−−−会長と!? その弐!!
主人公の名前、当初は仁科玲でしたが、途中から更科玲として登場しています。今後は更科玲として統一します。誤字・脱字などで困惑された読者の皆さん、本当にすみませんでした!!
・・・うわぁ、なんだろう。
すっげえドキドキする!隣を歩いているのは、俺より一つ年上の、学園のマドンナ。そして、容姿端麗・成績優秀のマドンナを、好奇心丸出しで観察、もとい傍観する男・おとこ・OTOKO!!全ての野郎共が、振り返る。しかし、その視線からは、殺気じみた雰囲気を匂わせているし、その全てが俺に向けられてるような・・・。
「更科?」
「え、あぁすみません!」
「ふむ、上の空とは珍しいな」
「なんか、すっごく視線感じません?」
「視線?いや何も・・・」
鈍感なのか、それとも視線に慣れているのか・・・真意は定かではないが、徒歩で5分、ハンバーガーショップに着いた。
「き、緊張するな・・・」
「俺も別の意味で緊張してますよ」
扉を開け、店内に入る。月曜日、しかも他の大学・高校は授業中であるため、お客さんの数も少ない。
「いらっしゃいませ、店内でお召し上がりですか?」
「はい」
いかにもマニュアル通りの丁寧な挨拶が店内に響き、『二名様ご案内でーす』『ありがとうございます!!』と、厨房の方で声がする。
「俺はフィッシュバーガーのセット、ドリンクはコーラで。会ちょ・・・先輩は何にします?」
「わ、私も同じセットで・・・えっと、飲み物は烏龍茶を」
かしこまりました。と先に会計をするが、ここは男として二人分支払う。
「わ、私が払うわよ!」
「先輩のお願いとはいえ、こうして美人とハンバーガー食べれるんですから、ここは俺が払います。先輩は先に席にいて下さい」
「そ、そうか。あ、ありがと・・・」
軽くおだてて会長を席に誘導する。にしても、会長の恥ずかしげな顔・・・こりゃプレミアもんだ!!学校では常に表情を崩さず、冷静(無表情)に生徒をまとめているが、それでも血の通った人間である。感情が無い方がおかしい。
支払いを済ませ、窓側に座っている会長の元に向かう。
「お待たせしました!こちら、フィッシュバーガーのセットになります。ごゆっくりどうぞ〜!」
数分も経たないうちに、店員さんがバーガーセットを持って来た。
「いただきます!」
「いただきます・・・」
俺が大口を開けてフィッシュバーガーをかじる様を見て、会長も恐る恐るフィッシュバーガーに手を付ける。
「どうですか?」
「・・・美味しい!!これがハンバーガーか!」
どうやら味に満足したらしい。始めは戸惑っていた会長も、『美味しい』を連発しながら無心で食べている。
「いや、こんなに美味しい物、何故21年間食べなかったんだろう・・・」
「はぁ、やっぱり会長はお嬢様ですね」
半分位食べたところで口を開いた会長にやや呆れ顔で答えると、急に顔つきが涼しさを帯びた。
「更科も、私をお嬢様と言うか・・・」
「会長?」
俯き気味に視線を反らした会長は、フッとため息を吐く・・・。
「確かに、私の父は貿易会社の社長だ。でも、私は社長の娘である前に、一人の人間だ。だから学校くらい、私がただの生徒でありたかった・・・」
その言葉はあまりに重かった・・・確かに、会長は社長令嬢だけど、俺らと同じ人間である。俺が放った言葉は、一見して何の気も無いものだった。でも、違う・・・会長は辛いんだ、同等に接する事をしない俺や生徒に、『社長令嬢』ではなく『鷹峰未菜』を見て欲しかったのだろう・・・。我ながら、自分の無神経さにいらいらする。
「すみません、会長。軽率でした!!」
「いや、私も要らぬ事を言った・・・。それと、だな」
「なんです?」
もじもじしながら、ここに来る前に見せた恥ずかしげな表情をし、俯き気味から上目づかいで俺を見て来る。
「か、会長は・・・やめてくれないか。出来れば、その・・・」
???
「未菜って、呼んで欲しい・・・」
「そうですか・・・未菜って、えぇぇっ!!!?」
「こ、声が大きい!!」
店内に響き渡らんくらいの声を出してしまった俺を慌てて諌める会長・・・いや、未菜先輩。って、そりゃ驚くだろ!!
「さ、さすがに未菜はちょっと・・・」
「だめか?」
「せめて、未菜先輩で・・・」
「会長命令でもか?」
「職権乱用しないで下さい」
さすがに年上に向かって呼び捨ては出来ない・・・。ぶつぶつ言っている先輩だったが、渋々納得してくれたようだ。
「かいちょ・・・未菜先輩って、好きな人いるんですか?」
「ッグ、ゴホッゴホッ・・・い、いきなりなんでそんな質問をするんだ?」
噴き出さんばかりにおもいっきり噎せた先輩は、キッと睨み、言葉を返す。
「素朴な質問ですよ。先輩美人だし、やっぱり女性じゃないですか!好きな人の一人や二人いるんじゃないかなぁと思って」
「・・・名前は言えない、けど、一人だけ・・・いる」
「へぇ、先輩が好きな人って、どんな感じの人ですか?」
「・・・格好良くて、優しい・・・かな」
耳まで真っ赤になってる会長・・・じゃなくて未菜先輩。やべぇ、マジで可愛い!!うっわ、先輩の恋焦がれてる相手がホントに羨ましい!!
「そ、そういう更科は、好きな人、とかいないのか?」
「生憎、今はいませんねぇ」
「そ、そうか・・・」
「なんでそんな事聞くんです?」
「い、いや、更科は格好良いし、モテるだろうなぁ・・・と思ったからな」
「俺が格好良い!?またまた〜、おだてても何も出ませんよ?」
会長を軽くあしらい、俺は苦笑する。だって、人生20年間生きてきて『格好良い』なんて初めて言われた。照れ臭いって感情よりも、お世辞だろ?って疑念感のほうが勝ってる。
考えてもみろ!格好良いなら普通、モテるだろう!?生まれてこのかた、告白なんてされた事もないし、下駄箱にラブレターなんて古典的なものもなかった・・・麻希(幼なじみ)に告白するまで彼女なんかいなかったし・・・。な、なんか自分で言って凄く切なくなったよ・・・俺って淋しい人生送って来たんだなぁ。
「しな・・・らしな・・・更科!!」
「ふぇ!?」
「どうした?ぼーっとして・・・」
「あ、すみません。なんか物思いに耽ってました・・・なんか俺、淋しい人生を送って来たんだなぁ・・・と思って」
「なんだそれは?それより、そろそろ学校へ戻ろう。長話していたせいか、結構ここに居座っていたようだ」
「そうですね」
店内の壁時計は12時にさしかかるところだった。そんなに長い間、時間を潰していたのか・・・。トレーの上に残った紙屑をダストボックスへほうり込み、俺と未菜先輩は学校へ戻った。




