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ディストピア=ソードレイン  作者: 暦坂あっつん
第二章
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第二十二話

お久しぶりです。何年振りかの再開です。

雪歩は選手待機室にいた。

そしてそこにいる選手誰しもが雪歩のことを見ていた。

当然であろう。今回対人の部に雪歩以外のランク4出場者はいない。誰しも皆雪歩に奇怪な目を向けていた。初戦対戦相手の剛利がいないのが唯一の救いだろうか。

しかし、雪歩には救いなど関係なかった。不思議と緊張も無く自然体で待つことができた。


これがここまで悔いなくやってこれた、というやつなのだろうと納得して静かに目を瞑る。

「間宮さーん。試合が始まりますのでこちらに来てください」

「分かりました」

運営委員に呼ばれ、すぐに立ち上がる。

いよいよだ。雪歩は息を整え、待機室を後にした。


――――――――――――――――――――――――

地域立競技場 第一競技場

「さあ始まりました。【戦舞祭】対人の部、初日! 実況席から実況はこの私、川口高校放送部一年、里中有栖が勤めさせていただきます」

熱狂に包まれる競技場の中、スピーカーから年相応の声が流れる。


「今回一年ながら実況をやらせていただきます!この大会の実況をできるなんて光栄な限りです!」

明るくハキハキとしたとても聞き取りやすい声に会場もいいぞー。がんばれー。と囃し立てる。


「少々私情が入ってしまいました。気を取り直して解説の紹介です。戦闘面の解説は川口高校対魔部3年、部長の猫目一真さん、カタナの解説は第一鍛冶部3年、部長の犬飼健さんです。よろしくお願いします」

「よろしくー」「よろしくお願いします」

片方は陽気そうな女性の声、片方は堅物そうな男の声だ。

「さて、今回注目の選手は誰でしょうか、それぞれお伺いしてもよろしいでしょうか。まずは猫目さんから。」

「せやなー、やっぱ玄道選手やね。あれは強いでーホンマに」

語尾に力を込めて猫目はそう答える。

「ほうほう、やはり玄道選手ですか。今回一年ながらほぼ全ての情報サイトで上位入賞予想をされていましたね。では犬飼さんはどうでしょうか」


「第二|隼鷹≪じゅんよう≫高校の不才(ふさい)選手でしょうか。彼のカタナ捌きはやはり見物です」

「不才選手は前大会にて、対魔の部で4位という好成績を残しております。その力が対人の部で光るか!? 期待して待ちましょう」


「おや、審判がエリア内に現れました。いよいよAブロック第一試合開始のようです」

――――――――――――――――――――――――

審判がマイクを構える。

「Aブロック第一試合!東側、円藤剛利ー!」

東側から円藤 剛利が出てくる。出てきているように見えるが、実際はヴァーチャルである。


蝕魔大戦以降に発達した電子機器により、戦前から発展するかもと注視されていたVR技術は、BB細胞蝕魔との戦いをシミュレーションするため、さらに発展した。

視覚、聴覚のみならず、人間そのものの投影や触覚、はたまた嗅覚、味覚までもが再現できるようになり、データさえあれば現実と大差のないほどのVR空間とそこに存在するユーザを実現することが可能になった。

現実を忘れるために電子娯楽に熱中してしまう者が続出する社会問題も含んではいるものの、危険性のある蝕魔と戦闘のサポートになるこれらは現実のために大いに役立っている。

そんなVR技術で対魔、対人共にこの大会は成り立っている。現実で殺し合いをする大会など当然不可能だし、蝕魔を捕獲するのは法で厳しく規制されているからだ。


剛利は自信満々に前で進んでいく。観客は歓声を上げる。剛利の日頃の行いを知らない人々は彼の勇猛な雰囲気に好感を持っているのだ。何という事だろうか!彼の非道な態度は学校という閉鎖社会によって隠匿されているのだ!


「西側、間宮雪歩ー!」

雪歩は名を呼ばれ、雪歩も試合会場に進んでいく。しかし、先ほどまでの歓声は露と消え、小さなざわめきとクスクスとした嘲笑に変わる。ヒドイ!


しかし、そんな中突如として大きな歓声が聞こえる。

「うおおおおおおお!雪歩ぉおおお頑張れえええええ!」


雪歩は思わず顔をそちらにむける。

いったい誰が?


何を隠そう玄道家が弟子を引き連れ大弾幕を掲げて応援しているのだ!


雪歩は思わず顔がほころぶ。

応援に来てくださったんだ!ちょっと目立つから恥ずかしいけど。


応援を受け雪歩の歩みはほんのちょっぴり強くなるのだった。

――――――――――――――――――――――――――

同刻 特別来賓室


第一試合が行われようとしている中、会場を一望できる高さに一室がある。

そこには三十の椅子がおかれている。しかしながら座る者は一人だけだ。


影神は腕を組み会場を見下ろす。視線の先は当然雪歩だ。

「や~ん顔がこわーい」

声と共に影神の両頬が引き延ばされる。

「何の用だ、逆咲。貴様がここに来る理由はないだろう」

影神は顔を向けずその行いに答える。後ろにいるのは逆咲まくらだ。

逆咲は顔を影神の肩に乗せ、視線の先を見る。

「雪歩ちゃんの応援するなら下で応援すればいいのに~。三十士官皆下で観戦してるよ~。」

「いや、ここでいい。全体がよく見える。」

「全体がってぇ~...雪歩ちゃん応援しないのぉ~。」


「下らん。その必要はない。」

影神はそういうと、雪歩のいるAブロックの方を向く。

「まあ、見ておくといいだろう。すぐ決着がつく。」

――――――――――――――――――――――――

試合会場で剛利、雪歩両名が対面する。

「さあ、両者並びました!流石にこの試合、遠藤選手が勝利すると思われますが?解説のお二人はどう思われますか?」

里中が猫目と犬飼に問いかける。

「遠藤選手でしょう。彼は大剣型の大型カタナ、間宮選手は情報が少ないですが…見たところおそらく中型カタナなので相性の問題はありません。しかしながら、単純なカタナのランクが違いますよ。」

犬飼はそう断言する。

「おそらく実力も彼の方が上でしょう。」


「両者カタナを構えて。」

「カタナ起動(オープン)

両者が刀を抜く。二人の間には10メートルの間がある。

雪歩は弧虎八式を構える。剛利は片手で大剣型のカタナを持つ。剛利はニヤニヤと笑っている。

それを見た猫目はハッとする。

「…この試合、分らんかもしれんよ?」


審判が手を挙げ、そのまま振り下ろす!

「試合開始ぃいいいいいいい!」


戦闘開始。間宮雪歩VS遠藤剛利!


――――――――――――――――――


――――それは一瞬だった。

吹き飛んだ首。倒れ伏す巨体。それを見下ろす女。

その光景を理解するのに周囲は時間を割いていた。審判すらも身を見開き硬直している。

そして一番最初に口を開いたのは、実況の里中だった。

「け、決着ゥウウウウウウウ!!!!!勝者、間宮雪歩!間宮雪歩!大番狂わせです!!!!」


戦闘終了。勝者、間宮雪歩―――。


第二十二話、完。

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