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07.

前話まとめ。

マコト、ゴブリンに襲われボロつきつつもアリアデュールへ。

 アリアデュールはアル・フレイ商国の首都であり、大陸の東西を結ぶ販路の中心地である。

 北東に広大で肥沃な平野を持ち、南を海に面したこの都市は、大陸中央であるが故に多くの国から狙われ、有数の大国となった今も防備の硬い堅牢な壁が都市を幾重にも囲み、多数の武装商船を抱えている。また、その広大な平野は魔物も多く、その脅威にさらされてきたこの国には、冒険者ギルド・傭兵ギルド・商業ギルドの3つがこの都市に本部を構えていた。多くの人種が交わり、商業と共に発展してきた性質から王や貴族の権威からは外れた自由闊達な雰囲気が街を大いに賑わせてきている。


 3重の外壁によって分けられた区画のうち、最も外にあるのが自由と責任の街と呼ばれる場所である。

 マコトが入ってきた北門の近くである北部区域は冒険者や傭兵が暮らし、また、それを支える店が立ち並ぶ。南部区域は船乗りと商人、そして海兵たちが暮らす街となっている。冒険者や傭兵の多い北部区画は昼夜を問わず酒場の喧騒は絶えず、武器を多く並べる鍛冶屋や、魔物の肉を扱い様々な獣を捌く肉屋などが軒を連ね、独特の気風に溢れていた。


 マコトの探す冒険者や狩人も泊まれる宿もあるが、一般的な低級の冒険者たちは宿に泊まるには金がきつく、そういった者を支えるために長屋のような簡素で安価な住処が存在する。そこも職差が理由で冒険者・狩人・傭兵で住処を区分けされていて、揉め事を減らすようになっていた。これは、冒険者や狩人は魔物を獲物とするために持ち帰った素材の処理で周囲に臭いをまき散らすことや、冒険者たちは個々で動く者が多いが、傭兵は集団で動く者が多いといった性質の差も大きな理由となっている。

 マコトは北の大通りを南下していたが、石造りの街並みと通りに並ぶ様々な出店、そして多くの人波で混沌とした様に圧倒されていた。端から見れば浮ついたその足取りは分かりやすいものだったが、この都市ではそういった者は多くそう目立つことはない。出店から漂う色々な食べ物の匂いに惹かれるものの


(いい匂いだが、何の肉なんだろうな)


と、マコトは最初に惹かれて近寄った店が青みがかった肉を焼いていたのを見てから敬遠していた。唯一立ち止り眺めていたのは、狩人のための品を並べた出店に立てかけてあった槍だったが、マコトから見ると少々高い気がして買う気が起きない。


(仕事も決まらないのに散財はやばい)


堅実に仕事や住処のあてが少しでもついてからと、歩を進めていた。これから色々な職があるのだろうし何に就くかと、マコトも道中考えてはいて、


(商人・・・はアテも金もないし、物を作るのも不器用ではな。傭兵は店の護衛などもあるようだし悪くないが、人相手に暴力はなぁ・・・警備員より遥かに粗っぽいだろうし。だが、冒険者もあのゴブリン相手だったときを考えると)


と、悩んではいた。都市に来る前のゴブリンの襲撃がマコトを少し臆病にさせているのである。

 そうして歩きながら悩んではいたのだが、悩んでいても他に職に就ける可能性がある訳でも無いと頭を切り替え、獣相手に狩人でもいいよなと考えをまとめた。


そうして冒険者ギルドへと向かうマコトだが、街の地理など全く知らず、ギルドが何処にあるのかも目印となるような看板があるのかも知らない。

 だが、マコトはそこまでこのことを気には止めず


(これだけ人がいるんだから、大通りでよく人が入る建物を探せばいいだろう)


そう気楽に考えていた。その考えは間違っていないが、本来であれば冒険者ギルドか傭兵ギルドのどちらなのかにマコトは大いに迷ったことだろう。だが、現在大陸北東部で戦争が起きていたために主だった傭兵たちはそちらへと出向いており、マコトはうまい具合に冒険者ギルドを見つけることが出来た。


 冒険者ギルドは、大通りが交差し少し大きな広場となっている場所の角地に立つ4階建ての大きな石造りの建物で、北区にあるここは本部ではなくアリアデュール北区支部である。ギルドの重鎮や上級の者たちが利用する本部はさらに壁を抜け内部の区域に存在するが、最も冒険者の利用が多いのはこちらである。

 マコトは、冒険者ギルドの横手に備えられた荷駄や馬車の停留所を抜けると、開かれた扉より中に入る。中は広々としたロビーになっていて、カウンターに座る職員達や、長椅子で待つ者、衝立のあるテーブルで向きあい話し合う者など多くの人がいた。そういった者たちを横目に見つつ、マコトはカウンターに向かい話しかけ、2、3のやりとりで新規登録ということを伝えると、


「新規登録はあちらの受付です」


と案内されたカウンターに座るのは、マコトより一回りは大きい蛇頭の女性である。彼女は新規受け付けを担当していて、このギルド支部でも古参の部類にはいる。名をイラ・ヴェッラといい、冷静ながら親身に対応してくれるため、彼女に恩義を感じている冒険者は少なからず居る。



(蛇・・・これはちょっと怖い)


と、内心で思いながらも受け付けの前までいき、新規登録であることを告げる。すると、涼やかな声で蛇頭の女性が答え、マコトは受付の前にある椅子に座りった。


「新規とのことですが、ギルドへは初めておいでになりましたか?」


「はい」


 そういった定例のやりとりが始まるが、本来こういったやり取りの際にはフードを外すのが常識であり、マコトがいつまでも外さないことをイラ・ヴェッラは疑問に思い


「お顔の確認をしますので、フードを取ってください。あと、話し合いなどではフードは取るのが常識ですのでお気をつけて」


と丁寧に声をかける。

 マコトも丁寧で忠告を含んだ言葉をありがたく感じ


「・・・ごめん」


と言うとフードを下ろした。


 さて、これから登録の説明だと意気込んだマコトの目に飛び込んだのは、自らの頭を呑みこまんとするかのように大口を開けたイラ・ヴェッラの顔である。イラ・ヴェッラはマコトの異常な外見に驚き、思わず威嚇するように大口を開けたのだ。マコトも大いに驚き硬直し、2人共に動かず無言の時が続く。


 しばらくしてイラ・ヴェッラは口を閉じると、慌てて立ち上がると机に頭がつくほどに下げ


「申し訳ありませんでした」


と謝罪を口にした。

 多種族国家であり、自由を標榜するこの都市において、相手の外見を魔物のように扱うことは深く禁じられている。見慣れぬ風体に目が向いたり、異種族であるが故に苦手意識を持つということは仕方ないし、苦手意識から相手を遠ざけるのであれば良い。だが、相手に気遣うことすら出来ず、魔物のような扱いをしたり罵ったりすれば、それが原因で決闘などの刃傷沙汰に及ぶこともあるのだ。イラ・ヴェッラの先ほどの行為は十分に失礼にあたり、それを自覚したため慌てて謝罪したのであった。


 マコトも自分の外見について驚いたのだと気付いたが


「・・・いい」


と口にし、謝罪を受け入れる。


(蛇の人に驚かれるのか。こっちが驚いたよ!こっちが・・・)


 内心では、蛇頭のより怖いのか?と少しながらも衝撃を受けていて、自然とフードを被り直し顔を見られないようにしていた。



 そうしたことはあったものの、その後はイラ・ヴェッラも努めて冷静に説明を続け、名前や出身地の登録や、各々固有の情報を保存するという不思議な玉に触れて登録を済ませた。といっても未だ仮登録である。冒険者ギルドの所属にはそれなりの恩恵があるため、仮登録を行って一定期間の間にいくつかの依頼をこなさねばならないのだ。

気を取り直していたイラ・ヴェッラは優秀であり、マコトにいくつか依頼を見せながら、マコトについて自然に尋ねていた。だが、それがマコトが唯一使っていた槍を失っているという話に及ぶと、首を僅かに前後に動かしてから依頼の間の仮でも良いから仲間を加えた方が良いと勧めてくる。


「仲間、いなイ」


とマコトが答えると、このギルドの地下にある待合室は初心者のみが入れるもので同じように仲間を探す者たちが集まると教えてくれた。

先程のイラ・ヴェッラの反応で、仲間見つかるのか?と少しばかり不安を感じながらも


(やっぱり冒険者といえばパーティだよなぁ。仮期間は一ヶ月だし、仲間を見つけてからでも依頼は受けれるだろう)


仲間がいれば安心だと思い、依頼を受けるのを一度保留してもらうと待合室へと向かった。


 待合室と呼ばれてはいるが、軽食の取れる食堂に似た場所であり魔道具によって煌々と照らされている。中にはすでに十数人ほどが腰かけており、複数で話している者たちと一人腰かける者たちがいた。マコトが中に入ると、数人がマコトを見つめ外套を被ったままの姿に眉をひそめる者もいたが、大抵はすぐに視線を外した。


(どうするかな。とりあえず座るか)


 マコトはここでどうするのがいいのか分からず、とりあえず腰かけて声が掛かるのを待つことにした。座ってちらちらを回りを見れば、やはり若い者が多く初心者たちが仲間やツテを作ろうと集まっているとマコトにも推測出来た。話しに耳を欹ててみれば、自分達の凄さを喧伝したり、仲間にするならどんな人がいいか?という自論を話していたり、受けた依頼について詰めていたりと雑多なものではあったが、若さに溢れた会話は廃都に居た頃とは違う楽しさがあり、マコトはしばらく聞き入っていた。


 そうやって聞いていると、マコトの対面の椅子が引かれ男が座った。まだ若く少年とも言える顔つきであり、自信に溢れた目つきでマコトを見ると、


「なぁ、あんた。仲間を探してるんだろ?俺はクルトって言う。俺も仲間を探しててさ、少し話をしないか?」


と話しかけてきた。話してみれば、少し自信過剰で挑発的なところはあるが気のいい少年であり、マコトのたどたどしい言葉を聞きなおすことはあっても鼻で笑ったり面倒そうな様子を見せることは無い。これにマコトも気を良くし


(この場も悪くないものだ)


と思っていたが、それも外套を取るまでであった。マコトの小柄さと抑揚が少ないながらも透き通る可愛らしい声に気を惹かれ顔が見たくなっていたのか、クルトは促してもなかなかフードを脱がないマコトに対し、つい手を出してフードを下ろしたのだ。マコトの素顔、綺麗な左側に対し、右目とその周りを覆う硬質な目と外殻を間近で見てしまい、その歪さにうわっと声を上げて後ろに下がると、そのまま椅子に体を取られて大きな音を立ててクルトは転んでしまった。


 突然の音に、待合室の皆の動きは止まり、マコトたちのいる場所へと皆の目が向けられる。大半の者はマコトの顔を見れる位置に居なかったが、見た者たちは驚き目を見開く。

 クルトは起き上がると、静かになり雰囲気も変わってしまったこと待合室に気付き顔色を無くし


「すまん!」


と一声上げると、足早に部屋を出て行ってしまった。たまらないのはフードを脱がされた上に騒動を起こされたマコトの方である。すぐに顔を隠したがすでに遅く、顔を見た者は声を掛けてくるはずも無く、見なかったものもこのような騒ぎがあれば敬遠するだろう。何より、ちらちらとこちらを気にする者たちがマコトには不快で、針のむしろのように感じられた。


(何なんだ・・・そんな違い無いだろう!)


 ギルドに入ってからの一連の出来事に、マコトは内心ではかなりいらだちを感じていたが、己の未熟もこれからのことを考えれば切実だと堪えて座ったまま待ち続ける。そうして長い時間待っていたが、声を掛けてくるものもおらず、マコトが自ら立ち上がり、声をかけてみようと机に近付こうとすれば、その相手は席を立ち出ていった。これにはマコトも耐えきれず、奥歯をぎしりと強く噛み物にあたりそうになる自分を押さえると、部屋を出ていく。


 外はすでに日も暮れはじめ、赤く街並みを染めていた。そんな中をマコトははじめ、ずかずかといらだちながら歩いていたが、それも長く続くことなく少しすると落ち着いてきた。


(今日が駄目なら明日がある。たまたまそんな事もあるさ)


 そう自らを慰め、宿を探しにぶらつきはじめる。ギルドの近くにはそれなりの数の宿があり、看板に書かれた文字でマコトもそれを見分けることが出来たが、小奇麗な宿はいずれもボロついた外套を身に着け顔を隠すマコトに満室だと断り、マコトが泊まることが出来たのは、小さな個室があるだけの割高な宿だった。名前だけは大層なもので『銀鬚亭』と書かれ、灯りをけちっているのか廊下や部屋は薄暗く、宿の主人は銀どころか艶のない鼠の毛のような鬚を蓄えていて、その主人の下卑た笑みにマコトはげんなりしたが、日も暮れ、すでに数軒に断られていたこともあり、そこに決めたのだった。


 部屋は狭く、何もはめていない抜けた窓はあるものの空気の通りが悪く蒸している。その上宿には食事も無く、当然風呂も無い。


(あぁ・・・風呂でさっぱりしたかった)


 暑い風呂に恋しくなりながらも、マコトは服を脱ぐと濡らした手ぬぐいで体をよく拭いていく。右足の傷のある場所も恐る恐る拭いてみたが痛みは無く、平手で軽く叩いても問題がなかった。全身を拭いてから左腕に巻いた帯を外してみれば、すでに赤い筋や肉は見えず白い膜が厚みを増して傷を覆っていた。恐る恐るその白い膜を触ると、ふにふにと柔らかな感触があり、べたついたり、膜を破って液体が飛び出るようなこともない。


(どうやら治ってきてるようだ)


 マコトはそう判断し左手に力を込めてみると、力みがある一定を超えると痺れるような痛みが左腕に走る。何度か力を込め、半分くらいの力なら出せるかと判断すると帯をまき直した。


(今日は災難だった・・・)


 そうして服を着ながら、今日のことや明日についてを考え出す。今日のことは考えると気落ちしそうだったので、そうそうに切り上げると荷物を広げ、現状の確認をし出した。


(武器は・・・槍は替え刃だけ1本残ってる。あとはナイフ2本だけだが、武器としてはナイフを有効に使える気はしないな)


 マコトの長い指では持ちにくいナイフを手に取り軽く動かしてみるが、右手では手首がまともに回らず前後左右に動かないため、出来るとしたら逆手に持って振り下ろして刺すくらいであり、左手ではそれなりに扱えそうか?と思ったが、動かしている途中でナイフは手からすっぽ抜け、軽い金属音を立てて床に転がってしまう。


(こりゃだめだ)


と、ナイフは諦め、槍の替刃を見る。これに柄がつけばとりあえず槍として扱えるかと考え、柄を付けてくれる場所を捜すことも次の目標として決めるが


(槍では一撃はいいけど、続かないんだよなぁ)


とマコトは思い悩む。


(槍が獲物に突き通ると抜けなくなる場合があるのも問題だし、やはり仲間とか連携が出来ると助かる)


やはり仲間、あとは槍以外の武器も要確認かとマコトは考えをまとめると、衣類などの数や残りの食料を確認してから毛布を被って眠りについた。



 次の日も、その次の日もとずるずると5日、マコトはギルドで仲間を探すが出会いと呼べるものは無い。槍の柄は見つかり値段も高くはなかったが、他の武器を探そうにも武器自体となると高くて手が出るものではなく、マコトの所持金は宿代に消えつつあった。

こうなるといよいよマコトにも後が無く、イラ・ヴェッラの居る受付に依頼を受けに行くこととなる。


 イラ・ヴェッラはマコトを目にすると、


「どうなさいましたか?」


と丁寧に聞いてきて


「依頼・・・」


とマコトは請けられる依頼について要求した。マコトにパーティについて聞こうとしたイラ・ヴェッラだったが、いつも僅かに肩を落とし去っていく姿と、新人たちが話していたマコトについてのことを思い出し、口に出すのを留まる。それからマコトに少々お待ちをと声をかけてから新人向けの依頼書を見て、マコトが請けられるものについて考え始めた。


 街中における依頼は、周辺や街中の地理に詳しいことを求める依頼と力仕事などの単純作業のような雑務が多く、次に多い他人に剣や魔術を教えるような依頼は新人には割り振られていない。だが、いずれも個人個人を相手にするものであり、マコトは忍耐は強いものの、見目も口も駄目な者であり勤まりにくい。力仕事ならとも思いイラ・ヴェッラはマコトを見るが、ドワーフの岩のような体ならともかく、マコトの細く小さな体では門前払いされてしまうだろうと、これも外す。そうして残るのは常時依頼か目撃情報からの魔物退治か獣狩りなどの外での依頼。採取は不器用であることを考えるとこれも駄目だろう。

 そうしてマコトの前に置かれたのは、近くの小山で目撃されたゴブリン退治・畑近くに現れる草原猪狩り・食料としてのステムワーム狩りであった。難易度としては、数が明瞭でないゴブリン退治が最も高くパーティ向けであり、数によっては逃げて報告でよいということ。草原猪は魔物ではないが突進力が高く、体が緑色で草原では見分けがつき難いこと。ステムワームは魔物だが鈍重で、不用意に近寄って噛みつかれなければ問題無いこと。そういった説明をイラ・ヴェッラから受けたマコトは、しばらく悩んでから草原猪を狩ることに決めた。数が分からないゴブリンに手を出して痛い目は見たくないし、ステムワームはラズルワームより弱そうだが、やはり大きな芋虫であり、この依頼ではそれを解体し持っていかねばならず、解体の腕の不安という理由もありこれもマコトは除外した。

 この以来を請けることをイラ・ヴェッラに伝えると、


「昼夜畑を監視し、出てきた草原猪を狩るのが基本となりますので、この都市の依頼ではありますが、7日から10日ほどは見積もっておいた方が良いですよ」


とマコトに教える。その期間を聞いたマコトは


「依頼・・・請ケる」


と答えてから、少し困ったように


「宿、金無イ」(宿に泊まるお金が持つか分かりません)


と窮状を伝える。この言葉だけでは伝わらず、幾度となく会話を重ねてイラ・ヴェッラに伝えることとなった。イラ・ヴェッラは、ここまで依頼が請けにくいのも、マコトがパーティを組めないのも当人の外見によるものであり、それをマコトの非とは言ってしまえば自由と責任を掲げるギルドとしては問題だと思っており、以前の自らの失態も合わさり何とかするべきだと判断して、いくつかの書類に筆を走らせると


「ギルドとして、1ヶ月あたり銀貨1枚の家賃で貸し出す部屋がありますが、いかがでしょうか?」


と切り出した。マコトが泊まる銀鬚亭の半額で1ヶ月と聞き、もっと早く入ればよかったと思ったが、本来は本登録した者が入る場所なのでかなりの温情処置なのである。


かくしてマコトは、イラ・ヴェッラに冒険者長屋の一室まで案内されると、銀貨一枚と引き換えに鍵を受け取る。そうして以来の準備と荷物整理をするかと部屋に入ろうとしたマコトに


「先の受付での失礼な態度と、ギルドの新米が迷惑を掛けたこと、申し訳ありませんでした」


とイラ・ヴェッラは改めて頭を下げた。思い当たるものはあるものの、冒険者のことでも謝罪を受けたことに


「ん・・・?」


とマコトは僅かに首を傾げたが、イラ・ヴェッラも特に言い直すこともなくそれではと別れの言葉を口にして去って行った。

お読み頂きありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「仲間がいれば安心だと思い、依頼を受けるのを一度保留してもらうと待合室へと向かった」 スムーズに仲間を見つけようと考えられるんや、見ず知らずの者と一緒にパーティを組む怖さなんて、全く考えて…
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