表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海人!!  作者: 矢枝真稀
19/33

−−− 鳳翔祭最終日!!中編その弐!!

特別コンテスト、最初の参加者は、我が従姉妹である塩沢琉依。控室に設置されたモニターで見ているのだが、普段の白衣姿なのになぜか少し違和感がある。



「何でメガネ?」



モニターに独り言を漏らす俺・・・なんか虚しい。

そう、メガネである。いつもは裸眼、視力は良い筈なのに・・・何で?



「成る程、今流行りの“萌え系”ってやつだな」

「うわっ、びっくりした!!」



背後から突然の声。いつの間にいたのか、会長である。



「どうしたんですか?控室に来て」

「更科、決勝まで来たのだ。もはや優勝を狙うだけだな」

「だ〜か〜ら〜無理ですって!無理でしょ、このメンツじゃ明らかに最下位ですって。それに優勝とか興味ないです!」

「まだそんな事を言ってるのか。お前は執行部と鳳翔祭実行委員の代表だ。優勝以外は認めない、これは命令だ!優勝出来なかった時は、罰を与える!!」

「んな無茶苦茶な・・・」



今日の会長・・・いや、未菜先輩はどこかおかしい。普段なら

「頑張った結果なら文句は無い」とか言うのに。何故優勝にこだわる!?

罰って言葉が気になるが、とりあえず今は優勝を目指して頑張るしかない。決勝用の衣装に着替え、メイク(もう慣れた)をしてもらう。完成に要した時間は5分弱、再びモニターに視線を移し、半ば強制的に参加させてしまった海凪三姉妹の出番を待つ事にした。






→→→→→→→→→→→→



《鮎華視点−−》



うっわぁ・・・緊張してきた!!最初にステージに上がった塩沢さん、もちろん美人だけど、メガネをかけたら更に印象が変わって、知性と美貌を併せたキャリアウーマンって感じ。順番はあっという間に回って来て、気がつくと私の前の人の番・・・ステージの袖で出番を待っている私。緊張が高まり、少し目眩染みた感覚に襲われる。



『さあ、続いての登場は、海際で育った元気系!小麦色に焼けた肌が印象的な美人三姉妹の一人、海凪鮎華さんです!!』



来た!・・・ってか元気系って何!?なんか、緊張してたのが馬鹿馬鹿しくなってきた。もうこうなったら、せっかくのコンテスト、楽しんでやろうじゃん!!




→→→→→→→→→→→→







《玲視点−−》



「あ、鮎華・・・!?」



モニターに、思わず疑問の声を漏らしてしまう。別人かと思った・・・そこに映し出された鮎華の姿、小麦色の肌に映える白いシャツに、デニム地のミニスカート。適度に露出した胸元には、黒いチョーカーが目を惹く。柔らかな笑みを浮かべ、颯爽とステージを歩く姿に、俺は目を奪われた。



「可愛い・・・な」



知らぬ間に、呟いていた。それは俺の本心か・・・。




出会いは突然・・・あの海で。初めは、少し強引だけど懐っこい、地元の女の子って感じがした。それは、つい先程まで感じていた感情と同じ・・・でも、今は・・・モニターに映る彼女に惹かれ、“懐っこい後輩”として、ではなく・・・









一人の女性として・・・。










海凪鮎華に惹かれている・・・。




「まさか・・・」



自分に問う・・・この感情は何なのか?この気持ちは、何なのか・・・?

答えなど、返って来る筈も無く・・・言葉は、宙に浮かんだまま。

モニターには、客席に笑顔で手を振る鮎華の姿が、映し出されていた。






→→→→→→→→→→→→






特別コンテストは、無事に終わりを迎えた。沙夜梨さんや鮎美も、満面の笑みで歓声混じる会場席に手を振っていた。それはモニターにも映し出されていたが、この二人に、特別な感情を抱く事は無かった。ただ、鮎華の姿だけが、俺の脳裏に焼き付いて、消えない・・・。




「女装コンテスト参加者の皆さんは、スタンバイして下さい!」



控室に入ってきた委員長に促され、俺はステージの袖にスタンバイする。



「更科、どうかしたのか?」

「え、あぁ・・・大丈夫です」



委員長の声に反応はするが、心ここに在らず・・・。



「更科、会長に何か言われなかったか?」

「え?・・・そうでした、頑張ります!」



委員長の一言が、現実に引き戻す。

今はコンテスト、結果がどうなるかなんてわからない。

俺が鮎華をどう思っているかも、わからない・・・でも、今はそんな事を考える暇もない。ただ、精一杯、頑張るだけ。さっきモニターで見た海凪三姉妹の表情・・・彼女達は楽しんでいた、ならば俺も、楽しもう。せっかくの決勝じゃないか、駄目で元々。結果なんてどうでもいい、楽しめれば、それでいい!!



『それでは、次の方は更科玲さん。初戦・準決勝では見事に女性らしさを見せてくれました!決勝ではどのような姿を見せてくれるでしょうか!?では、どうぞ〜!!』



楽しめれば、それで良い。そう思うと、緊張なんてしない。表情に余裕が生まれ、自然と笑みが零れる。カーテンの先には、ステージ・・・。楽しむならば、気持ちも女性らしく!俺、じゃなくて私は、開かれたカーテンの先・・・光差し込むステージへと、一歩ずつ、歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ