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爆炎の魔女  作者: ねこまる
伝説の始まり
8/14

第8話

リューネたちがカフェで相談をしている頃――


「つんつん、つんつん……。ねえ、君たち大丈夫?」


静まり返った二年生の廊下。うつ伏せで倒れている二人の生徒を、しゃがみ込んだ女生徒が人差し指でつついている。

先ほどリューネに叩き潰された者たちだ。


「姉さん、そんな奴ら放っておいていいっスよ」

「そう~? こんなところで寝ていたら、風邪ひいちゃうよ~?」

「バカは風邪ひかないっていいますし」

「キョウちゃん、ひど~い」


くすくすと笑う。


そこへ、教室の中を確認しに行っていた取り巻きが戻ってきた。


「あねさん。転校生、もういないみたいっス」


「え~。せっかく来たのに~? もう帰るの~?」


「まあ、転校生がいなきゃどうしようもないので」


「う~ん。しょうがないかー。じゃあ明日の朝に来よ。朝ならいるよね?」


「ねえさん……朝、起きられますか……?」


間髪容れず、ツッコミが入る。


「それともう一つ。その噂の転校生、そいつ、テッペン宣言したらしいですよ」

一緒にいた別のメンバーが追加の情報を伝える。


その瞬間、彼女の纏う空気が一変した。

「へぇ……。テッペン、ねぇ……」


柔和だった表情と声色が、一瞬にして凍りつくような冷たさを帯びる。

その自由奔放、天真爛漫な"炎姫"と呼ばれる魔女。

しかし、もう一つ"炎鬼"と呼ばれる所以を

間近でその変化を見てしまった二人は、言葉を失い、冷や汗を流した。


「そっかぁ。なるほどねぇ。うん……。じゃあ、やっぱりその話題の転校生を見に行こうかな」

再び明るく響いたその声には、先ほどの冷徹さは微塵も残っていない。だが、それがかえって周囲の恐怖を煽った。


――その時。


「こらー! どこに行ってんの!」


廊下の奥から鋭い声が飛んだ。


「あー、クロエちゃんだー。よっすー」


「よっすーじゃないわよ!」


クロエと呼ばれた少女が、ずかずかと歩み寄ってくる。


「あんたが二年の教室にいるってバレたら、大変なことになるわよ!」


「大丈夫だよー。放課後なんて、ほとんど人いないし」


 悪びれもせず、ひらひらと手を振る。

「今は噂の転校生を見に来ただけだから。……いなかったけど。だから明日の朝、また来るー」


「ちょっと待って!」


クロエの声が一段低くなる。

「絶対ロクなことにならないの! 揉め事作るだけだから!」


「なんでー? なんもしないよー。ちょっと見るだけだよ」

「待て待て待て」


クロエが額を押さえた。


「あなたが"興味ある"って時点で、あの二人も動くでしょ」


 空気が、わずかに強張る。


「もし二年校舎で鉢合わせなんかしたら……それこそ戦争よ」


「やだなー。私、大人だよー?」


「鉢合わせしたところで、なんもしないよー。クロちゃんは心配性だなー」

にこにこと、無邪気な声で返す。


「嘘おっしゃい! この前もそう言って、気になる子がいるって見に行って、

 リーヴァのところに先にスカウトされてる1年を、スカウトごと吹っ飛ばしたじゃない!」


「あー」


姉さんと呼ばれるその少女は、誤魔化し笑顔で舌をペロリと出した。


「だって、うちのオファー蹴った上に、あっち行こうとしてたし。じゃあいっかー、みたいな?」


「“みたいな?”じゃないのよ……!」


クロエが深くため息をつく。


「あの後始末、どれだけ大変だったと思ってるの」


「リーヴァのところだったからまだ良かったけど、あれがミランダのとこだったら――完全に抗争案件よ」


「う~ん。でもさー」


くるりと踵を返す。


「今回の子は、先にスカウトされてても、どこにも靡かなそうだし。大丈夫大丈夫」


軽い。あまりにも軽い調子で言い切る。


「キョウちゃん、リンちゃん行くよー」


「はい、ねぇさん!」


呼ばれた取り巻きが即座に反応し、3人は三年校舎の方へ来た道を引き返していく。


「もうっ!シルフィー!!」


クロエが頭を抱える。


「3極の一人って自覚あるの!?どうしてもって言うなら私も行くから!」


諦めたようにその背中を追いかけた。

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