47. 旅路
アルシャマは器用である。
それはアルシャマが器用さの神ウィトクリテに愛されていたからに他ならない。
カリュカは貧乏くじを引きまくりである。
それはカリュカがアルシャマに追いすがろうとするために他ならない。
アルシャマは光速で遠ざかっており、それに追いすがろうとするカリュカもまた、光速での移動を強いられる。
しかし追いすがるものは光速を超えたさらなる速度を求められ、その結果、カリュカは貧乏くじを引いてしまうのである。
「光速光速ゆーても、実際は音速でも十分速いだろーが」とラヤロップがツッコミを入れた。
ラヤロップが思うのはコキューネーの思考速度である。
脳髄を極めただけあって、コキューネーの思考速度は光速度であるとの噂があった。主に姉妹の間での噂。信憑性は高い。
音速超えたらソニックブームが発生するンやで。
ラヤロップは腕のスナップを利かせて「パン」と軽く音速を超えて見せる。
それを見て、ローエン一座とアルシャマたちは「おー」と拍手喝采。
まったくのんきな旅である。
「あー、暇だな」
途中、山賊が襲ってきたこともあったが、ラヤロップが指をポキポキ鳴らしながら立ちあがった。
「山賊ってのは人権が無いんだ。犯罪者だからな。無くていい」
そうして人権をはく奪された山賊たちは、ラヤロップに人生の運を根こそぎ奪われて、死ぬより悲惨極まる状況に陥っていった。
足をもつれさせ、崖下に落ちていった者は、まだ良かった。
その場でひっくり返り続け、全身骨折になる者、自ら首を絞め、自殺を繰り返す者、様々な苦痛をラヤロップは与えた。否、「日常」を削り取ったがゆえに、だろうか。
「山賊には人権が無いんだ」そう繰り返すラヤロップは、笑顔で、天真爛漫で、誰もツッコミを入れられなかった。