第九話 鳳翔祭に向けて!!
《鳳大学第一講堂》
遅い夏休みも終わり、俺は講義を受けている。あぁ、相変わらずつまらない。どうして物理の講義って、こうも睡眠作用が多量に含まれているんだろうね!?
「え〜今日はここまで!」
長い睡眠作用を含んだ物理の講義も終わりを迎え、俺は大きな欠伸をして、講堂を離れる・・・と、誰かが俺の肩を叩いた。
「玲、今終わりか?」
「おぅ、とりあえず午前中はな」
話しかけて来たのは同じ学科の水城直弥。今年の美男・美女コンテストに参加する事になっているイケメンである。
「今から飯だろ!?学食行かね?」
「あぁ、別にいいけど」
普段、俺は大学内にある軽食コーナーで適当な食べ物を買うのだが、たまたま昨日、親から生活費が振り込まれたので、懐には余裕がある。それに、いつもはあまり話しかけて来ない水城が誘って来たのだ。たまにはいいかなって感じで、学食へと向かった。
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《鳳大学学生食堂》
「珍しいな、お前が学食に誘うなんて」
「ん、ちょっとな・・・」
「相談か?」
「・・・あぁ」
御膳に乗せられたカツ丼を席に置きながら、水城の次の言葉を待つ。それにしても、俺に相談とは・・・明日は雪が降るんじゃないか?
「お前の幼なじみ・・・」
「麻希か?」
「そ、そう・・・その親友の女の子、知ってるよな?」
「あ〜えっと、神崎さん・・・だっけ」
「俺、惚れた・・・かも」
「ふーん」
神崎優・・・確か神崎工務店の一人娘だったっけ?同じ高校だったが、あまり面識はない。いつも麻希と一緒にいた事だけは覚えてる。
「ふーんって・・・」
「・・・俺、神崎さんとはあんまり面識ないぞ」
「えっ!?」
「・・・いや、驚かれても」
明らかに落胆・・・って感じの水城。食もあまり進んでいない。
「はぁ・・・麻希に聞いてやろうか?」
「い、いいのか?」
「これくらいしか出来ないがな」
「もつべき者は、幼なじみを持ってる友人だな!」などと調子のいい事を吐かす水城・・・。俺はとりあえず携帯から麻希に電話をかけた。
トゥルルルッ・・・トゥルルル・・・トゥルルッ・・ガチャ!!
『もしもし、玲?』
「おぅ、授業中だったか?」
『ううん、今は昼休み中だけど』
「ちょっと聞きたい事があるんだ」
一通り説明を始める・・・あらかた説明し終えたところで、相手の反応を探る。
『優は付き合ってる人いないよ!』
「そうか、わかった。伝えとくよ」
『あ、玲・・・』
「ん?」
『鳳翔祭って、いつ?』
「再来週の日曜日だけど、来るのか?」
『な、わ、悪い!?』
「いや、別に」
明らかに挙動不審な口調だったが、チケットはうちの会長さんに貰ったらしく、ついでに神崎も来るらしい。しかし、いつの間に会長と仲良くなったんだか・・・。
電話を終えて、未だ不安げな水城に結果を伝える。
「彼氏いないってよ」
「ま、まじか!?」
「ついでに学園祭にも来るって」
「ぉ・・・ぉおっ!!」
しかしわかりやすいもんだな。イケメンも好きになったらただの男・・・か。
「で、神崎さんとはどこで知りあったんだ?」
「実は・・・」
水城の話しでは、街へ買い物へ行く途中、バスの中で神崎と麻希を発見(麻希とは俺を通じて面識があった)。混雑しているバスの中へおじいさんが乗り込み、さりげなく席を譲った神崎に一目惚れ・・・らしい。なんともベタな・・・。
「しっかし、水城が一目惚れとはね〜」
「いやぁ、なんていうかさ、ビビッ!!と来たんだ」
オーオー!瞳をキラキラさせちゃって。まぁ無理もないか・・・俺も麻希と付き合ってた頃は、こんな感じだったっけ?
「・・・っと、もうこんな時間か。悪ぃ、水城。俺、午後から管理棟に行かなきゃなんねぇから、先に行くよ」
「おぅ!」
最初は硬い表情だった顔も、今は緩みっぱなしの水城・・・。手を振る代わりに持っていた箸を振る・・・行儀悪いから!!
《管理棟 第ニ会議室》
「失礼します」
「更科か、とりあえず空いている席に座れ」
会長以下、生徒会執行部の面子は既に揃っており、鳳翔祭実行委員は俺と委員長が揃ったところで会議が始まる。
「まず、イケメンコンテストの出場者は全部で36名。美少女コンテストは全部で28名ですが、こちらは生徒による投票で、代表を各10名に絞ります」
毎年恒例の事だ。
「それと、女装コンテストですが、出場者は全部で42名・・・こちらは全員参加で。本祭のある三日間で、参加者による投票で、最終的には代表8名で決勝を執り行う予定です」
えっ、そんなに参加者いるの?どうなってんのこの大学!!
「もうひとつの提案なんですが、チケットを入手した参加者の約七割が女性・・・緊急企画ですが、参加者からの美人コンテストを予定しております」
えっ・・・?
「予算は?」
「ステージ等は三つのコンテスト用のものをそのまま利用します。賞品ですが、前年度に繰り越した鳳翔祭の予算の一部を賞品に充てる予定です」
「ふむ・・・賞品は私と委員長で決めるとして、何か異論はあるか?」
「「異議無し」」
さすが執行部・・・口調もピッタリだな。
「ところで、我が生徒会と鳳翔祭実行委員の代表の更科玲のメイク・衣装は決まったのか?」
か、会長!?
「既に準備は整っております」
まじか!?
「初日はこんな感じです」
「ふむ・・・よし!!」
えっ、なに?どんなイメージ?
なにげにイラストに視線を送る・・・。
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・・・!!
「頑張れよ、更科」
「えぇぇ〜〜っ!!!!!!」




