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8. ツツミコの魔女その2
ツツミコの地に魔女多し。
ツツミコの奥深くにホーデングリエの大卵の埋まりたるなれば。
大卵は孵るを待ち居たり。
時来たれば、卵は飛び立ちて天へと至らん。
――エイフェンの史記
やがて日が弱まり、夜が来た。
「ところでエンペントリカ、例の遺跡の発掘は順調?もうだいぶ掘っただろ?」解散する前に、魔女が訊いた。
「ええ、エンメントリカ。記述どおり、歪曲した床面……つまり丸くて巨大な構造物の一部が見つかったの。曲率から推測される大きさもほぼ予想どおり」と、魔女は答える。
「『卵が見つかった』とは、言わないんだな」
別に期待はしていなかったが、と呟いて、エンメントリカはナイフとフォークを鞄にしまった。
「……あれは、卵ではないかもしれない。でもすごい魔力を秘めているのは確かよ。必ず解明してみせるわ。災厄を生き延びたら」
「災厄を生き延びたら」
これは、ツツミコの魔女のあいだの別れの挨拶である。
ラヤロップは空を見ていた。
夜なのに月が無いというのは、やっぱり変な気分だった。