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68. カリュカの涙

コキューネーは闇が満ちると同時に全てを理解し、自身とアルシャマに赤外線視覚〔インフラレッド〕の呪文を唱えた。

暗黒神は復活した。

その事実がある以上、もはや敗北したントゥガの領地に留まる意味はない。

ポータルを用いて早急に撤退し、対策を練り直すべきだ。

だが、アルシャマはシミターを構えて立ち上がる。

「……何をしているの?」

「主人公が逃げるってわけにはいかないだろ?」

アルシャマは開かれたポータルの先にいる王ヒルテに叫んだ。

「俺を暗黒神のもとへ!!」





王ヒルテは戦略担当ではない。ポータルによる迅速な再配置、見方を変えれば、それは兵站担当である。

戦略担当、ガラーナ卿の一部である蝙蝠たちは口を開き、ヒルテの耳元で囁く。

「アルシャマ君とやらの言うとおりだ。復活の最中に斬り込むしか勝機は無いだろう」

「万に一つの勝機のためにアルシャマを犠牲にするというか?」

「戦争に犠牲はつきものだ」

「確かに卿は正しい。……だから卿は民草に恨まれるのだよ」

王ヒルテはポータルを開いた。そのポータルに、戒めを解いたカリュカが走り、突っ込んだ。





「卿よ……カリュカをわざと行かせたな?」王ヒルテが咎めた。

「アルシャマ君の無謀さを止めるのがカリュカ君の役割だ。さあ、どうなるかな?」

「一つの勝機か無駄死にか。戦略家の卿にも分からぬことがあるか」王ヒルテが問う。

「長生きしていると、たまに人間が羨ましくなるよ」卿は答えをはぐらかす。


「アルシャマ!」

カリュカの声の先に、闇に飲み込まれようとするアルシャマが居た。だがカリュカの声は聞こえていない。

精神を集中しているのだ。これから繰り出すただの一撃のために。


〔イア=テムの呪いの剣〕!!

シミターは振り下ろされ、漆黒の闇を深く鋭く切り裂いた。





アルシャマの一撃は確かにダメージを与えた。しかし、暗黒神を滅ぼすにはほど遠かった。

闇は再び満ち、そのまま、再び闇に取り込まれそうになるアルシャマ。


カリュカは、暗黒神の反撃を狙い打ち、自分の、暗殺者としての奥義を繰り出す。

カリュカは叫んだ。

「暗殺〔カットスロート〕!!」


その急所への一撃は、一時的とはいえ、暗黒神の反撃を封じた。

カリュカは小走りにアルシャマに走り寄り、その首根っこをひっ掴むと、開いていたポータルへと投げ込んだ。


やっぱりアルシャマは馬鹿だ。こいつは阿呆だ。私がそばに付いていないとダメなんだ。

ポータルの向こう側、ガラーナ卿の館に転がり込んで、カリュカはなぜか大粒の涙を流していた。

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