表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海人!!  作者: 矢枝真稀
25/33

−−− 鳳翔祭最終日!!後編「LoveとLike」

更新遅れてすみません!今回は短いです。

《20:00 管理棟屋上》



「・・・っさぶ!」

「冷えるな・・・」



昼間は柔らかにそよいだ風も、時間の流れと共に冷たさを帯びる。さすがに11月ともなると、当然といえば当然か・・・。



「どうしたんですか?こんな所に呼び出して」

「更科、ケジメはつけてきたか?」

「・・・そのつもりです」



管理棟屋上に呼び出した人物、未菜先輩(会長)。ただ、こんな所に呼び出してケジメの事を質問するだけとは思えず、再び開かれた未菜先輩の口から出る言葉を待つ。



「座らないか?」



先輩の招いた先には、きちんとセットされたテーブルに、2脚の椅子・・・。



「なんでこんな物が?」

「まぁ、座れ。理由はすぐにわかるさ!」



少し表情を緩め、手招きする先輩に促されて対面する椅子に座る。






ヒューー・・・ドーンッ!!!!







「うぉっ!!」

「フフッ・・・」



目の前に広がる鮮やかな花火−−−



「ささやかだが、私の気持ちだ。更科、グランプリおめでとう!」

「あ、ありがとうございます!」

「普段ならここは立入禁止だが、今日は特別。何たって1番見晴らしがいいからな」



赤・青・白・緑・・・色とりどりの花火が鮮やかに夜の空を照らし、眼下には明々と広がる町並みと赤いテールランプの列。



「少し、飲まないか?」

「え、いいんですか?」

「別に講義中じゃないし、今日・・・いや、今は祭だ。たまには羽目を外すのも悪くない」



テーブルのしたから取り出したクーラーボックスの中には、5本位のビール瓶。勧められるがままにグラスにビールが注がれた。



「じゃ、会長・・・いや、未菜さんも!」

「フフッ・・・初めて

「先輩」をつけなかったな」

「こんな雰囲気なら、無粋かなぁと思って」



今度は俺が、未菜さんのグラスにビールを注ぐ。別のクーラーボックスに入っていた、おつまみもテーブルに並べられ、言葉を紡ぐでも無く、互いの手に持ったグラスを軽く重ねる。




カチンッ!




花火が未だ、夜空を明々照らす・・・。



「更科・・・」

「はい?」

「・・・酔ったついでのざれ言だと思って、聞いて欲しい事がある」

「なんです?」

「私は、更科玲・・・お前が好きだ。先輩後輩としてじゃなくて、鷹峰未菜として、更科玲の事が好き、なんだ」



何も言えない俺・・・未菜さんは、グラスに残ったビールを一気に飲み干した。



「気負うな。返事は要らない・・・これは酔った私のざれ言だからな」

「・・・」

「お前に、気になる女性がいる事は知っている」

「・・・!!」

「フフッ。そんな怖い顔をするな。誰にだってある感情だ。でも、更科の事を好きな人間がここにいる事も、忘れないで欲しい」



ほのかに憂いを帯びた笑顔で、未菜さんはそう言った。



「最後の花火が上がったか・・・」

「未菜さん・・・」

「更科、ここの片付けは私がしておくから、速やかに出て行ってくれ」

「え、でも・・・」

「しばらく、一人にして欲しいんだ・・・」

「・・・」



無言で、俺は屋上を後にする。未菜さんは気付いていたのかもしれない・・・俺が、彼女に対して抱いている感情を。







LikeとLoveのすれ違いを−−−







→→→→→→→→→→→→






「フフッ!」



「フフフフッ!!」



「アッハハハハッ!!・・・ッフフ、ック・・フッ・・ウゥ・・・」




こうなる事は、わかっていた。私の抱く感情と、更科の抱く感情の違いを・・・。わかっていたからこそ、私は自分の気持ちに正直になった。本当は、酔ってなどいない。酔ったフリして、本当の気持ちを話しただけ・・・。




「痛いな・・・」




心が、痛い・・・。これが、失恋ってやつか。




「終わったな・・・フフッ」



情けないって訳じゃない・・・この姿・・・今、自分はどんな顔をしているのだろう。そう考えると、自分が滑稽に思えてくる。



「これでいい・・・私は、更科を好きになったのだ。悔いは無い!」



自分に言い聞かせる。結果は、目に見えてわかっている。だからこそ、今度更科に会った時は、笑顔でこう言う・・・。







「好きになって、よかった!!」










誰もいない屋上・・・。ビールグラス片手に、私は花火の後に残る火薬の香りで鼻をくすぐりながら、いなくなった相手のグラスに自分のグラスを重ねた。




カチン・・・。







静まり返った屋上・・・重ねたグラスの音が、妙に胸に響いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ