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爆炎の魔女  作者: ねこまる
伝説の始まり
3/15

第3話

教室に戻ると、そこには普段ありえない光景が広がっていた。


普段は空席だらけの教室。

授業をサボるのが当たり前の生徒たち。


そのはずなのに。


今日はほぼ全員が揃っていた。


理由は、考えるまでもない。


今朝のグラウンドでの出来事。

あの、銀髪の少女。


転校生の可能性が高い噂の人物が、このクラスに来るかもしれない。

その予感が、生徒たちを教室へ向かわせていた。


「ルナ、同じクラスになれて本当に良かったよぉ……」

隣で、フェリスが本気で安堵した顔をしていた。

少し目元が潤んでいる。


「私もだよフェリス。知ってる顔があるだけで、少しは心強いよ」


思わず笑みがこぼれる。


ざわめきが落ち着きのない教室の空気を形作っている。


「それにしても……すごいね」


フェリスが小声で言った。


「やっぱりみんな、転校生が気になって来てるのかな」


その時――


ガラガラッ

誰もが入り口のドアを凝視する中、教室の扉が無造作に開かれた。

「ホームルームを始める。静かにしろ」


入ってきたのは始業式で挨拶していた、新任の教師だった。


新任の挨拶の時と変わらず黒髪を後ろで結び、鋭い目つきで教室を見渡す。


だが。


教室のざわめきは止まらない。


それも当然だった。


ここにいる生徒のほとんどは、始業式に出ていないのだから。


教師は、気にした様子もなく口を開いた。

「おはよう。クズども」


一瞬、空気が凍り教室内にはさらに困惑が広がる。


「ここにいる大半は式に出ていなかったから、私のことを知らないだろう」


淡々と続ける。


「自己紹介はさっき済ませた。同じことを二度話すのは時間の無駄だ」


「気になるやつは、他の誰かに聞け」


挑発的ですらある態度。


だが、その声には揺るぎがなかった。


「あと、お前たちの自己紹介だが……まあ必要ないだろう」


教師は興味なさそうに言った。


「せいぜい拳で語り合え。」


生徒たちの目の色が変わる。

しかし、不良学生を相手にしても、彼女の凛とした態度は微動だにしない。


「最後に」


教師が、扉の方へ視線を向けた。


「転校生を紹介する」


教室内が、ひりつくような緊張感に包まれた。


「入りたまえ」


空気が、張り詰める。


誰もが息を止めた。


今朝の光景が、脳裏に蘇る。


学園の上位勢を一瞬で倒した存在。


聖域を侵す自殺行為に等しい行為

それでもやった。


いや――できた。


そんな人間は、限られている。


答えは、もう出ていた。


ガラガラ……


扉が開く。


クラス全員が固唾を呑んで見守る中、一人の少女が気だるげに足を踏み入れた。


「おはようございます」


気だるそうな声。


銀の長髪が揺れる。


間違いない。


今朝の少女だった。


銀の長髪をなびかせ、周囲の視線を意に介さず教壇の前まで歩み出て立つ。

「えー……」


少し考えるように間を置き。


「今日から転校してきた、リューネです」


ざわめきが広がるがリューネは続けた。


「この学園には、まだテッペンを取ったやつがいないって聞いたんで」


静かに。


当たり前のことを言うように。


「テッペン取りに来ました」


――凍りつく教室。

次の瞬間。


教室の空気が、変わる。


殺気。


敵意。


明確な“拒絶”。


それでも。


リューネは、まるで気づいていないかのように言った。


「とりあえず……」


一拍。


「“爆炎の魔女”って呼んでください」


それが引き金だった。


言い終わるか否かのタイミングで、二人の生徒がリューネに向かって弾かれたように飛び出した。


当然だった。


“テッペン”。


そして


“爆炎の魔女”


この学園で、決して軽々しく口にしてはならない言葉。


それを。


二つ同時に名乗った。


朝の事件の張本人。


それだけでも、十分すぎる理由だった。


教室の均衡が


今、崩れた。

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