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ディストピア=ソードレイン  作者: 暦坂あっつん
第一章
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第二話

 高架下。今ここにはいくつかのパトカーが止まっている。(なお警察という枠組みは一時崩壊しており、第八地域では治安の安定を目的として再現されている。ゆえに再現されていない地域もある。)

そこには警察官が集まり"死体処理"を行いつつ、現場に居合わせた人に話を聞いている。

と、いっても現在ここに居合わせたのは雪歩と少年だけなのだが。それ以外の人、つまり不良は全員ビニールシートの下だ。


「はぁ~。全く、勘弁してくださいよ!あんた一日に何件の"処理"を行わせるんですか!」

「えへへ~ごめんごめん。」

その警察官は頭をむしりながら少年に説教をしている。仮にも『十刀』の一人だが大丈夫なのだろうかと雪歩は思うが、少年が全く意を介していない様子を見るとよくあることなのかと思ってしまう。

その警察官は咥え煙草タバコをした。三十代後半だろうか。野太い声でこう続ける。


「あんたのしたことの"処理"は全部俺に回ってくるんですからね・・・で?今回は強姦魔紛ごうかんままがいいなことをしようとした不良を処刑・・・・って、あんたこんなことで処刑するんですか!?」

「だって命令権を犯罪目的で使用したんだよ~。」

「だとしてもあれは懲役8年でしょう!」

「強姦罪は・・・・」

「そりゃ無期懲役!」

「え!?無期懲役なんですか!?」思わず声を上げてしまった。

「僕に見つかったのが運の尽きだ。」

「お嬢ちゃん。ホントごめんな~。このバカが怖い思いさせて・・」

「い、いえ・・・助かりました。ありがとうございます。」

「ム、僕はシゲちゃんより立場は上だよ?それをバカとはいかんねぇ。」

そのシゲちゃんと呼ばれていた人は少年を無視して続ける。


「そうだな。自己紹介しておくよ。俺は豪坂ごうざか 茂彦しげひこ。第八地域警察 課長だ。」

「シゲちゃんって呼んであげてー。これでも警部なんだよー。」

「で、こいつの名前は知ってるとは思うが・・・」

知ってるも何も知らないわけがない。ここ、第八地域統括者にして【首狩り】の名を持つ『十刀』・・・

八裂やつざき朱林しゅりんでーす。よろしく~。」



 八裂朱林、彼の武勇伝はかなりある。過去最年少で十刀になり、2年前の第四十三次外界遠征ではSランク級の蝕魔を3体討伐。かなりの犯罪者を殺して、今は1万人以上殺していると言う噂もある。

また稀代の戦闘狂で、犯罪者を見つけては戦って殺しているらしい。という噂については実際見てしまったのだが。ゆえに皆から畏怖と犯罪者を殺す処刑人の姿を直喩して、【首狩り】というあだ名がついたらしい。

 しかし雪歩を驚かせたのは、その朱林という者が()()()だと言うことである。この地域がこの少年によって統括されていると聞くと、なにか小説の物語のような気分に陥ってしまう。雪歩はそう感じた。


 豪坂が話題を変える。

「さて、お嬢ちゃんには取り調べがあるけど、それが終わったら帰ってもらって構わない。あと、心理カウンセリングを受けることをお勧めするよ、あんなのを見た後じゃ堪ったもんじゃないだろう?」

「あ、ありがとうございます。豪坂さん・・・」

そこに突然朱林が割って入る。


「ダメです!雪歩は私の"眷属"になってもらうんだ!これは命令です!」

「え、えぇ・・・」雪歩は困惑する。

「八裂さん、アンタはまた何を言い出すんですか・・・まあそれについての処理は上の処理なんでしょうけどねぇ。」

豪坂が溜息ためいきをつく、

「あんまり迷惑にするとお嬢ちゃんが困るんだよ。それは分かってるのか?アンタがいくら偉くったって民に迷惑をかけ続けるのは俺は認めねえぞ。」

豪坂がいい加減にしろと言いたげな口調で言う。

「民に迷惑かどうか、それを決めるのは僕です。それは分かってるのか?」

それにふざけて朱林が返す。


そうだ。この日本ではJCBFランクが全てであり、その頂点にいる十刀がすべてを決める。低ランクの人間には何も決める権利などはないのだ。それが己の運命を変えるものだとしても。



豪坂がまた溜息をつく。

「まあとにかく、今から暑に向かうからとりあえず車に乗ってくれ。」

雪歩はその言葉に驚く。

「え!車ってもしかして自動車のことですか!?の、乗っていいんですか!?」

そのセリフに二人は面食らった顔をする。

「そ、そういや車はランク6以上だったな・・・・」

「まあ別に今回は僕が許します。」

朱林がニヤリとする。

「もしかして、嬉しい?」

「え、あ、はい。ちょっと嬉しいです。」


それもそうだ。車、もとい四輪自動車の使用はランク6以上の権利である。雪歩には手が届かない物だ。ゆえに女性であっても車など、珍しいものには惹かれるものがある。




「じゃあ、そろそろ行こうか。」

--------------


「そういえば親御さんにも連絡しないとな・・・」

豪坂が呟く。それに雪歩は物憂ものうげな顔をする。

「いえ、結構です。両親とも5年前に他界しているので・・・」


「・・・すまなかったな・・・・親御さんは"被災者"だったか・・・」

豪坂が動揺した様子を見せる。


「へ~もう死んでるんだ。でも無理はないね。あのは"収穫災しゅうかくさい"ひどかったからね・・・」

八裂もどこか遠くを見るような眼をしている。車内が暗くなるような感じがした。



「ま、そんことよりさ~。雪歩は何であんな道通ったのさ、人通りが少ないとこは危ないぜ~。」

八裂が露骨に口調を陽気に変える。

「そうだな。あそこを通る通学路がある学校はないと思うが」

「あ、すいません・・・たまに時間が遅いときとかに通ちゃうんです。」

「え~いけないな~。次から通ちゃだめだよ!」

八裂が子供っぽく言う。その真意を感じ取り雪歩は少し心が安らぐ。心配して話を変えてくれるのは雪歩としては願ったり叶ったりだ。あのころのことは思い出したくない。



 話題そらしで、雪歩はふと疑問を思い出した。

「そういえば豪坂さん、特別処理課って何ですか?あまり聞かないのですが」

豪坂が悲しい顔をする。

「お嬢ちゃん。うちの課に興味があるの?入るのはやめたほうがいいって・・・」

「む、シゲちゃん。それは今の職に不満かい?」

豪坂が頭を掻き毟る。

「あー、アンタは黙ってて下さいよほんと・・・」

「特別処理課、通称"特課"。特定の事件につかず、地域内のはぐれ蝕魔討伐や重犯罪を取り締まったり、また後処理を徹底的にこなしたり、マスコミを騒がせないために色々な証拠隠滅しょうこいんめつ、さらには工作活動や諜報活動のような"裏処理"も行うと・・・まあつまり自由に動ける機動部隊みたいなた感じの部隊。ってのが表向き。」



「実際はほとんど"そこのバカ"の補佐がほとんど。」

「バカとは何ですか!それにそれやってるのはシゲちゃんだけですー。」

「と、いうわけだ。だからあんまお勧めしないよ、お嬢ちゃん。」


雪歩は感心する。

「すごいですね。汚れ仕事までするなんて。豪坂さんって、なんか熱血刑事みたいなイメージがあったんですが・・・でもすごい頑張ってるんですね。それは誇ることだと思います。」

「お、おう。そうか・・・」

豪坂がぎこちなく答える。

「お?ちょっと嬉しい?」

「うっせぇ!」


-----------------

「そういえば学校はどこに行ってるんだ?」

唐突に豪坂が言った。

「公立川口高校です。」

豪坂が驚く。

「へえ~"公立"かい。そりゃすげえな。」


学校は一度、蝕魔大戦時に学徒動員として解体された。そして平和になった後、成人前の者には知識が必要であるということで、学校が復活した。しかしほとんどが企業によるもので、公立は、当時の官僚達が渋り、公立が極端に少なくなった。よって公立は人気が高くなり、必然的にエリート校となった。

現在公立は、日本"全体"で十数校しかない。


「戦闘訓練とか大丈夫なの?というかよく入れたね。」

八裂が言う。

「はい。戦闘訓練は赤点ギリギリです・・・・なんとか座学のほうでは入れたって感じです。」

雪歩は、戦闘は得意ではない。自分でもそれは分かっている。

「しかし何で入ったんだ?ただでさえ大変だと俺は聞いているが・・・」

「友人に誘われたんです。でも私立は学費が高いから、何とか滑り込みました。」

「確かに私学は金がかかるからなー。だから高ランクしか学校に行けなくなる。」

豪坂が唸る。

「そこのところどうにかならんのかね、八裂さん?」

「確かにねー。あんまいいこととは言えないね。また議会に議題として提出してみるよ。」

そんなことを話しながら車で走っていた。その時、いや正確には曲がり角を曲がったとき。



"それ"は現れた。



「バカな!?なぜこんなところに!」

豪坂が怒声をあげ、前方を睨み付ける。

雪歩も後ろから前方を覗く。そして目を見開いた。そして全身に恐怖が走った。

"それ"は真っ黒な体をして、全身2~3メートルの大きさだろうか。人型をしている。しかし手足は異常に長くそして細い。

頭は山椒魚さんしょううおのような形をしており、大きな口には鉄ですら軽く引き裂きそうな牙がついている。

そしてなによりところどころ、特に関節あたりに骨のような殻がついている。そこから青い血管が全身にわたっており、血のような赤黒い目を持っている。



そう、それは"蝕魔"。人類を恐怖と、絶望と、混沌のふちに陥れた。人類最大の天敵。それが今、目の前に立っているのだ。雪歩は当然初めて見る。これが、これが蝕魔か。なんて怪物だ。そう思った。

しかし蝕魔はまだこちらに気付いていないようだった。

「どうします!?八裂さん!」

豪坂が焦りながら問う。雪歩は隣を見た。しかしさっきまでいたはずの八裂がいない。

代わりに車の上から声が聞こえてきた。

「シゲちゃーん。車フルスロットルで出して。」

雪歩は困惑した。何をおっしゃってるんだこの人は。しかしそれは豪坂も同じだった。

「なにいってるんですかあんたは!?」

「いいから早く。」

「ああ、もうわかりましたよ。」

豪坂が悪態をつく。




戦闘開始

八裂VS蝕魔!しかしこの勝負。距離はあるが車は全力で近付く。蝕魔は車を壊すなどたやすい。勝負は一瞬か!

八裂の攻撃!なにかを蝕魔に投げる。それは速いため雪歩にはよくわからなかった。赤いものだ。

ヒット!不意打ちだ。しかし全く効いていない!蝕魔がこちらに気づく。

「キュオオオオォォォォォォオオオオン」

蝕魔が叫ぶ!怒らせてしまった!安易なミスだ!

蝕魔の攻撃!八裂に向かってパンチ!1メートル50はあった腕は4倍以上に伸びる!八裂がニヤリと笑う。八裂は10センチ程度のその腕に飛び乗り、一気に駆ける!速い!雪歩には捉えられない!

雪歩は気づく。このままだと車がぶつかってしまう!危ない!しかしぶつかることはなかった。


八裂が懐に飛び込みカタナを展開!大鎌で突き刺す!刺したところから青い血が噴き出す!そしてなんとそのまま空高く打ち上げた!


その時八裂は地面に足をついていない。つまり腕の力だけで打ち上げたのだ。なんて力だ。雪歩はそう思った。そして車は蝕魔のいた場所を通過。急ブレーキで離れて止まる。八裂は地面に着地。自然体で構える。そして降ってきた蝕魔が腕を伸ばし攻撃!急降下しているので速い!


しかし八裂はそれを回避し、鎌を下から振り上げる。


そして蝕魔は、真っ二つにされ落ち、動かなくなった。


---------------

パトカーが集まり道を封鎖している。さきの争いよりも圧倒的に警官も人も多い。

「はあ~今日だけで5件・・・・。」

豪坂がうなだれている。

「というよりも!なんで!車で!突っ込む必要があるんですか!こっちには一般人が乗ってるんですよ!」

豪坂が疲れているのかとぎれとぎれにアクセントを入れながらいう。

「全く何も見てなかったんだね。」

八裂が呆れたように言う。

「ちょっと待ってて。」

そういうと八裂がどこかへ行き、誰かを連れてくる。

「この子がいたんだよ。」

それは7~9歳ぐらいの少女であった。しかし髪はボサボサで服も布きれのようなものを着ている。

「ランク1ですか・・・・」

豪坂が悲痛な顔をする。雪歩も少し悲しげな顔をする。



「ま、それよりも説明するね。」

八裂が話を変える。

「車で走ってもらった理由。まずこの子が襲われていた。だからまず注意をひかなければならない。僕も早いっといってあの距離では間に合わなかったかもしれない。ゆえに走ってもらった。」

八裂が続ける。

「それと"君たちを守る"ため。あの距離から注意をひくと、()()()()()()()()()()()しかねなかった。そうなるとあらぬ方向に攻撃が行きかねないからね。何もない車の上部に攻撃を絞ったわけさ。」

さらに続ける。

「おそらくE~Dランクの蝕魔だと思う。攻撃が"腕をのばしてパンチ"しかなかった。まあこれが逆に攻撃を分かりやすくしてくれたおかげだね。でも流石に蝕魔だから車くらい余裕で壊せる。シゲちゃんも車の中で戦えないでしょ。」

「まあ、確かにな・・・」

豪坂が納得する。そして少女に目を向けながら、

「その子どうしましょう。身寄りもいないだろうし・・・」

「今日の僕は機嫌がいい。たくさん戦えたし、面白い人間に会えたし、この子は僕が預かるよ。」

と少女に肩をかけながら八裂が答える。

「じゃあパトカーに乗せていきますか。」

豪坂がほっとしながらそう答える。




ふと、感心に浸っていた雪歩は疑問を覚える。

「そういえば、あれは何だったんですか?あの投げたやつ。」

八裂が思い出したような反応をして、

「ああ、あれはね~。」

と言って蝕魔の死骸に近づき、漁る。そして何かを取り出してこっちに持ってくる。

「これ。パトカーのランプ。」

「ああなるほど、パトカーのランプだったんですか。」

「なるほど・・・ってランプ!?え、ちょ!?」

豪坂が焦りながら車の上部に目を向ける。確かにパトカーのランプがあったところには何もない。

「ちょっと!やめてくださいよ警察の備品びひんを壊すのは!ああ~また署長にどやされる~。」

豪坂が頭を抱えながらその場に崩れ落ちる。

「大丈夫!きっと給料から差し引かれるだけだよ!」

八裂が無垢な笑顔で豪坂の肩に手を置き、励ます。

「ふざけんなあぁぁ~。」

豪坂が空に向かって叫ぶ。つくづく苦労人だな。そう雪歩は思うのであった。


第二話、完。

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