第七話 来訪者!!
あれから幾日も過ぎていった・・・。相変わらず俺は、毎日を自堕落に過ごしている。たまに麻希から買い物へと誘われるが、やんわり『お断り』している。女性の買い物=長い・・・もはや定番だろう。
気が付けば、もう十月も後半・・・。宿題も済ませたし、友人達が帰って来るのはもう少し先の話・・・やる事の無くなった俺は毎日、リビングでテレビを観ていた。
ピーンポーン!
チャイムが鳴り、俺は玄関先にいる相手の元へと向かう。
「・・・久しぶり」
「会ちょ・・・未菜先輩!どうしたんですか?」
玄関先にいたのは、紙袋を持った未菜先輩だった。
「ちょっと旅行へ行っててな。・・・これ、お土産」
「うわぁ、ありがとうございます!あ、よかったら上がって行きます?お茶くらい出しますよ」
「い、いいのか?」
土産まで貰って、ハイさようなら、じゃあさすがに失礼だろう。御礼の意味を込めて、先輩を家に招きいれる。
「あ、麦茶でいいですか?」
「あ、すまんな」
冷蔵庫でガンガン冷やした麦茶をコップに注ぎ、俺はリビングのソファに座る先輩へ麦茶を差し出す。なぜか落ち着かない先輩は、さっきから辺りをキョロキョロ見回している。
「そういえば、未菜先輩って家に来るの初めてでしたっけ?」
「あ、あぁ。それにしても、綺麗じゃないか」
「一応毎日掃除はしてますから」
もしもの来客に備え、つねに掃除は怠らない。グータラな俺でも、掃除くらいはちゃんとする。
ピーンポーン!
ありゃ、また来客か?
「ヤッホー!遊びに来たよ」
「ん、今度は麻希か・・・」
「今度は・・・?」
「更科、お客さんか?」
偶然を、俺は呪いたい・・・。途端に麻希の顔は不機嫌になる。先輩・・・・・・は普通だ。
「アラ〜オジャマダッタカシラ〜?」
「なんで片仮名なんだよ。先輩は旅行に行ったからってお土産を持って来てくれたんだよ」
俺の言葉に疑念を抱き、ジト目で見上げる麻希・・・。
「とりあえず、上がれよ立ち話もなんだ」
「んじゃ遠慮なく」
勝手しったるなんとやら・・・ずかずか上がり込み、勝手に冷蔵庫をあさっている。
呆然と見ている先輩・・・そりゃそうだ。
アイスを勝手に取り出し、まるで我が家のようにくつろぐ麻希・・・。
「その・・・えっと、瀬奈さん、だっけ?」
「え、えぇ・・・」
「その、更科とは、どんな関係・・・」
アイスを頬張る麻希に恐る恐る尋ねる先輩。ってか、よく名前知ってたな!!
「そうですね、強いて言えば『人には言えない深〜い』関けいっ・・・た〜い!!」
「変な事言うな!!」
身を乗り出していた麻希の額にチョップを放つと、涙目になりながら額をさすっている。
「こいつとは、幼なじみです!」
「で、でも昔は付き合っ・・・いたっ!ホントの事じゃん!!」
再びチョップを放ち、ア然としている先輩をよそに、眼力全開で麻希を睨みつける。
「つ、付き合ってたのか・・・」
「昔の話ですよ。今は単なる幼なじみですけどね」
なぜかショックを受けたような顔をする先輩。イマイチ、先輩がわからない・・・。
「な、なんで別れたんだ?」
「他に好きな人が出来たからって、フラれたんですよ」
「だ、だって・・・」
叱られたこどもが言い訳するような顔で、何か反論しようと試みた麻希だったが、たいした理由も見付からず、黙って俯いた。
「まぁ、今でも幼なじみって関係は変わんないから、こうしてたまに遊びに来るんですけどね・・・毎回冷蔵庫を漁る事だけは、やめて欲しい」
もはや反論する事もなく、アイスを口に運ぶ麻希。そんなやり取りがあって、気が付けば正午をまわっていた。・・・そういや、腹減ったな。
「あっちゃー」
冷蔵庫の中は、ほとんどからっぽ状態。仕方ない、買い物へ行くか・・・。
「すみません、俺今から買い物へ行って来るんで、留守番頼んでいいですか?」
「わ、私は構わないが」
「あ、アイス買って来て!」
どうして、同じ女性なのにこんなに性格が違うんだ・・・。なんて考えるが、考えるだけ無駄だと思い、とりあえず昼食用にリクエストを聞いてみる。
「さ、更科が作る物なら、な、なんでもいい」
「ん〜まだ暑いから、なんかさっぱりした物がいい!」
さ、参考になったんだかなってないんだか・・・。とりあえず、二人を家に残す事に一抹の不安を覚えつつ、俺はスーパーに向かうのだった。




