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海人!!  作者: 矢枝真稀
33/33

最終話 すべては海で始まって・・・

《AM8:00》



「おはよー!朝だよ!!」

「・・・おあよ、最高の目覚ましだ」



目を開けた時、鮎華と俺の距離はゼロ。俺の頬に、鮎華の唇が触れていた・・・おかげさまで、目覚めバッチリ!!



「朝ごはん出来てるよ!」

「わかった。先に着替えて来るよ」



まるで新婚生活みたいだなぁ・・・。台所から漂う味噌汁の香りが鼻をくすぐり、自然とお腹の虫が鳴く。そんな自分に苦笑しつつ、予め用意されていた服に着替える。




→→→→→→→→→→→→






日々腕を上げる彼女の料理に舌鼓を打ち、食後にコーヒーを飲む。ここ最近仕事が忙しかった為、こうやってのんびりコーヒーを飲んでいる時間が、とても落ち着く・・・。



「なぁ」

「ん〜?」

「どこ行くか決めた?」

「うん、まずは・・・」







→→→→→→→→→→→→




車で一時間半、途中で寄り道なんかして2時間くらいで彼女のいう目的地へと到着−−−。



「ただいまー」

「こんにちはー」



勝手知ったる我が家かな・・・。彼女が指定した場所は、意外にも俺の実家だった。



「おかえり!!ヤッホー鮎ちゃんっ!!」

「流花ちゃん、久しぶりっ!!」



出迎えた妹の流花とハイタッチする鮎華。妹よ、俺の存在は無視か?



「あ、玲兄もおかえり!」

「取って付けた出迎え、ありがとう・・・」



少し皮肉った意味を込めたが、全く効果無し。

ところでこいつら二人が仲良くなったのは、付き合い始めてすぐの頃、従姉妹の琉依さんの粋な計らいで、一ヶ月の有給休暇を取得した時に社員寮に住んでいた為、一ヶ月間は会社の近くでアパートを探しながら、彼女を連れて実家で生活していた。その間に、最初に鮎華と仲良くなったのが、歳も近い妹の流花って訳である。


「鮎ちゃん、上がって上がって!!」

「お邪魔しまーす!」



お前の兄上は、もはや空気みたいな存在なんですね・・・。






→→→→→→→→→→→→






俺の彼女は、誰とでも仲良くなる。それは彼女が人を引き付ける“何か”を持っているから−−−。



「鮎ちゃん、ゲームしよ!」

「鮎華さん、女同士、買い物に行かない?」



我が家では一層の賑やかさ・・・俺と親父は蚊帳の外。



「あ、あの・・・」



母と妹が鮎華を取り合っているさなか、口を開いたのは、本人の鮎華だった。



「どうした、鮎華?」



畏まった鮎華。正座になり、親父とお袋、そして流花に頭を下げた。



「こんな事、私が口にするのはおかしいけど・・・」

「鮎ちゃん?」

「お父さん、お母さん、流花ちゃん・・・玲さんを、私に下さいっ!!」



一瞬、水を打ったように静まるリビング・・・。



「「「えぇーーっ!?」」」

「鮎華!?」

「ずっと心に決めてました。この歳になって、運命なんて馬鹿げてるって言われた事もあったけど、半年前に玲さんに出会った時、私は運命を信じました。好きだったから、本当に一緒になりたいって思いました」


逆プロポーズに、俺は面喰らってしまったが、両親は微笑みながらお茶を啜る・・・。



「鮎ちゃん、すごい!!」



拍手を混じらせ、流花が立ち上がる。感涙・・・笑いながら、頬から雫が床へと滴り落ちる。



「玲兄、男だったらバシッと決める!!」

「なんか、順序が逆になってしまったな・・・」



照れ隠しに首筋をポリポリ掻いて、俺はポケットに忍ばせた、ある“証”を取り出した。



「親父、お袋、流花。順序が逆になったけど、俺は鮎華にプロポーズする!!なんかこんな感じになっちまって、恥ずかしいけど・・・」



意を決し、俺は鮎華に小さな箱を差し出す。



「開けてみて・・・」

「・・・うわぁ!」



とても小さな、小さなリング・・・彼女の薬指専用の−−−。



「貸して・・・」



リングの装飾は、小さな二匹のイルカのハートマーク・・・中央には、“永遠の愛”を表す小さな石。そっと手に取り、彼女の細い薬指にリングを通す−−



「鮎華・・・」

「はい・・・」

「俺と一緒に、幸せになって欲しい。だから、結婚して下さい!!」

「はいっ!!」



両親の前で交わす、鮎華へのプロポーズ・・・。照れ臭さよりも、気持ちを伝えた充実感のほうが勝っていた。



「さすが俺の息子!!」

「やるじゃん、玲兄!!」

「きっちりケジメをつけたわね!!」



口々に聞こえる家族の声も、耳には入らない。ただ、こうして両親の承諾を得て、俺達は絆を深めた。










→→→→→→→→→→→→




「鮎華さんを、僕に下さい!!」



翌日の休み、今度は海凪家へと足を運んだ。婚約を承諾してもらう為のもの・・・親父さん達とは何度か面識があるが、いざ挨拶となると、やはり緊張するものだ。



「貴様みたいな男に、うちの娘はやれんっ!!!!」



ちゃぶ台をひっくり返さんばかりに叩き付けられた親父さんの派手な手の音と怒声に肩がすくむ・・・。



「・・・と、一度は言ってみたかったが・・・」



強張った表情を緩め、安心したような表情に変わった親父さん・・・。



「相手が更科くんじゃ、そんな事は出来ん・・・」

「親父さん・・・」

「鮎華ば、娘ば頼む・・・!!」



深々と頭を下げた親父さんの背中が、少し小さく見えた。同時に、娘を託し、安堵を浮かべているようにも、見えた・・・。



「絶対に、幸せにします!!」

「妹をお願いね!」

「更科さん、カッコイイよ!!」

「娘をよろしくね」

「はい!!」















→→→→→→→→→→→→




出会いは、あの海で・・・再会も、あの海で・・・。結ばれたのは、運命だろうか?自分に問い掛ける。無論、答えは返って来ない。けど、充分だ・・・。



「玲・・・」

「ん?」

「こうして、隣でこのウェディングロードを歩いてるのが・・・信じられない」

「それも・・・」

「「運命」」



クスッと笑い、静まり返る控室で、共に手を取りみんなの待つ会場へ・・・。




「娘を、頼んだ・・・」



堪えた涙は、自然に溢れ出す・・・。親父さんに連れられた鮎華は、純白のドレスを纏い−−−。



「綺麗だ・・・」

「ありがと・・・」



頬を紅く染め、親父さんからパスされた鮎華の細い手を握る。柔らかくて、繊細で、温かくて・・・。






チャペルが鳴る・・・。







扉が開く・・・。












眩しい光の中へ−−−。










歩み出した。これから俺達には、幾多の喜・怒・哀・楽が待っているだろう。でも、俺達は・・・。







共に、健やかなる時、病める時、神の名の下に俺達は誓いあった。










それは『運命』だと、信じているから。共有する二人の時間は、まだ始まったばかり。けど、大丈夫!!
















俺達は、運命で結ばれた二人、なんだから−−−。

初めは短編の延長線、みたいな感じで始めた本作品も、気がつけば30部門を超えていました(汗)。タイトル海人!!は、漁師である鮎華をイメージして付けたものなのに、ストーリーはほぼ学園関係。力不足ですみません!!アクセスも、知らないうちに3000を突破し、うれしい限りです。最後までお付き合い下さった読者の皆さん、本当にありがとうございました!!

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