表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/10

【第3話】2025年7月23日 「祈りよりエアコン、政局より麦茶、バズより暑さ」

暑さで神も溶ける。

今日の人間界は「熱中症」「政局ドタバタ」「SNS神社バズ」「地震」「ご利益詐欺」と、目まぐるしく色が変わるニュースの渦。

けれどちゃぶ台の上は相変わらず麦茶と扇子と、ため息で満たされている。

現実逃避? それも神々の特権なのかもしれません。

祈りよりクーラーが優先される時代、八百万の神々は何を思うのか――。



■本日のトピックス一覧


1. 記録的猛暑と参拝危機──神頼みよりエアコン!(→【神々のちゃぶ台、灼熱モード】〜【熱中症・参拝危機と“冷房神話”】)



2. 神職の苦労と“ご利益グッズ”時代(→【参拝の現場・神職の嘆き】)



3. 政局混乱・石破内閣/AI官僚(→【政局崩壊・石破内閣の苦悩】)



4. 日米貿易・トランプ/農業神の嘆き(→【日米貿易・トランプ大統領】)



5. SNSバズ・推し神社・ご利益詐欺・地震デマ(→【バズ神社・SNSと参拝の暴走】〜【地震予言・トカラ列島の群発・ご利益詐欺】)



6. 万博・能登復興(→【大阪万博・工期遅延・不安】【能登復興・忘れられる被災地】)



7. 現代祈願・“八百万の神”という矛盾(→【神々、ちゃぶ台で“現代の祈り”を語る】〜【“八百万の神”という矛盾と、無数の物語】)



8. 灼熱の夏の神々の思い(→【神々、灼熱の夏に思うこと】)



---


【神々のちゃぶ台、灼熱モード】


 ちゃぶ台の上には、氷がとけかけた麦茶と、汗だくの神々。  進行役のオオクニヌシ命は、タブレットをあおぎながら深く息を吐いた。


「定例、始めます。……って、みんな顔が死んでる」   「死んでない、溶けてるんや」  イナリ神は座布団を団扇がわりにパタパタ。「今日な、北海道の美幌で38.2度やって。オレ、もう神様やめて涼しい物置になりたいわ」   「神社もえらいことになってるで」  スサノオ命が麦茶を一気飲みしながら呻く。「“祈るより冷房”がトレンドやぞ。本州なんか“参拝控えてください”って神主から言われるレベル。神頼みよりエアコン頼み、やな」   「うち、クーラーの女神に転職しようかな」  モニター越しにリモート参加のアマテラスが、浴衣姿で扇風機を抱えている。「本日、太陽神のせいで冷房消費量が前年比150%増です、とかニュースになってた。責任感じるわ~」   「感じて、どうすんねん」  イナリがぼやく。「現代のご利益は冷房直結や。“エアコンに祈ったら涼しくなる”って、本末転倒やろ」


「いやほんま、“神より冷房”や」  スサノオが頭を抱える。「“氷室祭”が本気で祈られるの、平安時代以来やないか? お祓いより、クーラーメンテナンスのほうが先やで」


「しかも最近、“冷房の精霊”とか言って勝手に新キャラ作られとる」  タヂカラオが苦い顔。「わし、“筋肉神”やのに、“冷却系パワー担当”にされてるやん。そもそも神殿は風通し重視で設計したのに……」


「しかも冷房の故障、神主さんにクレームが来るんやって」  イナリが、最近のSNS相談スレを読み上げる。 「“神主様、境内のエアコンが壊れて涼しくありません。なんとかしてください”──って、電気屋やないっちゅうねん!」


---



【熱中症・参拝危機と“冷房神話”】


「実際、熱中症搬送2000人超えたって」  オオクニヌシがタブレットを操作しながらつぶやく。「“麦茶祈願セット”が神社グッズとして売られ始めたで。“ご利益・冷却パック”入りや」 「何やそれ、新興宗教か」  スサノオが笑う。


「今年の夏詣、SNSで“暑さ耐久チャレンジ”タグが流行っとる。“35度超えの参拝で願い事が一個叶う”って、どこの修行や……」  イナリがため息。


「逆に冷房効いた自室で“リモート参拝”動画も伸びてるわ」  アマテラスがスマホを見ながら誇らしげ。「“画面越しに神殿参拝できる”って……うち、もはやVTuberじゃなくてIoT神社やで」


「この前、“冷房が効いてる神社”特集をテレビでやってたな」  スサノオが苦笑い。「御朱印より“エアコンの効き”で参拝ランキングされてるって、もう何やねん」


「本来、神事は自然の恵みと対話する場やったのに、“熱波耐久イベント”化しとる」  タヂカラオが肩を落とす。


---



【参拝の現場・神職の嘆き】


「神職さんも大変やで」  イナリがスマホ画面を見せる。「“直会なおらい”で配るのが“お神酒”から“塩タブレット”に変わってるらしい。“神事後は冷房室で休憩を”って公式アナウンスや」 「熱中症対策で“氷の御守”売り切れ続出やで」  オオクニヌシが付け加える。


「“神に祈るより保冷剤”がご利益や」  アマテラスが、どこか誇らしげに言う。「そろそろ“冷房の神様”を本格的に祀ろうか」


---



【政局崩壊・石破内閣の苦悩】


「で、ニュース2本目。政権やばい」  オオクニヌシが淡々と次の資料を映す。「石破内閣、支持率22%。与党は分裂寸前、“辞任不可避”って見出しがトップや」


「これが人間界の夏バテやな」  イナリ神が薄ら笑い。「“神意を問う”って言いながら、神社にだけは予算まるごとカット。神も呆れとるで」


「俺、また“荒ぶる改革神”って新聞で使われたわ」  スサノオが机を指で叩く。「名前だけ借りて何もしないパターン多すぎるやろ。政治の“ご加護”言う前に、まず水分補給とれや」


「新しい神、誕生しそう。“政局安定の神”とか」  タヂカラオがぼそっと呟く。「いや、もうそういうのはAIに任せようや」


「なんや最近、“AI官僚”とか“バーチャル首相”とか本気で議論されとる」  アマテラスが苦笑い。「神でもAIでもいいから、“責任だけは人間がとれよ”って思うで」


「もう政治の世界、祈るより氷嚢配っとけ」  イナリがぼそり。


---



【日米貿易・トランプ大統領】


「三つ目は国際ニュース。日米で“貿易合意”や」  イナリが資料を広げる。「自動車関税が15%まで下がるらしいけど、“実は日本側は農産品で大損”って話。ほんま、貿易も神頼みになってきたな」


「アメリカの“神の名を借りたディール”もすごいで? “トランプの奇跡”とか“米国繁栄の女神”とか」  アマテラスが苦笑。「なんで政治も商売も、最後は神に話を持っていくんやろ……」


「それで“日米祈願セット”とか出さんでええからな」  スサノオが睨む。


「日本の“農業の神”も、これにはため息やろ」  オオクニヌシが神妙な顔。「“米価暴落祈願”の絵馬が一気に増えそうや」


「農家ももう“天候”より“為替”に祈っとる」  イナリが苦笑。


---



【バズ神社・SNSと参拝の暴走】


「あと今日も“推し神社”でSNS炎上」  オオクニヌシが画面をタップ。「ピンク鳥居にイルミネーション、ぬいぐるみ参拝、“参拝者と狛犬シンクロ動画”がバズってトレンド入り」


「うちの分社も“フォトジェニックな神社”で紹介されたけど、願いごとが“推しチケ戦勝利”とか、“ライブ当選祈願”とか、時代やなあ」  イナリがしみじみ。


「“神社の境内でTikTokダンス撮る”って、どんな時代やねん」  タヂカラオが肩をすくめる。


「でも、来てくれるだけマシなんじゃない?」  アマテラスが遠くを見る。「何も祈らなくても、誰かが“来たい”って思うだけで、神は成り立つ。……多分」


「いや、“拝殿にラブライブうちわ”とか、さすがに困るやろ」  スサノオが苦笑。


「まあ、SNS時代の祈願って“映え”の延長やから」  イナリがぼやく。「でも、信仰心ゼロでも、足運んでくれるだけでありがたい、っていう複雑な気持ちや」


---



【地震予言・トカラ列島の群発・ご利益詐欺】


「地味に怖いのが、また“7月大地震説”が拡散してることや」  スサノオが真顔に戻る。「トカラ列島で群発地震、福島沖も揺れた。“神が警告した”ってデマ画像が出回ってて、もう何でも神のせい」


「“ご利益グッズ詐欺”も増えてます。“この護符で地震回避”とか、Amazonレビュー星1の嵐やで」  イナリがため息。


「神職さんも、どんどんクレーム対応業に」  オオクニヌシが、現場の声を代弁する。「“この御守り、効きませんでした”ってメールが月百件単位やって。神も商売も楽じゃないな」


「むしろ、“祈っても地震は止まらない”って答えが公式になりつつある時代やで」  タヂカラオがうなずく。


---



【大阪万博・工期遅延・不安】


「そういや、大阪万博の話題も出とるな」  イナリが新しいニュースタブを開く。「建設遅れで“神の奇跡を頼むしかない”って関係者が本気で言い出したらしい」


「万博も神頼みになったか……」  スサノオが呆れる。「それで間に合うなら、わし毎日、出張で踊るわ」


「神頼みで工期が縮まるなら、日本の土木技術は要らんやん」  タヂカラオが筋肉をアピール。


「今どきは、建設現場の安全祈願より“工程短縮祈願”やからな」  アマテラスが画面越しに笑う。


---



【能登復興・忘れられる被災地】


「能登半島の話題、もうニュースから消えかけてる」  オオクニヌシがぽつり。「復興支援イベントも減って、SNSでの拡散も途切れてきた。あれだけ“絆”だ“祈り”だと騒がれてたのに……」


「被災地の神様って、“災害のあとは忘れられる”のが常やからな」  イナリが苦い顔。「一年経ったら誰も触れん、って、毎度のことや」


「でもな、それでも毎日、誰か一人は手を合わせてくれるんや」  アマテラスが、ふっと目を細める。「神様って、それだけで、救われるときもあるんやで」



---


【神々、ちゃぶ台で“現代の祈り”を語る】


「結局さ、“祈る”って何なんやろな」  スサノオが、氷の溶けきった麦茶を眺めながら呟く。


「昔は、雨ごいでも五穀豊穣でも、誰かが“本気で願う”ことが“祈り”やった」  オオクニヌシが静かに言葉を返す。「今は“願いごと”が、“映え”や“つながり”に変わってしもうて、なんや時々、むなしくなるときもあるわ」


「うちなんか、DMで“アマテラス様に推し活成功を祈ってもらいました!”って感謝の画像もらうけど」  アマテラスが画面の向こうで照れ笑い。「そっちはそれで幸せなんやろなって思うし、神様も時代に合わせて役割が変わるんやろな……って」


「それでも“推し”と“祈り”の区別がつかなくなったら、神様の立場ないで」  イナリが扇子でテーブルを叩く。「わしがバズるのは百歩譲ってええけど、“副業の神”タグつけられると正直もやっとするで」


「ていうか、“副収入アップ祈願”って、もう神様やなくてFPやろ」  スサノオが噴き出す。「そのうち、“節税の神”とか“株価の神”とか祀られるんちゃうか?」


「現代人は、神を都合よく使い倒しとる」  タヂカラオがぶっきらぼうに言う。「でも、そんくらいの距離感がちょうどええのかもしれへんな。“ありがたい存在”じゃなく、“生活のとなり”にいるくらいで」


---



【“祈り”を失った国と、神々の孤独】


「でもな……」  オオクニヌシが、ゆっくり言葉を紡ぐ。 「ほんまに祈りを失った国って、何が残るんやろな。経済も政治も混乱しきって、信じられるもんがバズだけになったら、心のよりどころなんかどこにも残らん」


「それなりにバズっても、結局、誰も幸せにならんのかも」  イナリが、どこか達観した顔。


「神様のフォロワー数が数十万あっても、困ってる時に“いいね”だけじゃ心は救えん」  アマテラスが苦笑い。「やっぱり、“手を合わせてくれる人が一人でもいる”ってことが、一番うれしいんやで」


「時々、参拝者が“願い叶いませんでした”っておみくじ握りつぶして帰るやろ」  スサノオがぼそっと。「その後ろ姿見るたび、何もできん自分にモヤるで。せめて“今日は麦茶でも飲んで帰って”って、ちゃぶ台から手渡したいくらいや」


---



【“八百万の神”という矛盾と、無数の物語】


「八百万の神、言うても、いまやSNSの“いいね”より少ないかもしれん」  イナリがため息をつく。


「けど、無数の物語が生まれ続けるかぎり、神様も意味を失わずに済む」  オオクニヌシがタブレットを指でなぞる。


「今の時代は“信仰”じゃなくて“共感”やな」  アマテラスが遠くを見る。「“わかるよ”って気持ちを、祈りのかわりに流してる」


「でも“本気で願う”ことは、やっぱり特別なんやと思う」  タヂカラオが、拳をそっと握る。「せやからこそ、一人でもええから、誰かが本気で祈ったときは……わしら、全力で支えるつもりや」


「今どきは、“神様の公式LINEスタンプ”も出てるしな」  スサノオが茶化す。「時代やわ」


---



【神々、灼熱の夏に思うこと】


「……さて」  オオクニヌシが、ぬるくなった麦茶を一口飲み、ちゃぶ台を見つめる。


「今日の人間界も、やっぱり暑かったな」  アマテラスがぽつり。


「でも、暑さの中でしか生まれない祈りもある」  タヂカラオが笑う。「“倒れそうなときほど、誰かのことを思い出す”んや。……それだけで、十分ちゃうか」


「神々は、完璧じゃない。でも、見てる」  イナリが扇子を置く。「たまにツッコミ入れるだけやけど、それでも誰かが気づいてくれたら、ちょっと救われるわ」


「だから、今日もちゃぶ台で麦茶飲んでるだけや」  スサノオが天井を見上げる。


「たまには“ちゃぶ台返し”したいくらいやけどな」  全員が、少しだけ笑った。




熱波、政局、SNSバズ、祈りと現実逃避。

今日のニュースはどれも、どこか遠くて身近で、けれど一人ひとりの“願い”や“ため息”が積み重なってできている気がします。


神々にできるのは、ちゃぶ台の影で“見守る”だけ。

それが現代の“神の役目”なのかもしれません。

祈りも、バズも、政治も、猛暑も――全部ごちゃまぜで、それでも生きている世界を、

今日もだらだら、麦茶片手に眺めています。


明日も同じ場所で、また新しい“人間界のドラマ”を肴に、神々がちょっとだけ本気で語る――

そんな“八百万の夏”が、もうしばらく続きますように。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ