35. ヒカリクラゲのレッド
マレタ戦役録 ~クラゲの章~
「馬鹿な!そんなことをすればお前たちの色素は!!」
「俺たちの色素と、マレタの未来。どっちが大切だと思う?」
「なっ…」
「そういう問題なのさ。今回は俺たちが犠牲になる。それだけのことだ」
「や、やめろ!やめるんだラピスラ!きっと何か他に方法が…」
『レインボー・ゴッダルティメイト・クラゲリオン! 色素燃焼〔バーニング〕モード!!』
「さあ。これならまだ戦れる。そしてさらばだレッド。後は……頼んだぞ」
「ラピスラーーーー!!」
ハルシャニアが飲む凄じい水音で、レッドは我に返った。一瞬の白昼夢を見ていた。遠い昔のことを。
「レッド!貴様まさか!? この海を消し去るつもりか!そんなことをしていいと思っているのかッ!?」
オニクラゲの非難の声が続いている。確かに一理ある。
マキコ地方にとって、水運は全ての要だ。それを消し去るというのは、確かに馬鹿げていると思う。
だが、ハルシャニアは魔女で、もう海の水を飲み干すと決めてしまったようだった。
レッドはその点については諦めている。
広場での水蒸気爆発は、あのときハルシャニアを殺したはずだったのだ。
だが、生きていた。
治療していて確信したが、ハルシャニアは不死の魔女だ。
よって――自分が全力で攻撃しても、ハルシャニアは水を飲むのを止めることはできない。
クラゲリオンを使えば時間稼ぎにはなるかもしれないが、ハルシャニアはまだ本気を出していない。クラゲリオンで勝てる保証も、無いのだ。
敵対すれば反撃が来る。そして無用な犠牲者が出る。
もう誰もマキコ地方の海が干上がるのを止めることはできないというのなら――。
レッドは、ハルシャニアを守ることで、オニクラゲを守っていた。