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13初決闘~後編~

「や、やめろ!」


 僕の虚しい叫び。


「?」


 万桜は、自分に後藤君が向かってきているのに気づいたのか、壁で身を支えながら立ち上がる。


「じゃあ、まずは一人目いただきますかぁ!」


 僕がへし折ったバットを両手で持つ。

 あのバット、僕が投げつけたのに……わざわざ拾ってきたのか。

 両手で持ったバットを脇を広くして上げ、右足を地面につけると同時に強く踏み込んだ。


「これで、終わりだぁ!」


 人を殺す時のような笑顔の表情。だが、万桜はそれを避けることなく目を閉じ始めた。


「?」


 すると突然、両手を広げると同時に、万桜の大きく開いた袖口から、無数の桜の花が飛び散り、万桜自信を覆う。


「な、なんだ!」


 何事かと、動きを緩める後藤君。後藤君の足音が静まったのを感じとり、万桜は大きく目を開け、大きな声で言う。


「(千本(せんぼん)(ざくら)!)」


 万桜の身の回りを覆っていた無数の桜が、先の方を後藤君へと向け一直線に飛んでいく。


「あ、あ……あぁぁぁぁぁぁ!」


 無数の桜は一つずつ後藤君を切り裂き、スコアに映るHPを無残に減らしていく。


「終わるのは……お前のほうだ!」


 覆っていた桜が全て光の粒子となって消えると同時に、後藤君のHPが赤を越え空っぽになった。


「な、なん…………だと…………」


 HPの残りがなくなった後藤君は、気を失うように背中から倒れていった。

 か、格好良い……。万桜が可愛格好良いよ!


「後藤っ!」


 それを見ていた太田君が呆気にとられたような声を上げる。

 隙ができた。今のうちだ!

 僕は身を翻し、押しつぶされていた足をハンマーから無理やり引っこ抜いた。


「!?」


 今度はしまったというような表情の太田君。一人を倒したことで僕らが有利になった。


 それにしても危なかった。スコアを見てみると、僕のHPも万桜と同じくらい減っているのだ。


「ナイスだよ、万桜!」


「あぁ、無事成功して良かったよ」


 万桜の方まで駆けつけ、僕ら二人でハイタッチをする。


「よし、これで残りは――」


「キャ――――――――――――――っ!」


 ???


 突然、僕らのいる長い廊下の突き当たりの方から女の人の声がして、僕ら三人は驚きながら振り向く。


 すると――


「誰か、この蛇なんとかしてちょうだい!」


 慌てて大きな蛇から逃げる七星さんの姿が目に入った。


「大きな蛇だな」


「そうだね、廊下の窓ガラスを割りまくってるけど大丈夫かな?」


 万桜と僕は冷静にそれを見つめる。なぜ冷静でいられるか、それはあの蛇は梨乃が能力で出した蛇だからだ。出したというより召喚と言うべきなのかな?


 僕らの能力は、僕がクマのように力が強く、蜂のように素早い力を持つ身体能力で、万桜が桜を操る武器能力。そして、梨乃が人の怖がるものを取り出す、意味不明な能力を持っているのだ。


 そうなると、七星さんの嫌いなものは蛇となる。

 蛇が嫌いとは、まだまだ幼いな~。

 と、蛇を触ったことがない僕が心の中で突っ込む。


「なによあなた……自分の力で戦いなさい!」


 蛇の後ろ、いや、蛇の上に乗っている梨乃に言う七星さん。

梨乃……あんなところにいたのか……。

見ると、梨乃は楽しそうに蛇にまたがって手を挙げていた。


「え~……そんなことできない。これ私の能力なんだよ? 私が蛇ちゃん使わなかったらただの暴力になっちゃうよぉ……」


 腕を組んで、そのまま七星さんを見下ろした。


「この……くさ――」


 何かを言おうとしたところで、足が疲れたのか蛇に追いつかれる七星さん。そのまま口の――まぁ、あまり見たくないので目を瞑る。まったく、こういうところを見せるのはやめてほしいな。


 蛇は、七星さんの体力ゲージがなくなるのを見て、そっと廊下に舌を使って寝転がし、そのまま光の粒子となって消えた。


「七星までもやられるとは……」


 太田君が数歩後ずさったあと、背中を向けてその場を去ろうとするものだから、僕は追いかけた。


「待てっ、逃がさないよ!」


「捕まってたまるかよ!」


 一体三。これでは勝ち目がないと思ったのだろう。でも、僕は逃がさない。いや、逃がすわけには行かないんだ!


「(スピアースプラッシュ!)」


 地面に足を思いきり付け、勢いに任せて太田君に向かって一直線に飛びかかる。

そして、太田君の背中へと突進をかました。


「うごっ……」


 クリティカルヒット!

 彼は背中に衝撃を受け、刹那のごとく数十メートル離れている壁にヒビを作って激突した。


 みるみるうちに彼のHPが空っぽになる。


「ふぅ……」


 勢いを止めゆっくりと足を地面に付ける僕。

額に出た汗を拭い、万桜と梨乃がいるところに向かう。


「なんとか勝ったな」


「そうだね」


「そんな強くなかったね。もっと強いと思ったのにぃ~……」


 腑に落ちないような表情をする梨乃。なんだかんだいって梨乃も決闘を楽しんでいたみたいだ。


 スコアを見ると、負けた相手チームがスコアから消え、僕ら三人の名前が大きく書かれ、僕ら全員のLVが



☆WIN☆


神北馳優 LV1→LV2


神田万桜 LV1→LV2


相沢梨乃 LV1→LV2



となった。



『『『『『『『おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!』』』』』』』



 急に、密かにこの決闘を見ていた生徒たちが、大きな声を上げて拍手をしだした。


 なるほど、決闘というものはなにかしら盛り上がるものだね。

 歓声を受け、僕ら三人は一斉にハイタッチする。とりあえず、初戦を勝つことができて良かったよ。


 こんな初戦を、当事者の椋夜は見ていたんだろうか?

 歓声に溢れる中、ふとそう思ってしまった。


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