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海人!!  作者: 矢枝真稀
16/33

−−− 鳳翔祭二日目!!後編

少し長くなりました

《鳳大学学生食堂》



現在学食内で日替わり定食を食べている(琉依さんの奢り)。それにしても・・・。



「鮎華ちゃん、よく食べるねぇ」

「そう?ってかちゃん付けはやめて、なんか恥ずかしいから。せめて呼び捨てで」



呼び捨て・・・ん〜、あんまり呼び捨てって好きじゃないけど(あ、麻希は別だけど)、本人がそう言うんだからそうしよう。



「あ、出来れば私も呼び捨てで」



鮎美ちゃん、あなたもですか・・・。



「じゃあ私も!」

「それは無理!!」



沙夜梨さんまで何便乗してんの!?



「ふむ、それじゃわた・・・」

「もういいわっ!!」



あぁ、もう・・・思わずツッコミしちゃったじゃないか!見なよ、この周りの視線・・・特に今日は外部(鳳翔祭のお客さん)の人が多いから奇異な視線も混じってる!!




ピンポンパンポン!!



ん?



『鳳翔祭実行副委員長の更科玲さん、更科玲さん、至急特設ステージ前に来て下さい!繰り返します・・・』



やっべぇ・・・忘れてた!



「玲、あれか?」

「あれです・・・」

「ハァ・・・」

「なんで塩沢さんが溜め息!?」

「私もコンテストに参加しなければならないんだ」

「えぇ、女装コ・・・グフッ!?」



なぜか配膳用のお盆が頭を直撃!姐御、一体どこからそんな物を!?



「あほう!明日の特別コンテストだ」

「あ、そうだった!ヤバイ・・・俺全然メンバー集めてない!!」



特別コンテスト・・・今年から始まったお客さん参加型のイベントである。昨日、参加者を集めろって指示(命令)があったのだ。



「特別コンテスト?」



慌てる俺の顔を覗き込んだ鮎華ちゃ・・・鮎華。あ!!!?



「そうだ!!鮎華!鳳翔祭っていつまでいる!?」

「え、私たちは一応明日の花火大会までは見て行くつもりだけど。鮎美の高校も創立記念日で休みだし」

「頼む!!鮎華、鮎美、沙夜梨さん、俺を助けると思って、特別コンテストに出場してくれ!!」




・・・・・・・・・




・・・・・・




・・・




「「・・・えぇぇっ!!?」」

「あらまぁ」






⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒







《特設ステージ裏》



「すみません、遅くなりました!!」

「それはいいから、早く準備するわよ!!」



謝罪もそこそこに、俺は控室へと連れて(連行)いかれた。中はすでに美男コンテストのメンバーがスタンバっていた。



「更科、今からか?」

「ああ。お前も決勝頑張れよ!!」



ステージに上がる直前の水城に声をかける。あいつ、もし優勝したらサプライズを見せてやるって言ってたが、何をやるつもりだ?



「更科、まずはこれに着替えろ!」



委員長の差し出した衣装に思わず愕然とするが、一度ステージに立っている・・・もはや吹っ切れた俺に、怖い物はない。衣装を着替え、後はされるがままにメイク。ものの数分で終わった。










⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒


『さぁ、以上で美男美女コンテスト、全ての方が出揃いました!残すは結果のみですが、その前に、女装コンテストの準決勝を行いたいと思います!!』



司会者の合図で音楽が変わり、いよいよ準決勝。続々とステージに上がってゆく参加者の学生・・・なんつーか、みんな様になってて少しヒく・・・。



『準決勝最後はこの方!予選では見事な着物姿を披露した、更科玲さん。今回は打って変わり、活発なギャル姿で登場です。それではどうぞ!!』










⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒


「水城、俺頑張ったよな?」

「ああ、もちろんだ」



控室で審査結果を待つ間、俺は脱力したようにベンチに座る。



『それでは、美男美女コンテスト、グランプリの発表です。まずは、美女コンテストグランプリ・・・』



ステージから聞こえる司会者の声。優勝者の女の子の名前が呼ばれ、観客からの拍手が響く・・・。



『続きまして、美男子コンテスト、優勝者の発表です!!栄えある優勝者は・・・エントリーNo.3番、水城直弥さんです!!』



「おぉ、やったじゃないか!!」

「お、おぉ・・・」



突然の事に呆然とする水城をステージに促し、俺はインタビューに耳を傾ける。


『・・・では、水城さんから一言!!』

「・・・俺には好きな人がいます。だから、この場を借りて告白しようと思います!!」



えぇっ!?ち、ちょっと待て、まだ俺は神崎さんを紹介していない!!

歓喜の声と好奇の視線が、一度に水城に向けられる。しかしながら、本人はいつもの冷静な視線を会場全体に向けている。そして会場の誰もが、水城の次の言葉を待つ・・・。



『え〜突然の告白宣言、お相手の方は?』

「えっと、神崎優さん!!」


会場内は、辺りをキョロキョロ見渡し、そして会場にいた一人の女の子が、顔を真っ赤にして水城の方を見つめている。



『神崎さん、神崎優さん、よろしければステージまでお願いします!!』



戸惑いを見せていた神崎さんだったが、隣の麻希に背中を押され、幾多の視線を浴びながらステージへと上がって来た。



「え、えっと・・・突然呼び出してすみません!!」

「あ、いえ」

「直接の面識は無いと思うけど、一度だけバスで更科の幼なじみと一緒にバスに乗ってる姿を見た事があるんです」

「そ、そうなんですか?」

「はい。その時は、更科の幼なじみの人とは面識があって、神崎さんの事も特に気にかけてませんでした」


一呼吸置いて、紡ぐように言葉を発する水城・・・。



「でも、満員になったバスに乗り込んで来た老夫婦に、誰より早く自ら席を譲ったその姿を見て、少し見方を変えて見た・・・そしたら、好きになりました」



フウっと息を吐き、自分なりの気持ちを言い終えた水城。心なしか、すっきりとした表情を浮かべているようにも見えるが、俺を始め、会場内のお客さん・鳳翔祭スタッフ・決勝に残ったコンテストのメンバーの心中は、みんな同じ。声には出さなくても、水城に応援をしていた。

そして・・・



「私は・・・」



結論を見つけた神崎さんが口を開き、会場内は一層の静けさを漂わせる・・・。



「私は一度だけ、水城さんに会った事があります」

「え?」




話が長くなりそうなので、ここからは第三者の視点でお楽しみ下さい!!



《麻希視点》



あの人って確か、玲の友達だよね、何度か会った事あるし。それに、優に玲が紹介したいって人がこの人。隣を見れば、なぜか真っ赤になってる優・・・なんで?



『告白をしたい相手の方は?』

『神崎、優さんです!!』







・・・え?




「えぇっ!?」

「ま、麻希ぃ・・・どうしよう!?あの人だよ、私の初恋の人」

「えっ、じゃあ前に言ってた気になる人って・・・」



真っ赤にした顔で俯き気味に頷く優。



『神崎さん、神崎優さん。いらっしゃいましたらステージの方まで来て下さ〜い!』

「ど、どうしよう!?」

「まだ好きなんでしょ!?」

「うん・・・」

「なら行かなきゃ!!優の初恋の相手が呼んでるんだよ!ほらっ」



背中を押して応援する・・・真っ赤な顔をしたままで、優はステージに上がり、水城さん・・・だっけ?の告白が始まる。そういや最近、バスに乗った時に会ったっけ。その時も優とだったなぁ。



『・・・そんな姿を見て、俺は神崎さんが好きになりました!』



やっぱりあの時か!!



「・・・私は、高校卒業の日に、コンタクトを落としてオロオロしてた私に声をかけてくれて、一緒に探してくれた姿を、覚えてます。コンタクトが見つかって、一緒になって笑って・・・名前も聞けないままで。それが私の初恋・・・もう一度会いたい、会って気持ちを伝えたい。ずっと、そう思ってました!」



彼女は、優は・・・今まで見せたどの笑顔よりも一番の、笑顔を水城くんに見せた。



『じゃあ・・・』

「私も、水城さんが好きです・・・」



パチ、パチパチ、パチパチパチ・・・。



気がつけば、私は自然に拍手を贈っていた。つられるように、周りから拍手が沸き上がり、歓喜と祝福の声が会場を包んでゆく・・・。




私に深く突き刺さった言葉・・・『好きです』。素直に伝えた優を私は羨ましく思う。私だって、伝えたい・・・玲に、この想いを。

でも、私は・・・







玲を一度、裏切ったから・・・







⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒



《玲視点》




会場内は、なおも祝福の言葉が飛び交い、静けさを取り戻すのに、少し時間がかかった。

再び静寂を取り戻した後、忘れてたであろう女装コンテストの審査結果が公表される。今回の俺の衣装は、前回とは打って変わり、タイトなジーンズにボディライン際立つ黒いTシャツ。黒髪もスプレーで金髪に、何十ものエクステを付け、目立たないようにキャップを被る。イメージは欧米風のギャル・・・って感じだが、俺には胸がある。・・・男なのに何故?

理由は簡単である。背中の筋肉・脂肪を強引に胸の位置に左右から寄せる・あっという間にCカップ!!が・・・もんのすげぇ激痛!!!!正直、息をするのも辛い!ってか、なんで女装コンテストの為だけにこんな事までしなけりゃいけないんだよっ!!


『それでは決勝に進出出来る上位五名の発表です!!』


頼むから早く終われ!!



なんて俺の心情を知る訳も無く、司会者は上位者の名前を読み上げ、その一人一人にインタビュー。痛みも限界に近付いた時、幸運なのか不運なのか、俺の名前が会場内に響く・・・。



『更科玲さん、ステージまで上がって来て下さ〜い!!』



司会者に催促され、痛む体をステージに上げる。苦痛に歪む顔なんて見せれる訳も無く、精一杯の作り笑いを会場のお客さんに見せつける。



『決勝に残った感想を一言!』

「早く胸を圧迫してる物を外したいです」

『みなさん、彼女・・・失礼、彼の胸はパットではありません!なんとこれは・・・』



早く終わらせてくれーっ!!

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