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48. 王ヒルテ

猫の国、トジコ=マレタには、王がいる。いるとされている。誰もその姿を見たことはないが。


執務室の豪奢な椅子に座り、将軍イクスバルは頭を抱えていた。比喩的表現。

膨大な天井書籍の束に囲まれて、その総括をする。


「地上の魔女。マレタ全体を滅ぼしかねない力を持った、不死不滅の魔女か」


危険だ。

特にこの「善悪の裁定者コキューネー」なんかやばすぎるんじゃないか。


かといって、将軍という立場上、猫軍総司令部が最初からへりくだった対応をするわけにもいかん。部下たちには「遭遇したら至極丁重に扱え」とは言ってある、が。災厄は唐突に来るものだ。


コンコン……


ノックの音がした。





現れたのは王ヒルテとそれを抱きかかえた魔女、コキューネーだった。


「お邪魔するわね」


コキューネーは椅子にふわりと座る。王ヒルテを膝に乗せ、コキューネーは呟く。


「古臭い『ひとりぼっち』の呪い、王様に掛けたのはあなたかしら」


誰にも会えなくなる魔法。首掛けの魔力が尽きるまで。補充すればいつまでも。


「知らん」


「なら、私とあなたに、共通の敵、王の敵がいるということかしらね」

「私は魔女コキューネー。この国を助けにきたのよ。あなたさえ許可してくれるなら、共同戦線を張りましょう」


その下から見上げる瞳には業火が燃えていて、断れるはずもなかった。





王ヒルテは小さな猫だった。

全てはそこから始まり、そこで終わる。





「トジコの猫に『(まじな)い』使いはおらぬ」


将軍イクスバルは断言した。猫は生まれ落ちたときから何がしかの魔力と共にある。それが剣であれ、火であれ、氷であれ、猫は、魔術などという、後知恵の小細工無しに「猫」なのである。それだけで猫は竜にも勝る、とトジコでは信じられている。

実際、「猫」は自身の魔力と干渉するため、新たな魔法を習得しずらい。


「ならば(のろ)いを掛けたのは人間の魔女ということになるわね」


コキューネーが言う。自分もその疑わしき魔女のひとりであることを差し置いて。


「呪い専門の魔女、苦草の魔女ヘギュラという者が、荒れ地に住んでいる。その者が怪しい。王が見つかったから城に出向くよう書をしたため、使いを出そう」


そしてそのようになった。その間、王ヒルテは沈黙していた。

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