−−− 鳳翔祭最終日!!後編「悪戯」
『着信有り1件 伝言メモ1件』
携帯に表示された、見慣れた名前・・・伝言メモに、耳を傾ける。
『俺・・・。こんな事、言っても意味ないかもしれないけど、俺は麻希が好きだ。でも、それは友人として、幼なじみとして、なんだ。・・・けどさ、前に麻希が言ったように、俺はおまえの幼なじみをやめるつもりはない!!・・・これは俺の我が儘だ。おまえの泣いた顔なんて、もう見たくないからな・・・じゃあ−−−』
涙が、零れた・・・。気持ちの整理はまだつかないけど、私には、わかった事がある。それは−−−
玲を好きになって、よかった−−−。
いつか笑って、玲を好きだった自分を誇りに思いたい。そして、玲に彼女が出来たなら、私はこう言うんだ・・・。
「あなたを好きになって、よかった−−−」
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麻希は、伝言を聞いてくれただろうか・・・。自分なりに“ケジメ”をつけて、俺は日の傾いたオレンジ色の夕焼けに顔を染める・・・。
「ケジメ、つけてきた・・・」
「そうか・・・」
西日が差し込むグラウンドで、俺は水城に声をかける。
「そういえば、さっきお前を探してた女の子がいたぞ。特別コンテストに出てた・・・海、なんとかだっけ?」
「海凪が?」
「あ、そうそう。なんか顧問の塩沢さんが呼んでるって!」
「げっ!!」
琉依さん・・・嫌なフレーズだ。まさか説教!?でも、海凪三姉妹が一緒って事は、何か別の事だな。
「わかった」
「研究室で待ってるらしいからな」
「おぅ、サンキュー!!」
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《海洋生物学科棟》
な、なんだこりゃ・・・。入り口から入ってすぐ、巨大水槽前に群がる人、人、人の山・・・。
ピンポンパンポン!!
ん?
『海洋学科研究棟にお集まりのみなさん、更科玲さんが到着しました!!』
「は?」
ステージで司会してた人がなんでここにいる?ってか、この視線は、何?
『ではこれより、女装コンテストでグランプリを受賞された更科玲さんのトークショー&握手会を始めたいと思います!!』
今・・・なんつった!?誰のトークショーだって!?
「さ〜ら〜し〜な〜・・・」
「うおっ!!」
イマイチ状況が飲み込めない俺を、背後から不気味な笑いと共に声をかけた一人の女性・・・そう、塩沢琉依(従姉妹)である。
「ちょ、これなんですか!?」
「フッフッフ・・・いや、ただ説教をしても面白くないからな。鷹峰と相談して、緊急イベントを開く事になった」
「んなっ!!!?」
「玲、私を甘く見たな」
謀られた!!海凪三姉妹もいつの間にか俺を囲むようにいるし!
「ごめんね、更科くん。琉依、怖いし・・・」
「いや、なんかもう・・・ごめんなさい」
いろんな意味で謝ったら、沙夜梨さんに無言で肩を叩かれた。あなたも、苦労したんですね・・・。
『では改めまして、更科さんのトークショー&握手会を開催します。更科さん、前の方へ!!』
今度から、言動には注意しよう!ハァ・・・。
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『では、次の質問です!!挙手をお願いしま〜す』
一斉に挙がる手・・・その中で選ばれた一人の女性。一見真面目そうな印象だったが、そんな先入観をぶっ壊す質問が飛んできた。
「更科さんに質問です。彼女はいますか!?」
・・・は?
『あぁ、いい質問ですね〜!女の私としても、是非聞きたい質問です。それではお答え下さい!!』
「・・・あ、いません。好きな人も、いません」
ここまではまぁ、想定の範囲内ってやつだった。
「じゃあ、私とかどうですか?」
はい爆弾発言キター!!!!
「魅力的ですねぇ、でも俺には魅力的過ぎるかなぁ」
微妙に質問を回避!!しかしこれがまずかった・・・。その後は引っ切りなしの質問(恋愛絡み)ばかりで、さすがの司会者もたじたじ。投げやりに質問に答えようとも思ったが、さすがにそんな事は出来ず、自分の頭をフル回転させて回避・回避・回避!!トークショーってか質問コーナーじゃねぇか!!!!
質問コーナーは30分を越え、その後は握手会。まるでアイドルにでもなった気分だったが、イベント的には成功・・・しかし、精神的・肉体的に極度の疲労を負ったのは言うまでもない。
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あの後は凄かった。自分だけ損な役にまわった俺を後ろで観ていた塩沢姉さんと海凪三姉妹のしてやったり!!みたいな顔に小さな復讐を覚え−−−
「特別コンテストの上位4名もいますので、せっかくだから握手会と記念撮影をやってもらいましょう!!」
「「「なっ!!」」」
「あらあら!」
見事にハモった鮎華・鮎美・琉依さんに、意外と拒否反応をみせない沙夜梨さん。フッフッフッ、俺ばかり損な役を押し付けた報いだ!!
しかし・・・
そんな小さな復讐も、後で後悔する事になる。怒られたよ、鮎華・鮎美・琉依さんに。沙夜梨さんは怒んなかったけど・・・。
「更科さん、私達まで巻き込まないで下さいよ〜!」
「ホント、今度は相談してよ〜!!」
「ごめんね、二人共!!」
精神誠意、謝ったのは言うまでもないのだが・・・。
「玲、私に謝罪はないのか?」
元はあんたのせいだーーっ!!!!




