76. 神話の世界
「良い余興であった」メクセトは言った。
「余興!? これが余興だと?」カリュカは信じられなかった。
そもそもメクセトにくってかかることがなにを意味するかもわからぬのだから道理である。
「お褒めにあずかり恐悦至極にございます。陛下」アルシャマは慇懃無礼に返事を返す。
「それでこれからどうするつもりじゃ? アルシャマとやらよ」メクセトは問う。
「願わくば、英雄ではなく冒険者として死にたいものですな」アルシャマは答える。
「そなたは地上に帰るのだな」王ヒルテが惜しむように呟く。「面倒な後始末は全部猫に押し付けたと、歴史書には書いておこう」
「地上に帰れるのか?」カリュカは呆然とする。未だにメクセトのヤバさが解っていない。
「そなたはよき妻になるだろう」メクセトに言われた台詞の意味をカリュカが理解する暇もなく、
アルシャマとカリュカは、地上へと送り出されて行った。
……というわけだったのよ。
星見の塔で、コキューネーとラヤロップ、ハルシャニアがキュトスの姉妹たちに報告する。
「すべてはめでたしめでたし、ですか54256」
「新たに登った月、予月」
「豪華絢爛の飾り銃の継承者、アルシャマ……」
「そしてその付属品、暗殺者カリュカ」
姉妹たちの腹の内を伺い知れる者はいない。しかし、これだけは言えることだった。
「「「ただの人間よ、神話の世界にようこそ」」」