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09決闘の挑戦状

 何事もなく一限、二限、三限、四限と過ぎ、僕らは今、三人で学食に来て昼食を食べていた。結局あれから、壱限、逃減、参間、予言との間の休み時間で決闘をした人なんて一人もいなかった。あ、予言という漢字だけ妙にピッタリだな。


 一体、いつから決闘が始まるのだろうか? 誰でもいいから、初決闘をしてしまえばみんなも自然と決闘をやっていけるのだが……初をしない限りはこの決闘は進まないだろう。


「それにしても、(りょう)()遅いね」


 いつもなら僕らより先に来ているはずなんだけど……今日はどこにもいない。何か忙しい用事でもできたのかな?


「椋夜なら、今日は生徒会が昼からあってこられないそうだぞ?」


「え? そうなの?」


 知らなかった。どうやら万桜は知っていたようだ。自慢げに腕を組んで僕を上から目線で見つめている気がするが……気のせいだろう。


「ちゆう聞いてなかったの? 私と万桜ちゃんと聞いたよ?」


 ま、万桜ちゃん……?


「万桜ちゃん可愛いよ!」


 僕は万桜に向かって親指を立てる。


「なんだかおかしくなってるがするんだが……」


 不機嫌そうな顔をする万桜。

 それよりも聞いていた? 全校集会が終わった後、僕らは一度も椋夜となんて会っていないんだぞ? なのに、どうやってそんなことを聞くことができるんだ?


 僕は腕を組んでしばし考える。

 ん~…………がぁ~ん~がぁ~……ん~…………


「馳優、それはイビキか? イビキならやめろ!」


 え? あ、どうやら今の ん~がぁ~ が聞こえていたらしい。なんてことだ、まさかいびきに聞こえただなんて……


「ご、ごめん」


 う、思わず謝ってしまったけど謝るってことはこれがいびきだったと思われてしまう! いや、思われてしまった。


「ちゆう……おっさん……」


 うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 頭を抱えて心の中で豪快に叫ぶ。


「えーと、いつ聞いたの?」


 結局考えても何一つ思い当たる点がなかったので、仕方なく諦めて訊くことにした。


「どこでかって?」


「それはね」


 順番ずつに口にする万桜と梨乃。交互に話している時点で、二人とも同時に聞いたのは間違いないだろう。


 さらに考えようとする僕に対して、万桜と梨乃は同時に自分の後頭部を指差して、口をそろえて言った。


「「テレパシー♪」」


 え……はぁ? なにぃぃぃをぉぉぉ――――!

 そんなの分かるはずもない。僕は両手を右側の方に上げ、丸眼鏡を掛けたよくご 飯の上にかけるトロトロとしたノリのCMに出てくる歳のいったおじいさんみたいな顔になる。


 おっとっと、なにおかしな顔になっているんだ。僕はまだ高校生だぞ、定年じゃないんだ。


 心を落ち着かせて、テレパシーについてのツッコミを待っているのだろう二人に、仕方なくツッコミを交わそうとしたその時、僕らの方へと、知らない三人組が歩いてくるのが見えた。


「?」


 ずっと一方を見ている僕が気になったのか、梨乃が後ろを振り返る。僕の隣にいる万桜も気づいたのだろう。なんだか少し嫌な顔をしている。


 三人の生徒、真ん中にいる先頭の生徒は、青がかったオールバックのヤンキー面。そして左側から少し顔を出している生徒は坊主頭の強そうな人であり、最後の右側にいる生徒は、目つきの悪そうな茶髪で肩までの長さのカールの髪をしている女生徒だった。


 その三人の生徒が運悪くか、僕らが囲んでいる四角い長方形の机の前まで来て、動きを止めた。


 げっ……なんで止まんの?

 よく見たらこの三人、この学校では有名なヤンキー(三年生)じゃないか!

 梨乃は彼らを見ないようにあさっての方向を向きはじめた。

 え、えぇぇ?

 怖いのか関わりたくないのか……?


「あの……何かご用なんですか?」


 一様先輩方なので、敬語は使う。先輩じゃなくてもヤンキーには敬語を使う。

 僕の質問に、先頭に立つオールバックの怖そうな生徒が僕を睨めつけ、机を思いっきり……叩いた。


 ひっ!


 ダメだ……なんだか怖いわ。僕じゃ何もできない。

 机を叩かれたことによって、楽しそうに昼食を食べている生徒たちが静かになり、みんなが僕らの方へと注目する。

 そんな中、オールバックの生徒は僕の質問に答えた。


「お前らが、あの生徒会長の親友ってやつなんだよな?」


 生徒会長……椋夜のことかな?


「そ、そうだけど……どうしたんですか?」


 ビビって声が震えてる……ダメだ。 ちゃんとしなくちゃ!


「そうか、お前らはステルス・ファクトの、決闘のことについてどこまで知ってんだ?」


 ドスの効いた声にまた驚き、僕だけではなくともに万桜も立ち上がる。


「いや、オレたちは別に、みんなと同じくらいしか知らない」


 先輩だろうとヤンキーだろうと強い口調の万桜。そんな万桜に、右側で腕を組んでいる女子生徒が、万桜の顔に近づいて微笑む。


「あら、随分可愛い子ね~、制服は着ないのかしら?」


「こ、これがオレの制服だ!」


 動揺する万桜。可愛いで反応したのかな?


「あのね、私はどうしても知りたいことがあるの」


「し、知りたいこと?」


 女生徒が万桜に近づこうとすると、坊主頭の生徒が彼女の肩を掴んで動きを止めた。


「ちょっと、何するの?」


「こいつらビビってんだろうが、これじゃあ俺たちのやりたいことなんて果たせれねぇぞ?」


 やりたいこと? やりたいことというのはよく分からないが、この三人の中で一番まともな生徒はきっと坊主頭の生徒だろう。ならば、あの生徒に話してみるべきだ。


「その……一体何をしたいんですか?」


 坊主頭の生徒に要件を訊くと、その生徒は女生徒の肩から手を離し、僕らの方を向いて言った。


「君たちに正式に、決闘を申込みたい」


 初の、決闘の申し込みだった。


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