39. 牢屋再び
目覚めたカリュカが真っ先に思い出したのは、アルシャマがパラシュートを開いた音だった。
まさかあんなもんまで持っていたとわ……
だが、すぐ正気に戻る。ここはどこか。
牢屋、再び。
カリュカは神託通りに落ちてきた人物として、まったく丁重に檻の中に囲われていた。
「アルシャマ!いるのか!いたら返事しろ!」
鉄格子を握ってカリュカが叫んでも、反跫音がひびくだけ。
ギルド「トリカ」の監獄。略してトリカ監獄と呼ばれるそれは、ツツミコ=マレタの限られたギルド員にしか知られていない極秘の領域。
以前のようにスケルトンを使って骨の鍵を創り出してもよかったが、カリュカはしばらく待ってみることにした。どんな奴が見回りにくるのか、それを知るために。
決して、アルシャマを残して脱獄するのを、躊躇ったからではない。
【羽子】とは、背中にいびつな翼を持った、呪われた子供のことである。
天使と違い、彼らはその翼で飛ぶことができない。
ただ、そこにある、余計な翼。邪魔な翼。
彼らは翼自体の魔力と競合するために、複雑高度な呪文を学ぶことができない。
そのかわり、生まれつき何がしかの強力な力を備えている。
エリアとイクサムはその日、エンペントリカによって、トリカの上級ギルドメンバーに任命された。
「話を引き出せ」連絡を受けたエンメントリカはそう低く呟く。
エリアとイクサムには、牢番と尋問の仕事が与えられた。
「言ってることが同じなら真実、違うなら嘘。ガキでもできる仕事だ。そうだな?」
苛ついたちびのエンメントリカの目は赤く光る。
それでのっぽのエンペントリカは、狩りが順調ではないことを悟る。
トワレは出向き、返り討ちに逢った。この街に迷い込んだ、新しい魔女。「地上の」魔女。
魔女狩りは、いつだってツツミコの地を赤く染める。




