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海人!!  作者: 矢枝真稀
14/33

−−− 鳳翔祭初日!!後編

PM1:00《特設ステージ》



『それでは、美男・美女のコンテストになります!!投票審査で選び抜かれた各十名の精鋭達、今年は誰がグランプリの栄光を勝ち取るでしょうか!?では、どうぞ〜!!』



まさに名司会・・・といったところだろうが、俺はそれどころじゃない!仕事を離れ、今現在、ステージ裏のスタッフルームでメイク&衣装合わせをやっている。鏡を見る事も出来ず、ただ為すがままにされている。衣装は夢で見た通り黒地の着物、所々に白百合の刺繍が施されている。



「それじゃ、帯を締めますからお腹を引っ込めて!」

「あ、はい」



ギュッ!



「〜〜ぅっ!?」



キツイ・・・ってか痛い!!着物って、こんなに苦しいの!?



「よ〜しOK!!次はメイクね!」



もはやまな板のこいである。くすぐったいが、我慢・・・およそ10分、メイクも仕上がったようだ。



「出来たか?」

「あ、出来ましたよ!会長」



背後からの声の主は、鷹峰会長らしい・・・しかし、緊張からなかなか振り向く事が出来ない。



「どれ・・・」



未だ微動だにしない俺の顔を回り込んで覗き込む・・・と、会長(未菜先輩)の顔が一瞬で凍り付く。



「か、会長・・・!?」

「さ、更科・・・か?」

「そうですけど・・・ヘ、変ですか?」



心の中では充分に変だろうと、思いながらも恐る恐る尋ねてみる。



「鏡、見るか?」

「・・・遠慮します」



怖ぇよ!!会長、意味深な発言はやめて!!



「更科、そろそろ出番だからじゅ・・・」

「え、委員長・・・どうかしました?」

「お前、ほんとに更科か?」

「は、はい・・・」



もはやなにも聞くまい・・・。自分の姿なんて恐ろしくて聞けるかっ!!






『以上で第一次審査を終了します!投票結果、上位五名が明日の二次審査に進みますが、集計をしている間、こちらも毎年恒例となりました美人(?)コンテストを開催したいと思います!今年のテーマは《ナチュラル&ビューティ》。それでは張り切って参りましょう!!』



いよいよだ・・・。やべぇ、マジで緊張してきた!!俺は11番目だから・・・って、夢の番号と一緒じゃねぇか!!




⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒










あっという間に順番は回ってきた。『え、こいつも!?』って奴も参加してる。褒め言葉じゃないが、みんな綺麗・・・。




『それでは、エントリーNo.11番!生徒会・鳳翔祭実行委員会を代表して、更科玲さんの登場です。テーマは大和撫子、ではどうぞ〜!!』



もはや、恥ずかしいを通り越して、吹っ切れた!!もう、どうにでもなれ!!



事前に渡された蛇の目傘で顔を隠し、ステージ中央へと足を進める。吹っ切れた俺は傘を上げ、会場のお客さんに顔を晒す。

どうにでもなれ・・・って思うと、自然と演技も出来るし、会場を見渡す余裕も出来る。会場内は先程よりもざわめきが大きくなり、男女ともにア然としている。そのなかに、麻希と神崎さんを見付けた。他者同様にア然としている麻希に手を振ると、応えるように麻希も手を振って来る。再び会場内を見回す・・・あ、いた!!海凪三姉妹。

馬鹿にしてるかなぁ・・・って思ったが、沙夜梨さんは笑顔で手を振ってるし、鮎華ちゃんは、もはや呆然。鮎美ちゃんは顔を真っ赤にしてる。三人娘の真ん中、鮎華に向かってウィンク&投げキッス!!会場内は『キャーっ!!』って悲鳴・・・?でもなんか、みんな手を振ってるし・・・。とりあえず会場内のお客さんに手を振って、俺は舞台の袖に引っ込んだ。やっと、終わったー!!







⇒⇒⇒⇒⇒⇒⇒







とりあえず審査結果が出るまで着替える事も出来ないし、メイクを落とす事も出来ない・・・。仕方なく着物姿のまま、ステージから一番近い出店で焼きそばを買う。朝から何も食べていないので、腹が減っていたのだ。



「スイマセーン、更科さん・・・ですよね?」

「ふぇ?あ、はい」



買い物を済ませてステージ裏に戻ろうとしたら、知らない女の子達に声をかけられた。見た目、美人だけどなんか軽そうな感じ。



「あ、やっぱり!!私たち、谷野高生なんです!」

「え、ほんと?んじゃ俺の後輩?」



谷野やの高校は、俺と麻希、そして神崎さんの母校である。



「はい!それにしても先輩、なかなか綺麗ですよ!」

「・・・なんか、あんまり嬉しくナイ」

「褒めてるんですよ!?ほら、未代!」



軽そうな感じの俺の後輩の横には、これまた軽そうな感じの女の子・・・だけど、なんかもじもじしている



「どうしたの?」

「あの、あ、握手してもらってもい、いいですか?」

「握手?」

「あ、だ、駄目・・・ですか?」

「いや、俺でよければ」



右手を女の子の前に差し出す。俯き気味の視線が、俺の右手を捉え、ハッと顔を上げる。



「あ、ありがとうございます!!」



なぜか右手をスカートの袖で拭き取る仕種をして、差し出した俺の右手に手を添える。



「未代、よかったじゃん!!憧れの先輩と握手出来て」

「み、美緒!!」

「なによ〜」

「憧れ?俺が?」



この子達は、俺を誰かと勘違いしてないか?



「あ、いえ!なんでもないです!!」



???



「まぁ、憧れてもらってるのはうれしいな!」

「あ、先輩。ついでに一緒に写真、いいですか?」

「この格好で!?」



着替える事が出来ない俺・・・当然、女装したままである。



「いやぁ、その姿だからいいんですよ〜!!」



な、なんか腑に落ちない気もするが・・・。



「いいよ」

「やった!!あ、すいま〜せん!シャッター押してもらっていいですか?」



たまたま近くを通っていたお客さんを捕まえ、三人(俺と後輩二人)で記念撮影。




『美男美女コンテスト、上位五名も決定決定したところで、いよいよ女装コンテスト上位十名の発表です!!』

「先輩、発表ですよ!!」

「いやいや、上位に入らないだろうし、入ったらなんかヤだ」



俺が後輩達とおしゃべりしている中、上位者の名前が次々と発表される・・・今の所、俺は呼ばれていない。安堵の表情を浮かべ、着替えをしようとステージ裏ヘ足を向けた・・・。



『それでは上位十名、最後の一名を発表します!!最後の一名、それは・・・エントリーNo.11番、更科玲さんですっ!!!!』



・・・・・・えっ?



「ほら〜、やっぱり!!だってめちゃめちゃ先輩綺麗ですって!!」

「女の私から見ても、ホントに綺麗ですよ!!」



いや、ちょっと待て・・・



「私達が先輩に投票したからでしょ!?」

「そうそう、だって出場者の中で1番綺麗で女らしかったし!」




・・・・・・オイ!!



『それでは各コンテストの代表者の方は、ステージに集まって下さい!!』



「ほら、先輩!」

「え、あっ・・・」



後輩に背中を押されるような感じで、俺はステージに上がる・・・。さっきまではステージから離れた場所にいた麻希達と海凪三姉妹は、いつの間にか最前列の中央に陣取っている。



「玲、マジで綺麗!」



そりゃどうも・・・あんま嬉しくないけど。



「フフフフッ」

「更科さん、こっち向いて!!」



怪しげな笑みを浮かべる沙夜梨さん・・・そしてそこの鮎二人!写メはやめてっ!!


『明日は美男美女コンテストの決勝、そして女装コンテストの準決勝がありますので、こちらもお楽しみ下さい!!では、第八回美男美女コンテスト、そして女装コンテストの一次審査を終わります。この後は、鳳和太鼓の演奏によります演舞《大蛇の剣》。こちらをお楽しみ下さい!!』













ハァ・・・ため息しか出ない。落胆の表情は、ステージに上がったままなので、表には出せない。愛想笑いも疲れる・・・。










そして、ステージを降りた俺は、いそいそと着替えを済ませる・・・俺を視界に捉え、妖しい笑みを浮かべる会長以下生徒会役員。そんな事など露知らず、着替えを済ませた俺は、再び会場案内の仕事に就く。トラブルも無く、鳳翔祭の初日は過ぎていった・・・。

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