17. 冒険再開
「釈放おぉ!?」
カリュカは夢でも見ているかのようだった。とりあえず気が動転してしまい、報告に来た猫(目にパンチをくらったあの猫である)の足を思い切りつねってみたが、眉がピクピクと動いていたからやっぱり大きな猫でもつねられると痛いのだろう。
と、いうことは、釈放は夢ではない。
通路の向こうにアルシャマが見えた。
「ア、アルシャマ……俺を助けてくれたのか?」「はぁ?!」
コンマ2秒で即応される。いやぜんぜん期待してなかったけどさ。そこは少しは何か言おうよ。
そりゃあ俺はいちおう感情の無いプロの暗殺者だけどさ。俺のセンサイな乙女心が傷つくんじゃないかとか……ちったあそういうことを考えつつアルシャマは死ね。
「ほら、『冒険許可証』だ。苦労して国の偉い人の許可もらったんだから急いで行くぞ。まずは向こうの山腹だ。俺の勘がそう言っている」
「え?」
(それって……)
「おいカリュカ……まさかとは思うが牢屋に永住する趣味があるのか? いや俺は他人の趣味趣向に口出しはしない主義だが、さすがにここは老後の住居としてはちょっと……」
「いや出る出る出る出る!出るよ!牢屋出ますよ!」
「そうか。頑張れよ荷物持ち」
「荷物……持ちィ?」
とりあえず今日はガマンしておこう。今日だけは。明日は殺す。
助けてもらった直後ではあったが、沸々と溢れる殺意を禁じ得ないカリュカだった。
さわやかな風が吹く草原。アルシャマの先を歩きながら、カリュカは振り返って聞いた。
「そういやアルシャマ、地上に戻る道とか方法とかは聞けたのか?」
「…?」
アルシャマの反応に、カリュカの顔からさーっと血の気が引いていく。軽かった足取りは鉄のように重く。
アルシャマは遠く前方を見る。柱が見えた。右を見る。森が見えた。左を見る。ついでに後ろも見てみる。
知らない土地ばかりである。見たことのない場所だらけである。それゆえに。
「何で戻る必要があるんだ?」
「このど阿呆がああああああああああああああ!!」
すごく不思議そうに首をかしげたアルシャマの腹部に、低空ダッシュキャンセルから放たれるカリュカの無言の死の連打〔デスガトリング〕(浮かし性能あり)からの27連続HITが吸い込まれていった。