34. シズネリの予言
【予言の魔女、シズネリ】
「まるきり反対方向なのです」
ホワイトボードに書かれたシズネリ様のありがたいお言葉は、いつもどおり意味不明だった。
放っておくと危険なので縄でぐるぐる縛ってあるアルシャマさんも、お茶をすすめても飲んでくれないカリュカさんも、二人とも見事に首をかしげてしまっている。
「カリュカさん、アルシャマさん。あなたたち二人がイベントに絡むには、この地図でいうと、ほとんど反対方向にいないといけません。つまりこの森を抜けて、ントゥガの断崖を突っ切り、マキコ地方に行く。そうすることで色々面白おかしく楽しいことになるのです」
シズネリ様はすごいけど、最期のセリフは余計じゃないだろうか。
そんなことを僕ケケリリは思う。
「俺はできれば『面白おかしく楽しいこと』は回避したいんだが…」
カリュカさんがうつむいて、テーブルにのの字を書きはじめてしまう。
「回避は無理です」って、シズネリ様。
そんなに大きく書かなくても十分に伝わってるみたいですが…。
「で、森の魔女さん。そのイベントってのは、『地上の魔女』と関係があるのか?」
アルシャマさんが質問した。
あれ。一瞬、シズネリ様が苦い顔をしたような…。
「『災厄』とは、大いに関係があります。今はそこまでしか言えません」
災厄。その言葉を最近のシズネリ様は恐れているように思える。
お友達のエンメントリカさんとエンペントリカさんにも、本当のことは話していないような。そんな変な印象。
災厄とは何なのだろう。アルシャマさんが言っていた、地上の魔女のことかな? でも悪い魔女なら、トワレさんがやっつけてくれるんじゃないのかな?
災厄。災厄。災厄。マレタの災厄? 戦役の再来?
ケケリリは考える。そんなことあるわけないのに、と。