25.
前話まとめ。
マコト、リンやリオと交友を深める。
ベル王国とヤラヴァ国の連合軍は約4万。五大門の長であるリクは、これを聞いた時に門主たちの前であるからこそ表情は変えなかったものの、思った以上の大軍であることに悪態を吐きたい気分であった。
対するアレセスの出せる兵は約5000。ただし、海からも来るであろう軍船を考えれば全軍で攻める事は出来ず、野戦の選択肢は消えたと言える。5000を分け、野戦を行ったとして4万に対峙するのでは、ただ損耗するしかないのだ。山や森があるならば地形を生かした策もあろうが、ここは平原であり沼地や湿地の類も無い。数が多ければそれだけ優位に動かせる場所といえ、精鋭揃いであっても少数であれば飲み込まれるのは目に見えていた。
ただし、これが海からの敵が無いのならば話は違う。門主である彼ら5人は文字通り一騎当千。内力も限りがあるため、千を狩り次の千人をとはいかぬが、それほどの英傑が道を開き、魔術師の大魔法で敵を殲滅すれば、相手は怖れ逃げ帰る可能性もあった。リクは敵が1万5千程度であれば、5大門の門主とその旗下の精鋭をもって敵を翻弄し指揮する者を討ち取り、すぐに返して街へと戻るということも考えていたのだが、この数はさすがに荷が勝つと言え、諦めざるを得ない。
そうして悩んでいたリクに、
「やはり、防衛戦かね。打って出てもいいが、隙も見いだせず出て我らが欠ければこの街も終わろう」
とラーシュが静かに言う。門主はアレセスの武の象徴であり、英傑である彼らが討ち取られれば精神的な打撃は計り知れない。彼らがいかに強かろうと、八方に気を向け続けるのはきついし、傷を負えば血は流れ、毒を受ければ動きも鈍る。手があるなら打って出ればいいが、無いなら出ないと彼は言っているのである。本来は援軍の見込みの無いまま籠るのは良手ではないが、1年は持つ糧食があり、1年攻め手を街に張り付かせることが敵には出来ぬと分かっているのだ。これは、半年もすれば冬となり、それこそがアレセスの援軍だからである。この地方は冬になれば平原でも雪が背より高く積もり、海は流氷がたまに流れてくるような場所で、そこまで軍を置き続けることなの出来ないのだった。
「まぁ、防衛戦が無難でしょうね・・・相手もそう思っているでしょうから、奇をてらい驚かせてやりたくはありますが」
そうフガクは言う。それからにこりと笑って、
「あぁ、でも彼らを驚かせようと、街の近くで陣を張れそうな場所にはいくつか油を仕込んであります。思惑通り来たら火をつけて脅かしてやりましょうかね」
と、物騒なことを言うのだった。フガクは仁君と謳われるが、謀を好むし武人としての好戦的な面も持ち合わせており、
「仁君らしいわぁ。私はゆっくり防衛戦をするわ・・・でも、海は私以外にしてね。塩で髪が傷むもの」
と、リンはフガクの二面性を馬鹿にしつつも、海には出ないと言うのであった。
「海かぁ。俺も海は嫌だねぇ。ま、俺は大魔法に備えて城壁側にいるわな」
リオはそう言い、にやりと笑う。実のところ、この5人を含めて五大門は意外なことに水練があまり得意ではない。そのためか、船での戦いはあまり好んで行いたいとは思っていないのだった。
「皆の言うように、防衛線になるだろう。敵は20日もせずに来るだろうが、恐らく同時期に海も攻めてくるはずだ」
リクはそう言って、5大門の兵の割り当てを決めていく。彼らはある程度の不平不満は言うものの、長であるリクの決定に異論は無く、速やかに戦争での割り当ては決まったのであった。彼らは武門の街を自称するだけに5千の兵は半日あれば動かせるし、武具も矢も糧食も問題など起きようも無く、後はこの決定を魔術師たちに伝え、割り当てていくだけである。
「戦争が終わって、また5人揃って宴をしたいものだ」
そうリクが最後に漏らすと、
「おっ死んだとしても、将の首を上げるくらいはしてやるさ」
そうリオが太鼓腹を叩きながら返し、
「私としては、英雄のように武ではなく智慧で敵を万と討ちたいところだな」
と、フガクは演じるように大げさに言い、
「手ごわい英傑がいれば教えなさいな。毒して殺してあげるわよ」
そう言ってリンは鈴の鳴るような声で笑い、
「門主として恥ずかしくない散り様を見せるならば、荼毘に伏して弔ってやる。存分に力を振い、我らを敵する事への愚かしさを刻み付けてやろう」
とラーシュが締めたのであった。この5人は欠片も死ぬ気など無く、これは軽口の類であり、口に出して言う事でより自らの意思を高めているのである。そうして5人はそれぞれに視線を交わすと目を瞑り、腕を組んで深く一礼をしてから塔の最上階にある門主たちの部屋より出てそれぞれの門派へと激を飛ばしにいくのだった。
それから20日もしないうちにベル王国とヤラヴァ国の連合軍が街からでも姿が見えるところにまで来ていた。数は当初報告されていた4万から1万ほど減り3万となっていたが、アレセスと比べれば大軍である。ベル王国はアレセスを落とすことを優先していたが、南東にあるもう一つの都市国家のイホに1万5千を割き、後背を突かれぬよう牽制に当てたのだった。そうして東よりに陣が敷かれ、アレセスは包囲されることになる。
マコトはその中で城壁内部を通る路の東門近くに居た。バルドメロの傍で警護という話は何時の間にやら消えており、気付けばこことなってしまったのだ。
「本当にすまない・・・浅慮で私の想定を超えてしまった。謝って済むことではないが、今は謝ることしか出来ん・・・良ければ戦争が終わった後にちゃんと話をしよう」
と、バルドメロは東門へと向かうマコトに声を掛け、深く頭を下げたりはした。マコトも、バルドメロを張り倒そうかと右手を僅かに上げたのだが、その右手をじっと見て、
(色々と鬱憤は溜ってるんだけども・・・殴ったら死ぬ気がする)
と、腕を下ろし、酷いとだけ彼に言い、門へと向かったのである。マコトはその事を思い出しながら路に備えられている狭間より敵の大軍を見て、
(ちゃんと話せるといいなぁ)
と、戦争が良い形で終わり、話せることを願うのだった。
マコトの居る東門には2名の門主と1名の大魔法を使える魔術師が配置されている。門主はリオとフガクで、魔術師は火の大魔法を使いこなす50代の男であった。その他、門下の者と魔術師の弟子である数名の中級魔法を使える術士も東側に詰めている。
マコトは軍が見えてからすぐに戦争となると思っていたのだが、2日が経ちようやくその東門へ向けて敵軍より馬に乗った1人の使者が出向き、
「我らは義によって、ヤラヴァ国を救い、蛮する国を滅ぼさんと来た!貴国は魔物で疲弊したヤラヴァ国に剣を向ける蛮行を行おうとしていたが、我らは貴国と違い慈悲がある。今すぐ門を開け、5人の門主の首を渡せば矛を収めてやろう!」
と、大声でのたまったのだった。それを聞いて門楼より飛び降り使者の目の前に出たのは門主の1人、フガクである。
「我らの戦いに、ベル王国のようなものは居なかった。弱った国に食いつき、我らとわざわざ戦おうという貴国こそ、蛮した愚かな国だろう!我らと戦うという愚を犯せばどうなるか?それを知ると良い!・・・とでも指揮官に伝えて下さい」
と、フガクは勢いよく大喝したかと思えば、にこやかにゆっくりと伝えてくれるよう頼み、馬を返した使者にそっと軽功で近付くと、その馬の尻と使者の肩を軽くぽんぽんと叩いたのだ。
これに気付かず帰った使者は、指揮官の前で両目と鼻、口、耳に下の2穴。その全てから血を噴き言葉を伝えることなく死んだのだ。馬も同様の死を迎え、言葉以上にはっきりと相手に宣戦布告を告げたのである。ただ、それだけで済ますフガクではなく、
「折角、門から出たのですしね。一つ脅かしてやりましょう」
と、背に備えていた弓を手に持つと、馬より速く走り、敵の弓の間合いよりも手前まで来ると火を付けた矢を引き絞り、何度か撃ち放った。それは大きく弓なりに、東門に相対している軍の右翼の端に5メートルほどずれて落ちる。その弓の距離に驚き、目を瞠って見ていた雑兵たちだが、当たらぬと見るや大声でフガクに罵声をあげ笑い出す。そうした矢は5本ほど落ちるが、どれも人に当たるような位置では無く、道化かと笑い声もいよいよ大きくなったその時に、その落ちた矢の位置より軍へ向けて勢いよく火が走ったのである。
火は右翼の4分の1程を囲い、黒い煙をあげ兵たちを煙に巻いていく。フガクが準備し、地面の溝を這うように撒いた油は粘度が高く匂いがあまりしないもので、端を担当する兵が気付かずその上に立っており、その引火場所へと火矢を落としたのだ。煙に巻かれ、笑い声が怒声と悲鳴に変わったのを満足そうにフガクは笑み頷くと、ようやくこちらを斃さんと向かう兵を見て逃げ出し、門楼よりたらされた縄を掴むと飛び上がり、壁に足を付けた位置でまた縄を掴み飛び上がるということを3度ほど繰り返して門楼へと戻ったのである。
「いいのか?宣戦布告してからじゃなかったか?」
と戻ったフガクにリオが聞くと、
「あぁ、ちゃんと使者が伝えた後にやってますからね。これも戦争の始まりってところですよ」
とにこやかに答えるフガクだが、これによって敵兵も数の多さによる慢心は消える。とはいえ、大魔法を使ったり、何かですぐに楽な戦では無いと気付かれるであることを考えれば、初手で罠に掛け、相手を無駄に用心させることが出来て悪いものでもない。
こうして初手こそフガクによって取られ出鼻を挫かれた敵の連合軍だが、初手の結果としては、怪我人はそこそこ出ていたが死者は少なく、全体の数から見れば乏しいもので建て直す時間などそうは掛からず、次手から暫くは敵軍のものである。
魔法の間合いよりは少し遠い位置に配された弓兵によって矢は次々とアレセスに向けて放たれ、アレセスの全軍に等しい数から繰り出される矢の数は多く、アレセス側の弓兵は壁内部の狭間より射かけはするものの、その狭間すら数によって射抜かれる事もあり、絶え間なく放たれる弓に抗することが出来ない。マコトも壁の内部で雨音のように壁に当たる矢の音に先ほどまでのように狭間より顔を出すことも出来ず当たらぬよう隠れていた。そうして居るのはマコトだけではなく、他の兵も多くは同じであり、死者や怪我人も出始め、路には血と糞便の混ざった嫌な臭いと射られた味方のうめき声が響いている。
こうして矢が一方的になったところで、敵の弓兵の一部が前進する。曲射によって街へと火矢を射かけに来たのだ。これに魔術師が間合いに入ったと反応したが、門主たちはそれを止め、火矢は街の中へと自由に射かけられることになる。敵も魔法による打撃を警戒して数は2百の部隊が3つそれぞれの門の方角より近付いて射かけ、敵の火矢の尽きる少しの間、街中に火矢が降り注ぐこととなった。アレセスの家屋に対しては、これはあまり良い手では無く、火の手があがるような家屋は殆ど無い。土が厚く塗られた壁と瓦に覆われた家屋は火矢が当たろうが燃えようも無く、運悪く木で出来た雨戸に刺さったり、片づけ損ねた出店が燃えるなどしたが、被害としては大きくは無かった。だが、火がついたと思わせた方が良いと考えるフガクによって、いくつかの広場や道などの開けた場所に置かれた焚き木がこれに合わせ火を掛けられ、もうもうと上がる煙は外から見れば火の手が上がったように見受けられた。
「やはり英雄の策といえば火を使うものですよ」
というフガクの策だが、今のところ彼の手は、敵の愚かさも相まって通じている。少数だと五大門の武威を侮り、武門だから猪突な者たちだと思われていたのが功を奏していた。これは、相手のヤラヴァ国と戦っていたのがリオであり、彼が豪胆な性格で武を誇るので、全員そうだと誤解されていたのが原因でもあった。
こうして煙の上がる街を見て大きな声が敵より轟き、マコトはそれにびくりと震える。これほどの大軍が敵であるということの恐ろしさをマコトは戦いが始まりようやく認識しはじめたのだ。あれだけの数が動けば地鳴りのように音はするし、矢も雨の如く降り注ぐ。しかも敵はまだ遠く、壁に取りつきさえしないというのにこちらは死者や怪我人が出ているのだ。マコトは戦争の雰囲気に呑まれ、体は強張り壁を背に固まっていたのだが、ふと、雨音のような矢の音が途切れたことに気付く。
そうして、マコトが恐る恐る狭間より除くと、敵は攻城のための兵を前進させてきていた。500人ほどが盾を上に構え密集し、大きな梯子を載せた兵の集団は、全部で10ほど。東門近くに来ているのはその半数である。その速度はあまり速くは無いが、味方の弓は盾に弾かれ通じず、通ったとしてもすぐにその隙間は埋められ崩れる様子は無い。
梯子を持って近づく兵に各門の門楼で見る門主も当然気付いており、兵へ弓を飛ばすよう指示してから、ついに魔術師を投入することになる。
「さて、火の大魔法。楽しみですねぇ」
とフガクが嬉しそうに言うなか、魔術師は準備に取り掛かり、それを見てリオは、
「ふん。まぁ、大火で敵を驚かせてくれや。・・・ちょっと路の方いってくらぁ」
そう言って、門楼を後にした。
各門でも、門主の請いにより魔術師による準備が始まり、まず敵の一団が間合いに入ったのは意外なことに敵より最も遠い南門である。近い東門は、弓の手が多く敵も慎重になって速度が落ちており、北はそもそも向かう数が多くは無かった。
南に位置するのは、リンと風の魔術師である。すでに路にはリンと同じ赤華化法などの毒の使い手が配備され、梯子が掛けられれば、下に向かい毒が放たれる手はずになっているが、それが使われるよりもまずは一手と大魔法の出番となった。
風の大魔法。強く人が立てぬほどの風を起こすことも出来るが、突撃する兵も無くこのような平地では転がっても怪我は少なく意味が無い。そこで使われるのは、風の魔術師でも使えるものは5指に見たぬ、大気自体を変じる大魔法である。この魔法は、小規模なものなら使い手はそこそこいるが、大魔法と言われるような範囲魔法を使えるものは属性の適正に才能を加え、魔術師ギルドで秘匿された魔法を覚えられる立場にある者と非常に少ない。当然、戦場で使われたことなど殆ど無く、知られることの無い魔法であった。
そうして、風の魔術師によってじっくりと練られた内気が目標地点へと向かい、その内気は静かに大気のマナへと浸透し、一定まで浸透すると一気に大気を毒と変じる。色も無く無味無臭、そして効果は即現れると恐ろしい魔法で、何の音も立てずに発揮された魔法によって、盾を頭上に掲げた敵の一団は厚みを無くしぺちゃりと潰れるように盾を体の上に残したまま崩れ落ち、その死を現したのである。
「あら素敵。いい魔法だわ!とても!」
と手を叩き快哉をあげるリン。音も無く来るこの魔法は抵抗するのが難しく効果が高いのだが、欠点としてはその音の無さでもあった。後ろで陣を構え見守る敵兵は異変に気付けるのだが、同じように梯子を持ち向かう兵たちは他の一団を見る余裕は無く、音が無いこの魔法は気付かれない。そのために混乱も何も無く向かってきてしまっているのだった。更に一度の風の魔法で一団が死に崩れたところで魔術師の内力が尽き、ついに南の壁に一団が張りつく。だが、梯子を3つ掛けるのに成功するも、下位の魔術師によって制御された風によって毒が撒かれ、動きの鈍ったところに弓を射かけ、南の敵は潰走し僅かな数のみが生きて逃げられたのである。
南門に梯子が取り着こうかという頃合いに、東門も大魔法の準備が整う。上機嫌でにんまりと笑い、
「さあ!見せてやってください!その大きな炎を!」
と煽り立てるフガクに頷いた魔術師が扱うのは火の大魔法である。先の魔法とは違い、大きな火の川が外壁の上空に沿うように現れ、それが雪崩て敵へと降り注いでいく。この炎はマナによって造られた液状の燃料を伴うもので、内力による抵抗に失敗すればその燃料が尽きるまで消えることなく纏わりつく。そこに現れるのは地獄絵図であり、フガクが起こした火計の罠などとは比べるまでも無いおぞましいものだった。リルミルがかつて使ったことのあるほどには温度は無い赤い炎は、敵をじわりじわりと焼き、消えもせず徐々に深い熱傷を与えていく。この魔法に巻き込まれた2つの敵団は阿鼻叫喚の地獄と化し、一部の武功の修錬のある者は抵抗に成功するものの、
「おい!掴むな!離せ・・・!」
と、焼けた仲間が俺の火も消せと助けを求め群がり、彼らの火によって焼かれていく。たとえ魔法に抵抗出来てもそれで消えるのは魔法のみであり、そこで起きた現象が消える訳ではないのだ。結果として魔法により焼けなかった者も、松明と化した仲間によって焼かれるのであった。
「はははは!いいですねぇ」
この地獄に喜ぶフガクだが、東門に来る敵は最も多く、まだ3つも敵の集団が残って向かってきており、魔術師もすでに内力が尽きていた。
そうして向かう敵の一団に、外壁から女の金切声がしたかと思うと、梯子と共に敵集団の一部が吹き飛んだのだ。門楼で敵と切り結ぶ準備をしていたフガクはそれに目を剥くが、その音と爆発は何度か続き、全ての敵は梯子を打ち砕かれ、多くの死傷者を出すと、敵も梯子が狙われていると気付いて梯子を放り捨て潰走したのだった。
勿論これをやったのはマコトである。マコトは戦争に乗り気で無く、護衛と思っていたから殺したり殺されたりなど殆ど起きずに終わると楽観していた。そんな認識のマコトだったが、戦争であれほどの数が敵意を向け、地鳴りを立てて向かってくるということに呑まれてしまい、何をするでもなく路で震えていたところを、リオが発破をかけたのである。震えていたマコトだったが、自身の力とどうすべきかの方向を与えられると、どこかぼんやりとした表情のまま砲撃を行ったのだ。リオは鍛錬時にマコトより右腕の事を聞き及んでおり、いざという時に使えるよう見に来たのである。
(まさかこうも戦に呑まれてるとは・・・。来て正解だったな)
とリオは思い、マコトが泣き叫ぶような砲声を立てて敵の一団を潰走させるまで付き合い、
「よくやった!これで俺らは助かったぞ!」
と言って乱暴に頭を撫でたのである。北門は集団2つしか来ておらず、魔法によって近付かれることも無くこれを斃しており、初戦はアレセスの大勝だと言えただろう。
この日、ベル王国とヤラヴァ国の連合軍の死者は4000を超え、殆どが梯子を持ち近付いた兵であった。対するアレセスの死者は100に満たない。こちらは殆どが外壁で弓を撃っていた兵である。連合軍は普通なら引きかねない被害にも見えるが、実のところベル王国の軍はほぼ無傷であり、先陣といえば聞こえはいいが、魔術師ギルドが絡んでいるかを確かめる捨石にヤラヴァ国の軍が使われたのだった。それから数日、敵は夜討ちを恐れ煌々と夜はかがり火を炊き、昼は魔法を恐れ攻め寄せずに一定距離から弓を撃つということが続く。精鋭による夜討ちで壊乱も狙っていた門主たちだったが、奇襲をかけるのは難しく、耐え忍ぶことを強いられることになった。
そうして日が過ぎ、ついにベル王国の戦船がアレセスの港へと迫ってきたのである。
お読みいただき有難うございます。
戦争開始しました。
こう・・・戦争って入れてみたけれど書くの本当に難しいですね。戦記ものとか書ける人凄いなぁ・・・。




