−−− 鳳翔祭最終日!!後編「LoveとLike」
更新遅れてすみません!今回は短いです。
《20:00 管理棟屋上》
「・・・っさぶ!」
「冷えるな・・・」
昼間は柔らかにそよいだ風も、時間の流れと共に冷たさを帯びる。さすがに11月ともなると、当然といえば当然か・・・。
「どうしたんですか?こんな所に呼び出して」
「更科、ケジメはつけてきたか?」
「・・・そのつもりです」
管理棟屋上に呼び出した人物、未菜先輩(会長)。ただ、こんな所に呼び出してケジメの事を質問するだけとは思えず、再び開かれた未菜先輩の口から出る言葉を待つ。
「座らないか?」
先輩の招いた先には、きちんとセットされたテーブルに、2脚の椅子・・・。
「なんでこんな物が?」
「まぁ、座れ。理由はすぐにわかるさ!」
少し表情を緩め、手招きする先輩に促されて対面する椅子に座る。
ヒューー・・・ドーンッ!!!!
「うぉっ!!」
「フフッ・・・」
目の前に広がる鮮やかな花火−−−
「ささやかだが、私の気持ちだ。更科、グランプリおめでとう!」
「あ、ありがとうございます!」
「普段ならここは立入禁止だが、今日は特別。何たって1番見晴らしがいいからな」
赤・青・白・緑・・・色とりどりの花火が鮮やかに夜の空を照らし、眼下には明々と広がる町並みと赤いテールランプの列。
「少し、飲まないか?」
「え、いいんですか?」
「別に講義中じゃないし、今日・・・いや、今は祭だ。たまには羽目を外すのも悪くない」
テーブルのしたから取り出したクーラーボックスの中には、5本位のビール瓶。勧められるがままにグラスにビールが注がれた。
「じゃ、会長・・・いや、未菜さんも!」
「フフッ・・・初めて
「先輩」をつけなかったな」
「こんな雰囲気なら、無粋かなぁと思って」
今度は俺が、未菜さんのグラスにビールを注ぐ。別のクーラーボックスに入っていた、おつまみもテーブルに並べられ、言葉を紡ぐでも無く、互いの手に持ったグラスを軽く重ねる。
カチンッ!
花火が未だ、夜空を明々照らす・・・。
「更科・・・」
「はい?」
「・・・酔ったついでのざれ言だと思って、聞いて欲しい事がある」
「なんです?」
「私は、更科玲・・・お前が好きだ。先輩後輩としてじゃなくて、鷹峰未菜として、更科玲の事が好き、なんだ」
何も言えない俺・・・未菜さんは、グラスに残ったビールを一気に飲み干した。
「気負うな。返事は要らない・・・これは酔った私のざれ言だからな」
「・・・」
「お前に、気になる女性がいる事は知っている」
「・・・!!」
「フフッ。そんな怖い顔をするな。誰にだってある感情だ。でも、更科の事を好きな人間がここにいる事も、忘れないで欲しい」
ほのかに憂いを帯びた笑顔で、未菜さんはそう言った。
「最後の花火が上がったか・・・」
「未菜さん・・・」
「更科、ここの片付けは私がしておくから、速やかに出て行ってくれ」
「え、でも・・・」
「しばらく、一人にして欲しいんだ・・・」
「・・・」
無言で、俺は屋上を後にする。未菜さんは気付いていたのかもしれない・・・俺が、彼女に対して抱いている感情を。
LikeとLoveのすれ違いを−−−
→→→→→→→→→→→→
「フフッ!」
「フフフフッ!!」
「アッハハハハッ!!・・・ッフフ、ック・・フッ・・ウゥ・・・」
こうなる事は、わかっていた。私の抱く感情と、更科の抱く感情の違いを・・・。わかっていたからこそ、私は自分の気持ちに正直になった。本当は、酔ってなどいない。酔ったフリして、本当の気持ちを話しただけ・・・。
「痛いな・・・」
心が、痛い・・・。これが、失恋ってやつか。
「終わったな・・・フフッ」
情けないって訳じゃない・・・この姿・・・今、自分はどんな顔をしているのだろう。そう考えると、自分が滑稽に思えてくる。
「これでいい・・・私は、更科を好きになったのだ。悔いは無い!」
自分に言い聞かせる。結果は、目に見えてわかっている。だからこそ、今度更科に会った時は、笑顔でこう言う・・・。
「好きになって、よかった!!」
誰もいない屋上・・・。ビールグラス片手に、私は花火の後に残る火薬の香りで鼻をくすぐりながら、いなくなった相手のグラスに自分のグラスを重ねた。
カチン・・・。
静まり返った屋上・・・重ねたグラスの音が、妙に胸に響いた。




