24決闘~LVの差後編~
…………。
意外に万桜は近くにいた。教室を出てすぐそこの廊下で二人とも闘っていたんだ。
さっきまで、梨乃と能見さんが闘っていた場所のすぐ近くの気がしないでもないんだけど……そこは別にどうでもいいか。
「万桜、助太刀に来たよ!」
「私も!」
万桜の能力は桜。長瀬さんはというと、布は布であるが、布の枚数が一枚から二枚に増えていた。
「そうか……助かる」
「あら、もしかしてあのふたりはやられたのかしら?」
布で万桜の押し寄せる桜を弾きながら不敵に笑う長瀬さん。
「あのふたり? 誰のこと?」
「いやいや梨乃、もう忘れちゃったわけ?」
「ううん、覚えてるよ? 能見さんと、えーと……M男君だよね?」
能見さんはともかく、はずれてはいないと思うけど、彼はM男じゃなくて大久保君だ。なんだよ、M男君って……電車でM男号っていうのがあっても誰も変とは感じないネーミングだな。
「まぁ、やるじゃない。LVって案外関係ないのかもね~」
微笑みながら、目を細めて僕たちを見つめる。
なんだこの人? 余裕って感じな気がするけど……。
片方の布は万桜へ、もう片方を僕らへと伸ばす。
にゅるにゅる蛇のように動く布に向かって、梨乃は両手をクロスにして
「(激流!)」
大久保君の能力を使った。
バシャァァァァ――――
布に水があたり、布の動きがそこで止まる。
「あら、大久保ちゃんと同じ能力ね」
大久保ちゃんって……あの人、この人にどんな扱いされているんだろう? やっぱり名前は大久保よりM男でいいかもしれない。
「私はみんなと違って特別なの」
布が僕たちに襲ってこないよう、梨乃は布を激流で抑えている。
よし、隙ができた。
僕は廊下を蹴り、少し開いている背中へと素早く移動する。
「?」
僕が近づいてきたことに頭を傾けるが、それもつかの間。僕の拳が背中を直撃した途端、目を大きく開けて痛みを堪えた。
「……い、痛いわね……」
万桜と梨乃に向けていた布を自分の手元に戻し、僕へと襲いかける。
「お、おっと」
ギリギリで交わし、元の位置まで戻る僕。
「やるじゃないあなたたち、どうぞ? 三人同時にかかってきなさい」
そんなことを言うので仕方がない。僕ら三人は顔を見合わせた後、同時に襲いかかる。
万桜の桜を飛ばす攻撃。梨乃の激流。そして僕の拳。それぞれが交互に繰り出される。
痛み、苦しみ、彼女に隙ができるたび、僕らのいずれかの攻撃がいろいろな箇所に命中した。
「私が、こんなところで負けるわけにはいかない、のよ!」
攻撃の隙を見つけて僕らに布を巻き付けようとするが、うまく巻きつけられない。それどころか、攻撃より防御を重点的にしている。
「私は……私たちは椋夜君に来て欲しいだけ……クラスで省いているような感じがして嫌なの!」
必死に語る長瀬さん。椋夜のことをそこまで思っていたとは……あの人は幸せだな。
「(千本桜!)」
HPが残り少ない状態になった時、万桜が長瀬さんに向けてたくさん舞っている桜を向かわせる。
「だから……この決闘を――」
最後にそう言い残した後、HPが無くなり、長瀬さんは廊下に倒れ込んだ。
この決闘を――椋夜に来て欲しくてこの決闘で賭けをと考えたんだろう。
どこまで椋夜は僕らに迷惑をかけるんだ……
これはもう、後で文句を言わせてもらわないといけないな。
攻撃をやめ、僕たちは荒い息を吐きながら廊下に座り込む。
「痛くしてごめんなさい。今度椋夜に言っておくよ」
倒れこんでいる長瀬さんにそう言って、僕はステルス・ファクトを二の腕からはずす。
途端にリング状のステルス・ファクトはいつもの丸い形に戻った。
決闘集結。
☆WIN☆
神北馳優 LV2→LV3
神田万桜 LV2→LV3
相沢梨乃 LV2→LV3
「やった、LVが上がったぞ!」
激流の水や欠けた壁などが元に戻った後、僕は立ち上がり早速携帯でランキングを確認してみる。あぁ、100位とはおさらばか……さようなら100位……いい思い出とかなかったけど、楽しかったよ。
最後に100位だった頃の自分にお別れを言ってから、僕はランキングの画面をスライドさせて自分の順位を表示する。
〈100位 神北馳優 LV3〉
お、おかえり100位!
って、なんでや!
あまりの勢いに携帯電話を投げそうになる。
「せっかく勝ったのに100位って……どういうこと?」
「多分オレたちと同じ速さで皆もLVを上げていっているんじゃないか?」
そんな、信じられない……
100位の喜びとかも無く、僕は唖然とする。
「あ、順位上がったよ」
梨乃が自分の携帯を見てそう口走る。
なんだって! 梨乃も僕と同じLV3なのに?
梨乃の携帯を覗き込もうとすると
「か、勝手に見ないで!」
すぐさま携帯電話を自分の胸元に持っていき、赤面しながら僕から避ける。
「あ、ゴメン……」
ついつい我を失いかけてたよ……僕は自分の頬を両手で叩く。
見せてもらえないので「何位だった?」と訊くと
「82位!」
な、なんと! そこまで順位が上がっているのか!
「どうやら意外とLV3が多いようだな」
万桜が頷きながら言う。
なるほどなるほど。僕たちはマイペースに進んでいるというわけか。これじゃあ願いとか叶える暇とかなさそうだな。
「私たちって低LVで喜んでるんだよね? RPGでいえばざこ敵を倒して自慢げになってるのと同じなのに」
確かに……
その言葉を聞いて僕たちのテンションは下がった。




