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52. 解けた呪い

「これがヒルテ坊やの『声』だよ」


苦草の魔女ヘギュラは負けを認めると、何かが封ぜられた小さなビンを放り投げた。コキューネーがひょいと受け取る。


「ヒルテの坊やはあたしんとこに自分で頼みにきたんだ。声と引き換えに魔法を掛けて下さいってね」

「誰にも見つからずに旅をして、見聞を広めたいと。王たるにふさわしい知恵と知識が欲しいのだと。そんな便利な呪文は無いとあたしが言ったら、あなたの得意な『呪い』ならあるでしょうと抜かしやがった」

「だから〔ひとりぼっち〕の呪いをかけてやったんだよ。古臭い悪戯の呪い。誰にも会えなくなるかわりに、誰にも見つからなくなる呪いをね」


洗いざらいぶちまけると、ヘギュラは天を仰いだ。


「まるで……昨日のことだったような気がするねえ」





コキューネーの手によってビンの蓋が開けられると、煙がヒルテの喉元に吸い込まれた。


そして王ヒルテは言った。


「苦草の魔女ヘギュラよ、大儀であった。イクスバルよ、ヘギュラの言い分は真実まことである。余は民草に混じり見聞を広める旅をしておったのだ」


あまりに威風堂々と、朗々たる声が響いたので、猫たちは唖然とした。


「これまで国を統治してきた将軍イクスバル、余を見つけ出した地上の魔女コキューネーに礼を言おう。余は自身に宿る世界門〔ポータル〕の魔力を用いて国々各地を巡り、マレタの民草の実情を知り、多くを学んだ。故に、余は今こそここに宣言する。トジコに王は帰還せり、と」


猫たちは感激のあまり、次々と大声で鳴いた。人は集まり、輪を成して王の帰還を祝った。


その様子を見て、コキューネーは人知れずトジコを去るのだった。

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