21デメリットとデメリット
「け、決闘だって?」
いきなりのことに、座ったばかりの僕は立ち上がり、万桜の前に出て声を上げる。
「そうよ? あなたたちは確か椋夜君とお友達だったわよね?」
「う、うん」
椋夜君……今まで椋夜か、椋夜先輩という風にしか聞いてなかったから、なんだかその呼び方が新鮮だ。
「あの人、二学年ではとっても人気者のくせに、いっつも昼食の時とか放課後の時とかどこかに行ってるのよね~……」
確かに、いつも僕たちと居るか、生徒会室にいるかだ。
「人気者……ぼくもなりたい……」
後ろで悲しい発言をしているメガネを掛けた男子生徒。この人は何を言っているんだ?
僕だってなりたいよ!
心の中でそう叫ぶ僕。
「でね? ちょっとあなたたちに頼みたいことがあるのよ」
「頼みたいこと?」
後ろであやとりをし始めた梨乃と万桜は置いておいて、僕が聞き返す。
「実は、そんな彼にあなたたちで『少しでもいいから、教室でお昼を食べなさい!』って感じのこと言ってきてくれないかしら?」
少しでもいいから、教室でお昼を食べなさい?
これを椋夜に言えと?
「お断りします」
「…………即答」
後ろの丸いメガネを掛けた、大人しそうな女子生徒が落ち込んだように小さな声で言う。
この人も何を言っているんだ、椋夜がお昼を教室で食べることになったら、僕たちと一緒には食べないということになるじゃないか。
そんなのお断りだ。
「そう言うと思ったわ……だから、それは決闘で決めないかしらって思ったのよ」
決闘で決める? それはいったい……
僕が首を傾けると、万桜が前に出て僕に説明し始めた。
「つまり、決闘で先輩たちが勝ったら、オレたちに椋夜に言ってほしいことを言ってもらいたいということだ」
なるほどなるほど。あやとりをしていて聞いてないと思ったが、僕より断然理解しているじゃないか。
「だが、それではオレらにはメリットというものが見当たらない。これでは条件が満たされていないんだが?」
先輩に強い口調で言う万桜。
そうか、条件付きの対決か。やっと分かった。
「そうね、じゃああなたたちが勝ったら……う~ん……この件からは引いてあげる」
「ん? 随分と余裕だな?」
なんだ、この万桜の挑発的な言い方は……元から男っぽい口調だけど、女の子がこんな口調だと、なんだかあまりよろしくない気が……あ、万桜は男か!
「そんなことないわよ。ただ椋夜君が教室で食事を取って欲しいために頑張る人たちだから」
にっこり笑う先輩。という事は、後ろで一言しかまだ喋っていない男子生徒も椋夜に来て欲しいと思っているのか?
まったく、いろんな意味でも人気者は辛いなぁ~……
「どうする?」
後ろを向いて僕に訊く万桜。
どうするって、もちろん――
「やるよ! ついでにLVもあげたいしね?」
まったく……この前もそうだけど、どうして僕らは椋夜関係から決闘が始まるんだ……
「あら、いいの? そこの可愛い子は?」
梨乃の方を向く先輩。
「ん、私?」
「えぇ」
一人であやとりをしていた梨乃は、あやとりの糸を首に掛けてネックレスのようにしながら(可愛い、なんか似合ってる!)
「私に勝てるもんなら、どうぞかかってきなさい?」
腕を組んで偉そうに言っていた。
「そう、OKのようね」
いやいや……なに相手を誘ってんのさ……。
僕ら三人は、彼女達から少し距離をとりながら、ポケットに入っているステルス・ファクトを取り出す。
「じゃあ、始めよっか」
ステルス・ファクトを左の二の腕へと一斉に近づける。すると、全員のステルス・ファクトが淡い光を出して、二の腕にリング上に形を変えて張り付いた。
「ゲーム」
手を挙げて、先頭の先輩が言う。
「スタート!」
その掛け声とともに、教室に新たにスコアが飛び出す。他のスコアが邪魔であまり見えないが、相手の名前ならしっかりと見える。
どうやら、中心にいた女子生徒の名前は長瀬さん。もうひとりの眼鏡を掛けた女子性徒の名前が能見さん。最後に男子生徒の名前が大久保君のようだ。




