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海人!!  作者: 矢枝真稀
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第六話 会議

学校へと戻ったのは、その5分後だった。しかし、大学中央学舎に掛かる大きな時計は、しっかり11時を指している・・・どういう事!?



「あの時計・・・狂っていたか・・・」

「えぇ!?あっ!!」



携帯は、バッチリ11時と表示している。間違いなく、あの店の時計は1時間速く進んでいた・・・。



「・・・ちっ」

「何故に舌打ち!?」

「な、なんでもない」



会長・・・未菜先輩の舌打ちに多少の疑問を持ちながらも、俺は生徒会室へと戻るのだった。




→→→→→→→→→










「よし、全員揃ったな。ではこれより、第36回鳳翔祭企画及び予算会を始める!」



予定時間よりも少し早く、会議は始まった。案件を的確に処理する会長及び生徒会役員・・・あらためて、その手腕に舌を巻いてしまう。



「で、だ。例の件はどうなっている?」

「すべて順調に進んでいます」



例の件・・・いわゆる女装コンテストである。先程から会長がこちらをちらちら見ていたのは、どうやら内容が(女装イメージ)決まったらしい。しかしながら、やられるほうはもの凄いイヤなんですけど・・・。



「それで、今年のテーマは?」

「ナチュラル・・・今まではいかにも『女装』って感じでしたが、今回は

「女も嫉妬する女装」をイメージしてます」



なんで毎回女装コンテストにこんなに力が入っているんだろ・・・。確か去年もこんな感じだったな。



「で、更科君には鳳翔祭実行委員と執行部の代表として出場してもらうから、頑張って!!」

「えぇっ!?」

「実行委員長と会長命令♪」

「職権乱用じゃねぇか!!!!」



俺の咆哮も虚しく、『更科、わ、私は応援するぞ!!』と、会長の意味不明な発言で幕を下ろす。



「更科、会長と何かあったか?」

「なんにも・・・あ、さっきハンバーガー食べに行きました」



副会長の長谷部亮二先輩が目を丸くして、驚きの表情を見せる。え、なに!?



「そうか、会長と・・・更科、頑張れよ!」

「何を!?」



意味深な発言をした副会長は、なぜか嬉しそうに帰って行った。



???



「更科、帰るぞ・・・」

「あ、ハイ。会長!」

「はぁ、二人の時は名前で呼んでくれ・・・さっき、言っただろう?」

「すみません、未菜先輩!」

「・・・ん」



だ〜か〜ら〜照れるならなんで名前で呼べって言うんだよ!先輩、真っ赤だし・・・なんか距離近いし。



先輩の暮らすアパートと俺の家は、道路を挟んで真向かいになり、たまに顔を合わせると、こうして一緒に帰ったりする。当然、俺の幼なじみ(麻希)とも面識がある。(いっつもそんな時に限って麻希は不機嫌だが・・・)



「更科」

「なんです?」



家へと帰り着く直前で、未菜先輩が口を開いた。



「更科から見て、私は・・・その・・・」



なぜか口ごもる先輩・・・そして、再び言葉を紡ぐ。



「女性、として・・・み、魅力的・・・か?」

「え、も、もちろん!!」

「そ、そうか!」

「きっと、先輩の好きな人だって、少なからず意識してるんじゃないですか?」

「う、うん・・・そうだったら、うれしいな」

「もう少し自信持って下さいよ!俺も応援しますから」

「あ、あぁ・・・」



真っ赤になった先輩は、やっぱり可愛いな。なんて考えていたら、既に家の前に着いていた。



「それじゃ、また今度!」

「あ、あぁ・・・」



先輩に頭を下げ、俺は自宅へと入った。もちろん、先輩は自分のアパートへ。




→→→→→→→→→→→→




鷹峰未菜視点−−−




結局、今日も言えなかった。

更科は、全く気付いていない・・・。

こんなに、私が想ってるのに。

時々、自分という存在がわからなくなる。

生徒会長・社長令嬢・・・そんな言葉が、いつも私に付きまとう・・・でも、私だってそんな肩書を持つ前に、一人の女。生徒の前ではクールを装ってるけど、やっぱり好きな人の前じゃ、自分らしくありたい。でも、更科は気付いてない。本当に好きな人は、君なのに・・・。歳なんて、関係ない。後輩に恋したって、いいじゃない・・・。

手を振って、自分の家に入って行った更科をその目で捉え、私は小さく呟く。






「鈍感・・・」

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