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53. ガラーナ=フェラスト卿

トレドマドは共和制のもと、議員たちが治める自治領域――広義の国家である。

トレドマドの原型は、伝説の商人ウーヤルが広大な土地を買い取り、市場に税がかからないようにしたことから生まれた。

三つの国家の中間に位置するトレドマドの市場では交易品が売り買いされ、ゆえに交易都市として知られる。

また、市場と市街地を囲むように造られた城塞は堅固であり、そのためトレドマドは城塞都市とも呼ばれるようになった。





公演には有力議員の許可がいる。

ローエンは誰が有力議員かは明日から調べればいいと思っていたが、ラヤロップは違った。


夜の帳が落ちたあとも尋問は続く。

「お前は悪党か?」ゴスバキゲリリリグキャ「お前より悪い悪党は居るか?」

繰り返される質問。

掘り返し暴かれるトレドマドの真相。


ラヤロップはここでも真の悪党を断罪する気満々だった。


「議員ガラーナ=フェラスト卿」


その名に辿り着いたのは、幸運だったのか。

あるいは、前例の無いほどの不幸だったのか。





議員に会いに行く。

朝の宿で言い出したのは他ならぬラヤロップだった。公演の許可を取りに、ローエンもついていく。

アルシャマとカリュカも、トジコとツツミコの近況を伝えたいからとの口実でついていく。

結構な大所帯になった。


昨日集めた情報によれば、フェラスト卿は貴族であった。

古風な館の奥で朝食に興じているところに旅人が闖入してきたのだからたまったものではない。


騎士が立ちはだかったが、ラヤロップは騎士を一蹴した。





「あんたがトレドマド一番の悪党か」ラヤロップは断言した。

「そういうことか……少し誤解があるようだな……」


「余は歴史あるヴァンパイアの一族だ。議員として約500年影響力を保ってきた。それを憎み、わたしを悪とみなす風潮があるのは理解できぬことではあるまい?」

「だが私は正直なところトレドマドの繁栄にしか興味がないのだよ。悪事を働くなどとんでもない」





ものすごく何か言いたそうなラヤロップを手で制して、アルシャマが言った。

「それはそうと俺たち劇やるんだよ劇」

ローエンもここぞとばかりに言の葉を繋ぐ。

「そそそ、そうなんです!我が劇団マレナカッタにぜひとも劇場公演の機会を頂ければ!」


それを聞いて、卿は言った。

「そうかそうか。それならばまず、余が観てから、判断しよう。この館の広間の一つを貸し与えるから、準備するがよい」

「じゃあそういうことでOK?」アルシャマがローエンに聞く。二つ返事でローエンは首を縦に振った。


トレドマドでのローエンの試練は始まったばかりである。

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