−−−先輩の手料理!?その弐!!
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・・・ハッ!?
俺は未菜先輩の部屋のソファで寝て(気絶)していた。・・・先輩の料理の味?それは今、隣で心配している未菜先輩の顔を見ればわかる。
「破壊的な味でしたよ」
「す、スマン!!」
どうやら『美味しい物は、混ぜても美味しい』という理念から不気味な料理(モザイク仕様)が完成したのだった。みるに耐えない料理・・・流石に
「ちょっと・・・」とは言えず、思いきって一口!!そして撃沈・・・。
「・・・気持ちは、こもってました」
「少し、張り切り過ぎた」
申し訳なさそうな表情を崩さず、何度も
「スマン!」を連発する未菜先輩。流石にこっちのほうが申し訳なくなってしまう。
「も、もういいですから!それより、まだ先輩も夕飯食べてないんでしょ!?なら、俺と一緒に夕飯作りません?」
「さ、更科と一緒に!?」
「駄目ですか?」
「い、いや!うれしい・・・」
先程とは打って変わり、再び顔を真っ赤にする未菜先輩。もしかして・・・。
「先輩、ちょっとすいませんね?」
「な、なななななっ!?」
ふむ、少しだけ熱い・・・かな?でも熱はないなぁ。
「あ〜熱はないですね。顔が真っ赤になってるから、もしかしてって思ったんですけど」
「だ、大丈夫!そ、それより夕飯だっ!!夕飯!」
もはや茹でダコ状態の先輩は、必死になって手をバタバタ振る。・・・なんか前にどこかで見たような。
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意外にも、料理をしない先輩の冷蔵庫の中は、ありとあらゆる食材が揃っており、俺は簡単に出来る豚の生姜焼きとタマゴサラダを作った。作る間は先輩が必死になってメモしていた。
こうして出来た料理をテーブルに置いて、やっとの事で夕飯に手を付ける。
「いただきます」
「・・・いただきます」
「味は、どうです?」
「美味い!」
気にいってくれたようだ。先輩の箸はどんどん速くなっていく。気が付けば、俺が半分食べたところで先輩の皿には何も残っておらず、いつの間にか完食・・・。気にいってもらえたようで、なんだか一安心。
「ごちそうさまでした」
俺が食べ終えて、未だテーブルの上に置かれた俺と先輩の分の皿を台所へと持って行こうと手をかけた時、先輩が少し慌てた。
「それくらいは、自分でするから。更科はテレビでも見ていてくれ!」
「そうですか?じゃあ、お願いします」
何故か、不安に思うのは気のせいだろうか・・・。なんかいや〜な予感がするんだけどなぁ。
なんて思っていると、案の定数秒後に起きた。
ガシャーン!!
「せ、先輩!?」
「あ、あぁ心配するな。ただ皿を割ってしまっただけだ。なんせ皿洗いも今日が初めてだからな」
やっぱお嬢様キター!!!あれか?皿洗いとか料理は全てメイドとかがやってるのか!?
「ん?どうした!?」
「いや、小さい頃に料理の手伝いとかしなかったんですか?」
「ん〜、そういうのは全てメイドがやっていたからな。下手に手伝おうとすれば、メイド達が母に怒られるらしかったから、手伝いをさせてもらえなかった」
あぁ・・・やっぱりこの人は、俺とは違う世界に住んでいるんだぁ。なんだろう、一般ピーポーでよかった気がする。
「でも、こうやって独り暮らしを始めて、何も出来ない自分が恥ずかしい」
「なーに言ってるんですか!先輩の場合、俺らより少しだけ家事を始めたのが遅かっただけですよ。」
気休め・・・って訳じゃないけど、俺は未菜先輩の少し暗い顔を見て、明るく答える。
「ありがと」なんて照れてる先輩の顔を見て、俺の顔が少し、熱くなる。
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割れた皿を処理した俺は、先輩の部屋を後にする。
「いつでも遊びに来い!」なんて未菜先輩は言って送り出してくれたけどさ・・・。やっぱ好きな人がいる先輩の手前、そこまで図々しくはない。だってさ、夏休み(本当は秋休み)が終わったら毎日嫌でも顔を突き合わせる事になるし・・・いや、別に先輩が嫌いって訳じゃないから!!
あれだよあれ、日本人ならではの社交辞令ってやつさ。




