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07新行事、決闘

 能力を使ったバトル、他の生徒たちもざわめき始める。


 ステルス・ファクトの能力で闘い、勝利の高みへと目指す。あれこれ二年間このステルス・ファクトを学校で取り入れているからこそ、生徒たちの感情は嫌だというより、楽しみという感情に近くなっている気がした。


「こんな感じでいたって簡単なルールだ。体力ゲージを減らすには、相手に自分の攻撃をぶつける必要がある。そういうのを怖がっている奴もいると思うが問題はない。ステルス・ファクトを付けている限りは攻撃をたくさん当てようとも、その痛みは一瞬で無くなるのだから」


 スクリーンに映り出されていた画面が消え、スクリーンが上部へと戻っていった。痛みは一瞬という言葉が、この決闘の支えとなっているのだろうか、ほとんどの生徒の盛り上がる声が体育館内に響き渡った。


「決闘の勝敗が決まった際の説明にはいるが、勝った者には能力LV(レベル)という、今は全ての生徒が『LV(レベル)1』なのだが、それがLV1分上がることとなるんだ」


 スクリーンが上へ上がっていったのを見て、椋夜は元のステージの中心まで戻ってきていた。


 LV制まであるのか。これは本格的にRPGだな。

 僕はリアルでゲームがやれるのかと思って、なんだか心の中でワクワクしていた。


「ちなみに、三対三の場合、勝ったチーム全員に同じLVが与えられるのではない。最後にトドメを刺した者のLVを上げることになる」


 チーム組みで、下手をして嫌な人と組んだら大変なことになったりするのか。チームを決める際はしっかりと考えて決めるべきなんだな。


 つまり、勝った場合『LV1』から『LV2』に上がるということだろう。もちろん、LVが上がるってことは、自分より弱いLVより、力が強くなるということだろう。


「だが、もちろんのこと、負けたもののLVは1下がることとなっている。『LV1』の者はこれ以上下がないからそのままなのだが、基本の力は失われてしまう」


 基本の力とは、決闘の際ではなく今この時点での日常に使っているステルス・ファクトの能力の力のことだろう。ステルス・ファクトは集中して、自分の密かに隠れている能力を引き出す力を持っているので、能力値が減るということは=さらに集中力を高めないといけない。ということになる。


 さっき椋夜が言ったことを振り返ってみると『LV2』と『LV2』が決闘をした場合、勝った方はLVが上がって『LV3』となり、負けた方はLVが下がって『LV1』になるというわけか。


 なるほどなるほど。


「しかも、この決闘のルールで闘いたいもの同士のLVに3以上の差がついてしまうと、その者同士との決闘ができないことになっている。『LV1』の者は『LV4』とは闘えるが、『LV5』と決闘することはできない」


 制限……?


 LV制……同時にそれは決闘をやらなかったり負けてばかりいると、いつの間にか闘える相手がいなくなってしまうということ……それはグズグズしていたらみんなに置いていかれそうだ。でも、僕はひとつ疑問に思った。


 LV制というのはいいと思うが、それをすることで僕らにメリットとなることがない。それがなければ本当に決闘をやりたいという人だけしかやらないはずだ。

それを既に思っていたのか、椋夜は信じられないような、次の言葉を発した。


「そして、この決闘で全ての者に『LV3』以上の差をつけた一~三名の者だけに、一度だけ使える幻の〝なんでも一つ願が叶う〟という能力を使えることが可能になる!」


 なんでも叶う…………能力……? それは願いをひとつ叶えてやろう的なアレなのだろうか? 絶対に叶えられないこと、不老不死や死んだ人を生き返らせるなどのことを叶えることもできるのか……?


 僕は体育館の天井を見上げる。


「それはどんなことでもいい。死者を蘇らせることだって、タイムマシンが欲しいという願いだって叶えられる」


 衝撃的なことを聞き、また体育館に騒音のような声が鳴り響く。

本当になんでも叶うというのか……それは凄くて貴重なものだ。しかも、それは一人じゃなくて、三人まで願うことが可能だなんて……


 ステルス・ファクトは入学以来ずっと持っているのだが、やはり謎が多い物みたいだ。


「さて、決闘についての基本のことは教えた。後に分からないことがあったら個別に聞いてくれ、できることならなんでも答えてやる」


 口元からマイクを離して電源を切る。説明が終わったのだろう椋夜は、そのままステージを後にした。生徒たちのざわめき声を聞きながら、僕は気になっていたステルス・ファクトの、所々空いている穴を覗き込む。暗くて正直何も見えない。


 でも、こんな手のひらサイズの物体のどこにそんな能力を発揮する力があるのだろうか? どれだけ中を覗いてみても、僕にそれがわかることはなかった。科学というものは凄いというほか、不思議だなという感想にまで至ってしまう。


「ちゆう、なにしてるの?」


 眠そうな目を擦っている梨乃が、呑気な顔で自分のステルス・ファクトの小さな穴の中を覗き込んでいる僕を見ていた。


「あ、いや、なんでもないよ……」


 なんだか変な顔をしている時に見られた気がして恥ずかしい。


「なんだ、顔が赤くなっているぞ、熱か?」


 違う! 本当は照れより熱の方が今はいいかもしれないけど、これは熱ではない。ただの照れっっっだ!


「ちゆうが熱ね~……うつさないでよね?」


 誰がうつすか! そんな真似はしないよ。

 もう梨乃と万桜の中では僕が熱ということになってしまったようだ。これはいけない。正直に言わないと。


「違うからね、これは熱じゃなくて〝照れ〟だよ!」


「「?」」


 言ったはいいが、あれ? なんでそんなことを言ったんだ?


「なにに照れたの?」


 梨乃が顔を突き出して、僕に訊いてくる。


「あ、いや……」


 何に照れてたんだっけ? なんだかくだらないものだった気がする……


 しばらく黙っていると、流石に飽きたのか「まぁ、なんでもいいけど」と言ってそのまま持ってきたらしい小説を手に、梨乃が読み始めた。


 梨乃はなんの小説を読んでいるのか……暇なときはいつもどこででも読んでいる気がする。というかここにも持ってくるとは……。


 静かになった梨乃を見たあと、僕はステルス・ファクトをズボンのポケットに入れ、体育座りでこのうるさい体育館でボーとした。


 ボ――――――……


 が、しばらくしてから、ステージの横にいる椋夜がマイクを手に取って、また声を上げた。


「おっと、解散の前に最後に注意点を言わせてもらおう」


 椋夜の声を聞いて、たちまちみんなのざわめき声が静かになる。

 こんなに早く静かになるなんて……もしここで僕が静かにしてとか言っても、誰も静かになってはくれないと思う。


「注意点とは、今から挙げる3つの項目だ!


1 ステルス・ファクトの能力。あるいは決闘は、校内から寮内までの範囲でしか使ってはいけない。否、その範囲でしかできないことになっている。学園内でしかできないので、そこらへんは注意しておくように。


2 授業中に暴れたり、人の迷惑になるようなことは禁ずる。


3 ステルス・ファクト、後に決闘の際などにイジメは禁ずられる。もしステルス・ファクトなどでのイジメが勃発した場合、そのイジメをした奴は、即刻退学処分とさせてもらう」


 これはステルス・ファクトを使うに当たってのルール。入学してこのステルス・ファクトを手に取った時も、このようなことを言われた記憶がある。そのルールには、決闘も混じえたようだ。


「以上だ。まだまだ疑問な点などはあると思うが、まずは気軽に決闘を楽しんでみてくれ! 使っていくうちに、しっかりとしたルールが身についていくはずだ」


 全て言い終わり、椋夜はマイクを元の位置へと戻し、自分がいた(僕の視覚からは見えない)場所へと戻っていった。


 決闘――それは今後の僕らの日常を、大きく変えるものだった。


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