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爆炎の魔女  作者: ねこまる
伝説の始まり
9/14

第9話

「そう。報告ご苦労様」


知的さを醸し出し、その振る舞いから軍師や副官を思わせる少女リアーナが、静かに労いの言葉を告げた。


三極の一角、アージェントレギオン。

その拠点の一室では、謎の転校生についての報告が行われていた。


「銀髪の転校生、完全に調子乗ってますね」

「ケルベロスの連中がやられたってことは……」

「そいつ、うちにもカチコんできたんすよね! これは報復案件でしょ!」


報告を聞いたアージェントレギオンのメンバーたちは、口々に意見をぶつけ合う。


その喧騒を意に介さず、アージェントレギオンのリーダー、ミランダは、

無表情のまま視線も動かさず、短髪の小柄な少女へ問いかけた。


「クー。実際に戦った感じ、どうだった?」


「あいつ、めちゃくちゃ強い。ワタシの磁力を引きはがした」


クーと呼ばれた少女、クーデリカが、感情の起伏なく答える。


「クーデリカは感情あんまり出さないし、いつも大げさに言うから、分かりづらいんだよな。本当にピンチだったのか?」


取り巻きの一人が、念押しするように尋ねた。


「うん。ピンチだった。新しい先生の介入がなかったら……負けてたかも」


クーデリカの追加報告に、室内の空気がわずかに変わる。


「マジっすか。“磁界の魔女”って言われるクーデリカさんが負けそうになるとか……マジで激強じゃないっすか」


メンバーたちの認識が、明確に引き締まった。


「行きますか?」


リアーナが静かに問う。


「……そうだな」


ミランダは、小さく頷いた。


「ちょっと待ってください! リーダーが行くまでもありません。ジュリアやエリーあたりを向かわせて、様子を見させれば…」


「"爆炎"を口にしたんだ」


ミランダが、その提案を切り捨てる。


「どんなやつか……一目見てみようじゃないか」


「所詮、田舎者の戯言にすぎません。リーダーが出るほどの――」


「……おい」


室温が、急激に落ちた。


次の瞬間。


バキン――


室内のあらゆるものを白い氷が一瞬で覆い尽くす。


「っ――!?」

発言したメンバーの顔が鷲掴みにされ、宙へ持ち上げられた。


――ピキピキピキ。

凍結が、顔面からじわじわと侵食していく。


「爆炎が……戯言だと?」


氷の魔女の瞳が、静かに細められた。


「もう一度、言ってみろ」


「リーダー、そのへんにしてちょうだい。彼女、死んじゃうわよ」


リアーナが冷静に制止する。


「黙れ。お前も凍りたいのか」


さらに張り詰めた殺気。


しかし、


「ミランダ。みんな怖がってる。そんなことじゃ、あなたの目的も達成できない」


リアーナの一言が、静かに突き刺さる。


「……気持ちは分かるけど、ミラ、怒りすぎ」


クーデリカもぽつりと補足した。


数秒の沈黙。


「……そうか。そうだな。すまん」


ミランダは、あっさりと手を離した。


パキン、と氷が砕け、失言をした生徒は床に崩れ落ちた。


「ごめんなさい。その子、看病して頂戴」


副官らしく、リアーナが即座に場を収める。

周囲のメンバーたちが慌てて駆け寄る。


「それで? 結局どうするの? 見に行くの、その転校生を」


空気が戻ったところで、リアーナが改めて問う。


「……そうだな。見に行くとしよう」

短い決断。

「そう。それじゃあ、私も一緒に行くわ」


「お前まで来なくてもいいだろ」


「いいえ。何かあっては大変だもの。もしかしたら……あの狸女も来るかもしれないし」


ミランダの目が、わずかに細まる。


「……そうか。あいつも来るか」


「ええ。あの子、この手の話には目がないもの。もしあなたと鉢合わせしたら、一触即発よ?」


「……お前が来てくれるなら、少し安心だな。では、明日の朝、共に行くか」


「ええ」

頷き、振り返ったリアーナは、二人に声をかける。

「それじゃあ、クーとアリアも一緒に来てちょうだい」


「わかった」

「承知しましたわ」


それぞれが短く応じる。


波乱の幕開けを告げる決定だった。

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