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11初決闘~前編~

「あぁ? なんだ、その若けた顔はぁ?」


 目を細めて僕らを凝視する後藤君。

 彼の右手に握られていたものは――



 《 金属バット 》



 さらに太田君が手に持っているものが……



 《 鋼鉄のハンマー 》



 最後に七星さんが両手で抱えているものが……



 《 鉄パイプ 》



「…………」


 全部能力で出てきたものなのだが、なんだこれ? 殺人道具揃ってますね!

 僕ら三人は一斉に呆気にとられてしまった。


「大丈夫よ? 殴っても痛くもないし死なないんだから」


 悪魔のような表情がとても怖いよ七星さん。


「まぁ、そうなんだけど……」


 やるしかないんだよね?

 どうしてこうなったのかはいまいちわからないけど、やらなきゃいけないんだよね?


「「「うわぁ~~~~~~~っ!」」」


 がむしゃらに、闘いに慣れていない僕らはヤンキー三人組に突進していく。


「おいおい、いじめを受けてるがきんちょみてぇな走りだな?」


 後藤君、太田君、七星さんが自分の武器をそれぞれ頭の上に掲げ、近寄ってくる僕らに向かって振り下ろした。


「いだっ!」


 後藤君の金属バットが脳天にあたり床に倒れ込む僕。


「のわっ!」


 太田君の振り下ろした銅鉄ハンマーが万桜の左腕にあたり学食を出た廊下まで飛ばされていく。


「え? えぇ?」


 そんな僕らを見て、梨乃は七星さんには突進せず――


「逃げるもんね~」


 背を向けて万桜が飛んでいった廊下へと走り去っていった。

 あ、あはは……梨乃が裏切った!

 とりあえず、僕も廊下に行かないと……

 痛みがすっかり消えた僕は、後藤君が梨乃の行動を見ている隙にすぐさま逃げ出した。


「あ、こらぁ! コアラァ~!」


 誰がコアラじゃ!

 学食にいる生徒の中を駆けながら、無事に廊下に到着する。


「梨乃、万桜……いない?」


 …………


 返事がない。多分どこかに逃げたんだろう。

 決闘では試合放棄をすることはできない。一度闘えばどちらかが勝つまでやらなきゃいけないんだ。


「おーいおいおい、逃げるとはまさかの予想外だな」


 すぐ傍で後藤君の声が聞こえたので、僕は近くにある掃除ロッカーの中に身を潜めた。


 ああ、小学生の時はよくこの中に入って隠れてたっけな。

 いや、今はそんなことどうでもいい。僕はロッカーの微かにある穴から廊下に出てきた後藤君たちを眺める。


「しっかし、逃げ足の速い奴らだなぁ?」


「それが勝利の鍵ということに繋がるのでは?」


 太田君、僕たちの行動はそんな事を意味しないよ。

 ただ怖くて逃げただけだよ……僕の場合。


「え~、それじゃあ勝てないじゃない……私はどうしても願いを叶えたいのよ!」


 ふたりの背中を軽く叩く七星さん。どれだけ願いを叶えたいのか……一体何の願いを叶えたいのか僕には分からない。


 ロッカーには無数のほうきが置かれていて、一歩でも動けばほうきが倒れてしまいそうだ。


 ここで音を立ててしまったら確実に見つかる。見つかったら三人で僕を殴るだろう。あのみためが犯罪者の道具にしか見えない武器で……


「仕方ない、こうなったら手分けして探し出すとしよう。見つけ次第倒すように」


「おぉ~、お前頭いいなぁ~」


 後藤君が太田君の頭を叩いて豪快に笑っている。


「それじゃあ、いきましょう」


 七星さんと太田君がそれぞれ両端の長い廊下を走っていく。


 良かった。でもまだ油断はできない。早く、一刻も早くそこでのんびりしている後藤君が退いてくれないと!


 僕はロッカーの隙間から後藤君の立ち止まっている姿をじっと見ている。


 …………


 探すのがめんどいとか?

 人に探させに行っておいて自分は何してるんだよ……

 僕は呆れながら目を閉じる。

 キィ――――……


「ん?」


 不意に僕の目の前に明かりが広がり始めたので目を細めながら前を見ると――


「…………」


「…………」


 ガクガクガクガク……

 目の前には、渋い顔をしてじっと僕の方を見ている後藤君の姿が――


「…………え?」


「…………」


「……おはようございます」


「あぁ、おやすみ」


 なんだこのコントみたいの……しかも会話が成り立っていない。

 というか――


「ははは、一人目みぃーけた!」


 後藤君は急に笑い出し、僕の胸ぐらを掴んでロッカーから引きずりだし、そのまま廊下へと投げ飛ばす。


「うわぁ!」


 一瞬宙を飛んだと思ったら


「おらよぉ!」


「!」


 頭だけはと思って押さえるものの、後藤君の金属バットは僕の腹部に当たり、勢いよく地面を転がり壁に背中から激突する。


 痛い。当たり所をミスってしまった!

 でも大丈夫。ステルス・ファクトを付けている限り、痛みは愚か、傷一つつかないんだから。


 僕は痛みの収まった腰を摩りながら、立ち上がる。

 今ので、HPが結構減ったんじゃないか?

 僕は、人知れず廊下までゆっくりやってきた大きな、僕らの名前とHPが書かれてある画面スコアを目にする。


 僕のHPが半分ほど減っていた。

 やばい……食らいすぎだよ……。

 スコアには、万桜と梨乃のHPも書いてあり、二人とも僕と同じくらいのHPしか残っていなかった。


 って、なんで? もう見つかったわけ? 早くない?


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