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海人!!  作者: 矢枝真稀
31/33

第十八話 独身宴会

短めです

《PM8:00 社員寮》




社員寮に帰宅・・・一階の食堂が、やたら賑やかだ。



「おぅ、お帰り〜!!」

「先に始めてるぞ!!」



あ、忘れてた。今日は独身者だけの『宴会』だったな。参加資格は、彼女、彼氏無しの独身の男女。年齢は不問、年会費無し(宴会参加者は一人千円を払う)。と、まぁ適当に言えば、独り身の飲み会だ。



「おぅ悪い。席は在るか?」

「あっ、ここ空いてるょ!」



社員寮は、道を挟んで男子寮・女子寮に分かれており、女子寮の代表格(寮長)である佐川春香さんが隣席をバンバン叩いている。既に出来上がっているようだ・・・。



「ほ〜ら、駆け付け三杯!!」

「うぃーっす!」



ノリ良く出されたビールを一気飲み!くあぁーっ、美味い!!



「ところで、何処に行ってたんだ?」

「実家、だろ?」



同僚の質問に、琉依さんが答える。ま、正解ですけど〜。



「あ〜・・・」

「どうした、中山?」



突然大きなため息を吐く中山良人。明らかに残念そうなそぶりである。



「だって、考えてもみろよ!塩沢課長、結婚するんだぞ!!」



中山の言葉に、その場にいたほとんど(俺以外)の男共が頷く。



「なんだ、祝う気にならんのか?」

「お、俺は・・・」

「中山くん、塩沢課長の事が好きだったのよね」

「そうなのか?」



黙って頷く中山。



「だったら、尚更祝ってやるべきじゃないか?」

「・・・・・・」



言葉を発する事無い中山に、俺は言葉を紡ぐ。



「好きな人が結婚する事は、確かに辛い・・・でも、好きな人が幸せになるなら、俺は喜んで祝福する」



黙って聞くのは、中山だけじゃない・・・その場にいた全員が、俺の言葉に耳を傾けていた。



「中山くん、君が、私の事をそんな風に想ってくれてたのは・・・嬉しい」

「課長・・・」



静まり返った場に、口を挟んだのは、琉依さん・・・。



「だから、祝って、くれないかなぁ・・・。私も絶対、幸せになるから」

「・・・課長、幸せになって下さい!!絶対、幸せになって下さい!!」



目の前のビールを一気に飲み干した中山は、自分なりの言葉で、しっかり琉依さんに祝福の言葉をかける。


「課長、結婚おめでとうございます!!」

「おめでとうございます!!」



みんな口々に、琉依さんに祝福の言葉をかける。



「ありがとう、みんな!!さ、飲もう!なっ、ほら!今日は飲もう!!」



精一杯の、照れ隠し・・・身内だからわかる、琉依さんはいつも、照れ隠しに場を盛り上げる。そんなとこ、昔と変わらないなぁ。




→→→→→→→→




宴会は盛り上がった。そりゃもう、みんな羽目を外す勢いで!!酔いが醒めて暫く、俺は琉依さんを寮から少し離れたアパートへと送っていた。



「玲、実家で何かあったか?」

「なんでですか?」

「お前が中山に言った一言が、妙に説得力があったからな」

「あぁ、あれですか・・・」



笑いながら、俺は再会した麻希の事を話した−−。



「−−成る程、道理で説得力があったわけだ」

「昔は、好きでしたし、今でも大切な幼なじみですから!」



ハハッと笑う俺に、琉依さんも笑顔を見せる。



「好きだった人が結婚した時、ショックだったか?」

「ん〜、全然って言ったら嘘になるけど、それ以上に幸せになって欲しいって思いましたね」



これは本当。こんな事、嘘を言っても意味がないし、琉依さんには、気兼ね無く話せるから−−。




→→→→→→→→







琉依さんをアパートまで送り、寮へと戻る途中のコンビニで買ったタバコを吹かす。風の無い夜に、煙りはゆっくり宙を漂う・・・。



「結婚かぁ・・・」



身近な人間が、どんどん家庭を持って行く・・・。同僚達の半分も、妻子持ち。大学時代に付き合っていた水城・神崎さんの二人も結婚し、今では二人の子供までいるという。加えて大学時代生徒会長を務めた未菜さんも、来春には結婚するらしい(麻希から聞いた)。独身生活を満喫する中、友人達の結婚は、少なからず俺に影響を与える物だった。

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