08僕らはどんな願いを叶えたいのだろうか
全校集会が終わり、僕らは自分たちの教室に戻った。
「それにしても、本当に決闘をやるとはな」
今さらなにを……という感じに万桜が自分のステルス・ファクトを手に取って、ジーと見つめていた。
「改めて思うけど、ステルス・ファクトってなんなの?」
梨乃が僕の方を向いて聞いてくるもんだから、僕は顔を斜めに動かす。
どうして僕に聞くのだろうか?
「そうだな、馳優教えてくれ」
だからどうして僕に聞くのかな?
聞くんだったら椋夜のほうが絶対にいいと思うんだけど……
それにしても、まだ誰も決闘をする雰囲気が無いな……みんなも様子を見ているのだろうか? 梨乃と万桜に「わかんないから」とだけ伝えて、自分の席に腰をかけると、梨乃もそれに合わせて自分の席に座った。万桜は僕らからは少し離れた席なので、今は僕と梨乃の間の席に立っている。
「そういえば、椋夜は願いが三つまで叶えられることができるとかなんとか言ってなかったか?」
「言ってたね」
「なぜ、三つなんだ?」
またまた僕に聞かれても困るな……どうして梨乃と万桜は僕のわからない時にだけ僕に聞いてくるんだろうか? もっとこう、算数の勉強とかなら喜んで答えてあげるのにな~……。
でも、なぜ三つなんだろうか? 普通は一つとかそこら辺じゃないのかな?
お伝えミス? そんなはずはない。
でも、決闘というのは最高三人でペアを組めると言っていた。それも叶えられる願いの数に合わせているんだろう。だから、一体一じゃなかったのかもしれない。
それと、僕の近くにいる二人は願うとしたら何を願うんだろうか?
興味を持ったので、聞いてみたくなった。
「ねぇ、万桜と梨乃は、叶えたいこととかある?」
ある? というかない人などいるのだろうか?
「唐突だな」
万桜が手の甲で顎を押さえながら考え出した。
「叶えたいものね~……」
同時に梨乃も考え込む。
て、そこまで悩むことだろうか? もっと簡単に考えればいいものを……
しばらく二人とも考え、数分経って二人同時に何かを考えついたのか、口を揃えて言い出した。
「「わからない!」」
なんでよ!
ビシッ!
思わず頭の中で、コントのように壁を思い切り叩いてしまい、壁が無残にも崩れ去った。危ない危ない。リアルでこんなことをしていたら確実に骨が折れるところだった。
「ちょっとまって、わからないことはないでしょう?」
考えるのをやめる二人に、再度考えさせようとしたら
「じゃぁ、ちゆうはなにを願いたいと思ってるの?」
突然梨乃に聞き返され、僕も二人のように考え込む。
叶えたいことかぁ~……僕は何がいいのかな? 叶えたいことは沢山あるけど、全てくだらないものでピンとくるものが見当たらない。
「えーと……僕も分かんないや」
「馳優、お前もじゃないか」
あはは……
なんだか気まずくて笑うことしかできなかった。
僕らって、一体何を、どんなことを願いたいのだろうか?