36. 招待状 その2
「招待状ぉ?」
朝食を取っていたラヤロップがその話を聞いたのは、最近の記憶をアバウトに抹消されたローエンの記憶が少しずつ戻ってきたからだった。
招待状はツツミコ国王名義のもので、出国の審査をするからローエンとラヤロップ「だけ」が来るようにと書かれている。
それは一見すると尤もらしく、そして深読みするとあまりに怪しすぎた。
なにしろ場所が変だ。なんで出国審査で郊外の闘技場跡地を指定してくるのよさ。
「100%罠だ。あのトワレとかいう見えないやつと一緒に仲間の魔女が待ち伏せてるに違いない」
「魔女さん、何か別の魔女に恨まれるようなことしたんですか……」じと目のローエン。
「知るか。悪人を教育してたら向こうが勝手に絡んできたんだ不可抗力だ。
ともかく十中八九罠だから私一人で行って返り討ちジェノサイドすることにする」
しかしローエンはなかなか引き下がらない。
なかなか表に出てこないツツミコ国王との面会。その誘惑は名声が全ての劇団の長として、抗い難いものだ。
たとえ眼前の魔女の機嫌をそこねてでも。
「罠だったら逃げますから一目だけでも国王に面会を~」
「来ると死ぬから来るなうっとおしい」
「そこをなんとか~」
「馬車は『一人分』予約しろ」
ローエンは団員にも説得され、最後には納得した様子だったが、大いに凹んでいた。