第二話 海凪家の人々
すっごく熊本弁が入ってきます。読みづらくてすみません(汗)
とりあえず、海凪家へ行く事を了承した俺。大物のチヌをスカリ(魚を活かす為の網状の道具)に入れて海に浮かべる。再び竿を海へ向け、マキエを撒いて、ポイントを作る。
その間に隣は投げ釣りの準備を始め、女性の大半は嫌がるであろう虫餌を抵抗無しにハリに通す。
「ん、どした?」
「いやぁ、よく虫餌を触れるなぁと思って」
「伊達に漁師やってる訳じゃないよ!」
だそうだ。さすがに漁師と言い張る事はある。女性である為、男より非力ではあるが、そこは長年培ったであろう無駄のない手捌きで竿を振る。
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結果、俺はチヌを筆頭にアジを20匹とカサゴ3匹。海凪はシロギスを31匹となぜかタコを1匹。(投げ釣りでタコは釣れます!)中々の釣果だった。
「んじゃ、家行こう!!」
「あ、うん」
全ての魚をクーラーボックスに仕舞い(チヌは大きすぎて尻尾がはみ出している)、とりあえず海凪家へ行く事になった。どれくらい釣っていたのか正確にはわからないが、辺りはすっかりオレンジ色に染まっていた。
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「ただいま〜!!お客さん連れて来たよ!」
玄関を開けて家中に響く声を上げる。中からパタパタとスリッパを履いた綺麗な女性が紺色のエプロン姿で出て来た。
「おかえり、あら、そちらの方がお客さん?」
「あ、は、はじめまして、仁科です」
「ほら、チヌとアジ貰っちゃったし、お礼の意味を込めて連れて来たんだ!!」
「あら、それはそれは。どうぞ、おあがり下さい」
「すみません、お邪魔します」
鮎華に背中を押され、とりあえず中に入る。さすが漁師の家、壁には大きな鯛の魚拓が飾られている。通された先には鮎華の両親らしき年配の夫婦がくつろいでいた。
「ただいま!さっきそこで一緒に釣りしてた仁科さん!釣れた魚を貰ったから、お礼に連れて来た!!」
「はじめまして、仁科です」
「・・・魚?」
食いつく所がちげえぇぇっ!!!!え?見ず知らずの男の事じゃなくて魚!?俺、魚に負けたの?
「ほら、これこれ!!」
「・・・ほぉ、チヌかい!」
台所で父娘の話し声を背に受けながら、居間には俺と母親(?)の二人だけが残されている。イコール、俺にとってはひじょ〜〜〜に気まずい・・・。
「ゆっくりして行って下さいね!!」
「あ、はい」
勧められるがままに居間の座布団に座る。・・・それにしても、この家の女性はみんな美人である。母親であろうこの人を始め、今台所にいる鮎華とその姉とおぼしき人も。親父さん(?)も、いかにも海の漢って感じである。
「鮎華に無理矢理連れて来られたんでしょ?ごめんなさいねぇ、あの娘少し強引な所があるから」
「あ、いえ。こちらこそ突然お邪魔して・・・」
「私は寧ろ歓迎してるわよ!なんせ男嫌いの鮎華が連れて来たんだもん」
台所にいたお姉さんが大皿を抱えて居間へとやって来た。大皿には先程まで元気に泳ぎ回っていたアジが、刺身となって綺麗に盛り付けられていた。
「私は鮎華の姉の海凪沙夜梨です。鮎華の下にもう一人妹がいるわ」
鮎の次は沙夜梨か・・・。あ、たしかサヨリって魚いたっけ?・・・て事は、妹さんも魚の名前か?
「それにしても、こんなに大きなチヌを釣り上げるとは、たいしたもんばい!!」
台所から親父さんが戻って来た。どうやら機嫌は良さそうだ。
「あ、いえ。ホントにまぐれですよ!!」
「いやいや、まぐれじゃあがんデカイチヌは上げきれんて」
謙遜する俺の肩をバシバシ叩きながら、立ち上がった俺を座らせ、なぜか隣に座る親父さん。
気にいられた?
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程なくして、宴?が開かれた。釣りの話しで盛り上がる中、妹さんの鮎美さん(やっぱり魚)も帰って来て、より一層の賑やかさを見せる。
「そぎゃんか〜。兄さんは大学生ったい?」
※そうなんだ、お兄さんは大学生なんだ?(熊本弁)
「大学では海洋学ば学びよっです!!」
※大学では海洋学を学んでいます(熊本弁)
「ほぉ〜!んじゃ将来は偉か学者さんにでもなっとね?」
※へぇ〜、それじゃあ将来は偉い学者になるのかい?
などと半ば強引に親父さんから酒を飲まされ、ほろ酔い気分で意気投合。
「よし、俺は兄さんが気に入った!!明日は鯛釣りなっと行こかね!」
「よかっですか?」
「よかもなんも、俺がよかて言いよるけんよかったい!!」
「あ、じゃあ私も行く!!」
そんなこんなで明日は鯛釣りへと行く事が決まったが・・・。ホントにいいのか?
まあ今は特に予定なんてないし、漁師の仕事ってのも、もしかしたら海洋学に関係のある事かもしれない。
大量のアルコールでテンションも上がり、こうして海凪家の賑やかな夜は更けて行くのだった。




