第十五話 運命
車で行く事約2時間。ようやく目的地へ到着!運転自体は疲れるような事などなかった・・・が!
「・・・もう止めて〜!!」
俺の悲痛な叫びが車内に響き、その後で三人の爆笑・・・。未だかつてここまで弄られたのは初めてだよ!!
「だ、だってコレ!・・・ップフフッ!!」
「さすがに私でもフォロー出来な・・・ッハハハッ!!」
「これは・・・ッウフッ・・・フフフッ」
三人が爆笑してる理由−−−
まず、長い距離を走る車内、必然的に会話も少なくなる。→沙夜梨さんが取り出した一枚の写真→車内爆笑→一名意味わからず→途中ガソリンスタンドで給油中に爆笑中の三人に写真を見せてもらう→俺、愕然→写真の人物は、女装コンテスト前にメイクをしてもらっている俺→しかもアップ!!
「琉〜依〜さ〜ん〜・・・!!」
いつの間に撮られたのか、物凄いマヌケ面で写った写真を、琉依さんが沙夜梨さんにプレゼント♪って、♪マーク要らんわ!!!!
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トランクから三人分の荷物を下ろす(大半紙袋)。親父さんは在宅中らしく、軽トラが停まっている。
「たっだいま〜!!」
「ただいま!!」
「ただいま」
三人(鮎華)が勢いよく玄関の戸を開ける。依然、俺は荷物持ち・・・重い!!
「あら、おかえり」
明らかに家事の途中だったのだろう、割烹着姿のお袋さんが出迎え・・・
「あんた達、更科さんに何荷物持ちさせてるの!!」
開口一番、説教された三人でした。・・・やれやれ。
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女の子も、三人集まりゃかしましい・・・とはよく言ったもので、海凪家の中は一層賑やか。悪く言えば、うるさい・・・。
「鮎華、鮎美!せからしか!!」※うるさいの熊本弁。
早速怒られた鮎二人。大半は鮎華の声だったが。便乗した鮎美も怒られて、少し拗ねて・・・いや、待て。
「鮎美!聞いてるの!?」
「んぇ?あぁ、ごめん」
全く反省してねぇー!!!!手には携帯・・・ハッ!
「香川からのメール待ち?」
「いや、えっ、違っ!?違います!!」
あからさまに真っ赤になる鮎美の顔。ハイ図星決定!
「なんね、彼氏出来たとね?」
「か、彼氏じゃない!・・・けど」
「鮎美」
「なんね?」
「グッジョブ!」
親指を立てて、よくやった!!的な顔のお袋さん。そのネタ古くない!?
ぼつぼつ荷物降ろしも終わり、お茶も御馳走になったし・・・。
「んじゃ、俺はそろそろ帰ります」
「えっ?」
「もう?」
「なんね、もう帰っとね!?」
「もう少しゆっくりしていけばいいのに」
さすがに図々しくここに居座るのも、俺の良心が快く思わない。それに明日は−−−
「いやぁ、明日から学校ですから。役員の仕事もまだ残ってるし」
そう。俺達鳳翔祭実行委員には、後片付けというメインイベント(嬉しくない!!)が残っているのだ!!
「あら、それじゃあ仕方ないわねぇ」
「(むす〜っ)」
「鮎華姉、むくれないの」
「む、むくれてないもん!!」
とは言うものの、頬を少し膨らまし、目は三白眼・・・怖っ!!!!
「き、機会があればまた来るから」
「ぜっっっったいっ!約束!!」
「お、おぉ・・・」
あまりの剣幕に、若干退け腰の俺。
「まぁ、運命ならもう一度会えるわよ」
「「運命!?」」
沙夜梨さん、いきなり何を言い出すんですか!?
「更科くん・・・」
「はい?」
「・・・鈍感」
「何が?」
もはや何を言ってるのか、俺には理解不明だよ。
「なんかよくわかんないけど、俺はそろそろ・・・」
「そう、それじゃ」
「あ、ちょっと待って!」
「ん?」
呼び止めた鮎華は、走って家に戻り、数分もしないうちに携帯を持って来た。
「メ、メルアド教えて下さい!」
「えっ、俺の?」
真っ赤になった顔を伏せるように、俯き気味で携帯の画面を開く。
「うん、いいよ!!」
俺にとっては嬉しいサプライズ。鳳翔祭で感じた想いが、蘇って来る。
「更科さん、顔真っ赤・・・」
「えっ、そ、そう?」
鮎美に指摘され、おもいっきりキョドる。うっわ、すっげえ顔が熱い!!
「最後に一つだけ、聞きたい事があるんだけど」
「ん?何?」
お互いの携帯に登録を終えた時、意を決したような表情の鮎華が、正面から、俺の瞳を捉える。心なしか、緊張する。
「こういうのは、少し恥ずかしいけど・・・私、更科さんが好きです!!」
「うん・・・えっ!?」
「おーっ!!」
「あらあら」
「さすが私の娘!!」
こんなにも大勢(海凪家一同※親父さん除く)のギャラリーの前で、鮎華は宣言した。理解するのに数秒を要したが、状況が飲み込めた時、俺の頬が再び熱くなるのを感じた。
「俺は・・・」
「返事は、聞きません!!」
「な、なんで!?」
俺の中で、答えは決まっていた。言いようのない感情は、本当に麻希を好きだった時と同じ・・・。だから答えは簡単だった。けど、鮎華は俺の答えを遮ったんだ。
「運命だから・・・」
「運命?」
「そう。もし、私達の気持ちが同じなら、もう一度出会う事があるはず。もし運命ではなかったら、私達は会う事なんてなかったと思う。だから・・・」
「再会した時に、答えを聞くって事?」
「うん。だからそれまでは・・・」
鈍感って言われた俺でも、理解できる。なるほど、運命か・・・。
「・・・わかった。なら、携帯のメルアドは消去して欲しい」
「えっ?」
「運命なら、また出会う。だったら、連絡も何も、必要無い」
「・・・そっか、わかった!」
一度は登録した、携帯の画面に表示された『海凪鮎華』・・・。ボタンに手をかけ、最後に・・・。
「また、いつか・・・」
「また、ね・・・」
完全に、二人の世界だった・。その雰囲気に、呆気にとられた鮎美・沙夜梨さん・お袋さんだったが、我に返り
「さ、洗濯洗濯!!」とか
「沙夜姉、勉強教えて!」等とあからさまに家の中に入って行った。
「また会えるなら・・・・」
「さよならは、要らない。でしょ!」
フフッと笑う鮎華は、手を差し出した。細くて日に焼けた小麦色の指に、自分の手を重ねる・・・。細くて繊細、力を入れれば壊れそうな。温もりが、自分の手に伝わる・・・。
「「・・・・・・」」
言葉を交わす事は無く−−−。
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帰りの車中、ついさっきまでは賑やかだった車内も、一人になれば静寂を取り戻す。少し寂しいような気もしたが、それ以上の感情が、俺を取り巻く・・・。
「運命・・・か」
逆らわず、ただ流れるままに・・・。信じよう、運命を。いつかまた、再会の奇跡を信じて。




