59. 劇の台本
あるところに魔女が一匹おりました。
魔女は民草に石礫を投げられました。
魔女は槍を憎みました。
槍とは柱であり、アルセスのことです。
柱の上には飛来神群がいました。
飛来神群の上には暗黒神がいました。
暗黒神は言いました。
死ざる魔女よ。おまえは我が敵アルセスの恋人。
おまえは永劫に生き、石礫を受けねばならない。
それはキュトスの呪いなれば。
魔女は槍を憎みました。
魔女は柱を憎みました。
あるところに魔人がいました。
魔人は魔女と出会いました。
出会うべくして出会いました。
魔女は槍が憎いと言いました。
魔人はそうかそうかと言って笑いました。
余も槍が憎い。神々が憎い。
なれば、我らは槍へと至る道を作り、我らの敵を打ち倒そう。
あの暗黒神の首をはね、我らが神に成り替わろう。
魔女は冗談だと思いました。
魔人は準備を始めました。
着々と、準備は続けられました。
ところで、この世は啓示に満ちています。
魔人は実は魔女でした。
魔女と魔女が槍を憎むには、相応の理由があったのです。
魔人が聞いた話では、飛来神群の数は1032柱。
魔人は1032の武具を鍛え、1032人の英雄を揃えました。一人一殺です。
魔人は戦端を開き、神々に宣戦を布告しました。
しかしそれは、魔人を倒すために、暗黒神と組んだアルセスの罠だったのです。
飛来神群はたくさんいました。
たくさんたくさんいました。
数え切れぬほどの神々が、魔人を討ち取ろうと攻め寄せました。
魔人に1032柱と法螺を吹き込んだのは、ほかならぬアルセスだったのです。
魔人は運命を悟りました。
1032と300の神を滅ぼした後、魔人は囚われの身となりました。
魔女は何度も死のうと思いました。
しかし魔女は死ねませんでした。
嗚呼、それがキュトスの呪いなれば。
魔人は死にました。暗黒神は笑いました。
笑い転げていて、暗黒神はアルセスの裏切りに気付きませんでした。
アルセスは紀元槍で暗黒神を貫きました。
魔人を殺してしまったあとは、暗黒神は用済みだったからです。
こうして、暗黒神を失ったマレタは、光に満ちる世界になりました。
めでたしめでたし。
でもアルセスは魔女に恨まれたままでした。
悪いのはアルセスです。




