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1. 冒険者アルシャマ

 むかしむかし、平らだった大地が丸くなったとき、3つの国が大地の裏側に引きずり込まれた。

 マレタ(地底)に伝わる話によると、それら3つの国の名は「マキコ=マレタ」、「トジコ=マレタ」、「ツツミコ=マレタ」という崇高な名前であったという。





初めて《冒険の書》を探す旅に出たのは冒険者アルシャマである。アルシャマの名は、「体長20mの怪魚を探しにいったら40m級のヒトデに襲われたでござる」「塔かと思って登ったら砂に埋まった竜のしっぽだったでござる」などの

落語の元ネタとして有名である。


冒険者アルシャマの探索行を妨害したのは、各地にひっそりと根を張る《不死者の教団》である。

不死者の教団は真面目に人体を研究、強化して不死を目指す団体である。(最近はあまり流行っていない)

教団長である妖術師カルドンにとって、教団と別の手段で不死者を目指す者は

信者離れを加速する敵であった。

また、誰かが実際に探し始めた書を、単なる噂だと否定することも難しかった。

まさに寝耳に水、大慌てでアルシャマを追った。


一方アルシャマはイチロナンベイに飛んだ。

イチロナンベイは怪奇に満ちた古代の廃墟である。大部分が水没しているあたりが冒険マニアに高評価されている。

また、アルシャマは飛びトカゲ商工組合につてがあったので、この場合の「飛んだ」は飛行を意味する。


様々な呪術秘術をもってしても教団のアルシャマ追跡行は困難をきわめた。

普段は敵対している、神秘は神秘のままにしておこう!を教義とする《不思議愛好会》との間に共同戦線が張られたのも無理はなかったといえる。

この件が教団のさらなる飛躍を生むのであるが、長くなるため割愛する。


一方アルシャマはイチロナンベイの地底湖を飲み干しつつある魔女ハルシャニアを見つけた。 稀代の変人、海水飲みの魔女として知られるハルシャニアは、地上では知らぬものの無いキュトスの姉妹である。


アルシャマは地底湖の水位が下がって洞窟が露出していることを見つけると、

意気揚々と地下へと降りていった。


大地の奥には、紀神に負けて丸められた飛来神群などが詰まっているという。

しかしアルシャマはあまりそういうのを気にしない人なので、ガシガシ踏みつけて先を急いだ。

こういうのは早い者勝ちである。


少し後、踏まれて目覚めた数柱の飛来神群は、アルシャマを追い掛けてきた不死者の教団信者たちを貪り食ってから、再び死の如き眠りついた。


アルシャマが疲れと空腹を感じはじめたころ、視界に光があふれ、唐突に広大な空間が広がった。(これをトートロジー文法という。例:頭痛が痛い)


眼下にはある意味で見慣れた、ある意味で異様な光景があった。地底都市。城塞が街の周囲を囲み、水路も見える。


大昔に紀神によって大地が丸められた際に、裏側に巻き込まれた都があり、彼らはいつか地底から攻め上ってくる。そんな子供むけの御伽噺がアルシャマの脳裏をよぎった。


「マレタ(地底)にようこそ」

声を聞くのと意識を失うのは同時だった

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