生きる価値があるかどうかをこの特訓で見極めようとしている。逃げても、失敗しても、時間内に出来なくても、待っているのは殺されると言う事。生き延びる為には、いつまで時間があるのか解らない制限時間内に特訓を成功させなければならい。僕は地下で育てられた時から、いつでも死ぬ覚悟ができていたはずだった。何故なら物心ついた頃から周りが死んでいくのを見て、いつかは自分も死ぬそう悟れたからだ。 外に出て師匠と旅をしたのか、地下の時から覚悟の影に誰かが助けてくれると言う当てのない甘さがあったのかは解らない。今言える事は今までに味わった事がない死の恐怖を感じた事だ。

「理解したな  では行って来い! 」

 師匠の一言は僕に更に恐怖を与えた。今回の村で結果を出さなければ僕は師匠に殺される。師匠の言葉にはそんな意味が込められてる気がした。今回のターゲットは僕よりも戦闘経験があり実力も上の村を巡回している兵士だ。そんな男にある程度戦った後で殺さなければいけない。そうでなければ僕が逆に殺されてしまう。僕は深呼吸をし今までの特訓を思い出し自分ができる事を最大限考え男の姿に化けて対象の前に姿を表した。

「なんだぁお前さん見ねぇ顔だな 何処から来た? 」

 対象の男は僕の事を自分よりも弱いと理解し喋りながら近づいてきた。動きからするに、僕の事を最低限警戒しているだけでかなり油断している。そのままさり気なく会話をし、近づいてこの男を殺す事ができるがそれでは意味が無い。だからと言って真っ向から勝負を仕掛けても、彼と僕の力の差では本気の動きが見えないからこれも意味が無い。不意をつき、殺さずにある程度の怪我を負わせないと僕が有利の位置に立てない。

「つい先程この村に着いた旅人ですよ! 宿泊場所がわからなくて どこかオススメの場所はありますか? 」

 僕も会話をしながら彼に近づき警戒されないように最善の行動をした。

「そこで止まれ! その割にはお前から殺気を感じるが? 」

 しまった! 僕は彼を倒すことに気を集中しすぎて殺気を消し忘れた

「えーっ 先程も言いましたが僕は旅をしているものでね 村に来る前に獣に襲われかけて多分その殺気が残っているんじゃ無いんですか? 」

 とっさに言い訳をし、なんとか彼の警戒を解こうとした。彼は僕の服を見渡し僕の事を完全に警戒した

「その割には随分と服が綺麗じゃ無いか? 獣に勝てそうにも見えないし、走って逃げたんなら多少汚れているはずだ!  何者だ貴様! 」

 彼が構えた事で、僕が彼の敵だと見抜かれた事に気がついた。もう不意はつけないこの状況は、戦って勝つしか僕が生き残る道は無いと覚悟を決め僕も構えた。

「僕はあなたを始末するようにと指令を受けた者! 」

 もうこの男に余計な嘘をついても無駄な事は頭の中で理解できた。

暗殺者(アサシン)かぁ しかしこんな新米を寄越してくるとは随分と舐められた者だな」

 僕は彼の動きを注意しながら彼のことを分析し始めた。身長と筋肉の割合から体重などを予測をして、次の一手と早さを計算した。

「何を言ってるんだい? 君程度には僕で充分だと皆は思っているんだよ 」

 彼の呼吸や顔の表情でまだ油断をしていることが理解できたが、彼のある程度の戦い方を見た後で彼を始末する自信は僕にはなかった。この時に僕があった想いはやらなければ()られる。この事だけだった。彼が走り出し僕を一撃で仕留めるためにナイフを手にして僕の首をめがけて斬りつけようとしていた。

「これで終わりだ小僧! 」

僕はとっさに彼の動きに合わせ師匠から教えてもらった合気道で彼から武器を取り上げて彼を投げ飛ばした。倒れた彼は投げられた事に自分がどうやって投げられたのかを理解していない様子だった

「少しはやるじゃねぇか小僧! 」

彼は起き上がり腰を低く構えをとった。その姿勢からは既に油断がなく、少なくとも対等の者を相手にしているように思えた。さっきの投げは上手く決まったが次はどうなるかわからない。彼の動きを慎重に観察をしようと考え僕も腰を低くし、彼と全く同じ構えをとった。彼に化けるのであれば彼と同じ行動をとればそこから彼の戦いの中での心理がわかりそこから彼の技などが読み取れると思ったからだ。彼が右足を出せば僕も同じように出しありとあらゆる行動を僕は真似た。

「フザけっやがってこのガキが! 」

彼は、僕が彼の真似をして動いていることに気がつき、怒りで冷静な判断ができないようになっていた。

「今だ行くよ 『ポン』 」

「おうよ『ポン・ポン・合体変化』

精霊と力を合わせ僕の姿は彼と全くの同じ姿になった。師匠との訓練のお陰で精霊と力を合わせる事が出来るようになったのだ。この変化は今までの変装とは訳が違う。今までは形だけだが、今回の精霊とのコンビ技は体重や脂肪の量、筋力まで真似たのだ。相手からしてみればこれほど不愉快な事は無いだろう。鏡に映った自分を観るのでなく、戦っている最中に全く同じ顔で、全く同じ動きをするのだから。

 「じゃぁそろそろ終わらせるよ! 」

 僕はそう言って彼にゆっくりと近づいた。歩き方までもそっくりに真似をしているのに気が付いたのか、彼の表情には動揺し困惑しているのがわかる。彼の真似をしたからなのか? 彼と戦ったからなのか? その両方なのかは解らないが、一つ言える事はこの短時間で僕はこの男という存在を構成するほとんどを真似る事ができた。

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