【第3話】2025年7月23日 「祈りよりエアコン、政局より麦茶、バズより暑さ」
暑さで神も溶ける。
今日の人間界は「熱中症」「政局ドタバタ」「SNS神社バズ」「地震」「ご利益詐欺」と、目まぐるしく色が変わるニュースの渦。
けれどちゃぶ台の上は相変わらず麦茶と扇子と、ため息で満たされている。
現実逃避? それも神々の特権なのかもしれません。
祈りよりクーラーが優先される時代、八百万の神々は何を思うのか――。
■本日のトピックス一覧
1. 記録的猛暑と参拝危機──神頼みよりエアコン!(→【神々のちゃぶ台、灼熱モード】〜【熱中症・参拝危機と“冷房神話”】)
2. 神職の苦労と“ご利益グッズ”時代(→【参拝の現場・神職の嘆き】)
3. 政局混乱・石破内閣/AI官僚(→【政局崩壊・石破内閣の苦悩】)
4. 日米貿易・トランプ/農業神の嘆き(→【日米貿易・トランプ大統領】)
5. SNSバズ・推し神社・ご利益詐欺・地震デマ(→【バズ神社・SNSと参拝の暴走】〜【地震予言・トカラ列島の群発・ご利益詐欺】)
6. 万博・能登復興(→【大阪万博・工期遅延・不安】【能登復興・忘れられる被災地】)
7. 現代祈願・“八百万の神”という矛盾(→【神々、ちゃぶ台で“現代の祈り”を語る】〜【“八百万の神”という矛盾と、無数の物語】)
8. 灼熱の夏の神々の思い(→【神々、灼熱の夏に思うこと】)
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【神々のちゃぶ台、灼熱モード】
ちゃぶ台の上には、氷がとけかけた麦茶と、汗だくの神々。 進行役のオオクニヌシ命は、タブレットをあおぎながら深く息を吐いた。
「定例、始めます。……って、みんな顔が死んでる」 「死んでない、溶けてるんや」 イナリ神は座布団を団扇がわりにパタパタ。「今日な、北海道の美幌で38.2度やって。オレ、もう神様やめて涼しい物置になりたいわ」 「神社もえらいことになってるで」 スサノオ命が麦茶を一気飲みしながら呻く。「“祈るより冷房”がトレンドやぞ。本州なんか“参拝控えてください”って神主から言われるレベル。神頼みよりエアコン頼み、やな」 「うち、クーラーの女神に転職しようかな」 モニター越しにリモート参加のアマテラスが、浴衣姿で扇風機を抱えている。「本日、太陽神のせいで冷房消費量が前年比150%増です、とかニュースになってた。責任感じるわ~」 「感じて、どうすんねん」 イナリがぼやく。「現代のご利益は冷房直結や。“エアコンに祈ったら涼しくなる”って、本末転倒やろ」
「いやほんま、“神より冷房”や」 スサノオが頭を抱える。「“氷室祭”が本気で祈られるの、平安時代以来やないか? お祓いより、クーラーメンテナンスのほうが先やで」
「しかも最近、“冷房の精霊”とか言って勝手に新キャラ作られとる」 タヂカラオが苦い顔。「わし、“筋肉神”やのに、“冷却系パワー担当”にされてるやん。そもそも神殿は風通し重視で設計したのに……」
「しかも冷房の故障、神主さんにクレームが来るんやって」 イナリが、最近のSNS相談スレを読み上げる。 「“神主様、境内のエアコンが壊れて涼しくありません。なんとかしてください”──って、電気屋やないっちゅうねん!」
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【熱中症・参拝危機と“冷房神話”】
「実際、熱中症搬送2000人超えたって」 オオクニヌシがタブレットを操作しながらつぶやく。「“麦茶祈願セット”が神社グッズとして売られ始めたで。“ご利益・冷却パック”入りや」 「何やそれ、新興宗教か」 スサノオが笑う。
「今年の夏詣、SNSで“暑さ耐久チャレンジ”タグが流行っとる。“35度超えの参拝で願い事が一個叶う”って、どこの修行や……」 イナリがため息。
「逆に冷房効いた自室で“リモート参拝”動画も伸びてるわ」 アマテラスがスマホを見ながら誇らしげ。「“画面越しに神殿参拝できる”って……うち、もはやVTuberじゃなくてIoT神社やで」
「この前、“冷房が効いてる神社”特集をテレビでやってたな」 スサノオが苦笑い。「御朱印より“エアコンの効き”で参拝ランキングされてるって、もう何やねん」
「本来、神事は自然の恵みと対話する場やったのに、“熱波耐久イベント”化しとる」 タヂカラオが肩を落とす。
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【参拝の現場・神職の嘆き】
「神職さんも大変やで」 イナリがスマホ画面を見せる。「“直会”で配るのが“お神酒”から“塩タブレット”に変わってるらしい。“神事後は冷房室で休憩を”って公式アナウンスや」 「熱中症対策で“氷の御守”売り切れ続出やで」 オオクニヌシが付け加える。
「“神に祈るより保冷剤”がご利益や」 アマテラスが、どこか誇らしげに言う。「そろそろ“冷房の神様”を本格的に祀ろうか」
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【政局崩壊・石破内閣の苦悩】
「で、ニュース2本目。政権やばい」 オオクニヌシが淡々と次の資料を映す。「石破内閣、支持率22%。与党は分裂寸前、“辞任不可避”って見出しがトップや」
「これが人間界の夏バテやな」 イナリ神が薄ら笑い。「“神意を問う”って言いながら、神社にだけは予算まるごとカット。神も呆れとるで」
「俺、また“荒ぶる改革神”って新聞で使われたわ」 スサノオが机を指で叩く。「名前だけ借りて何もしないパターン多すぎるやろ。政治の“ご加護”言う前に、まず水分補給とれや」
「新しい神、誕生しそう。“政局安定の神”とか」 タヂカラオがぼそっと呟く。「いや、もうそういうのはAIに任せようや」
「なんや最近、“AI官僚”とか“バーチャル首相”とか本気で議論されとる」 アマテラスが苦笑い。「神でもAIでもいいから、“責任だけは人間がとれよ”って思うで」
「もう政治の世界、祈るより氷嚢配っとけ」 イナリがぼそり。
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【日米貿易・トランプ大統領】
「三つ目は国際ニュース。日米で“貿易合意”や」 イナリが資料を広げる。「自動車関税が15%まで下がるらしいけど、“実は日本側は農産品で大損”って話。ほんま、貿易も神頼みになってきたな」
「アメリカの“神の名を借りたディール”もすごいで? “トランプの奇跡”とか“米国繁栄の女神”とか」 アマテラスが苦笑。「なんで政治も商売も、最後は神に話を持っていくんやろ……」
「それで“日米祈願セット”とか出さんでええからな」 スサノオが睨む。
「日本の“農業の神”も、これにはため息やろ」 オオクニヌシが神妙な顔。「“米価暴落祈願”の絵馬が一気に増えそうや」
「農家ももう“天候”より“為替”に祈っとる」 イナリが苦笑。
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【バズ神社・SNSと参拝の暴走】
「あと今日も“推し神社”でSNS炎上」 オオクニヌシが画面をタップ。「ピンク鳥居にイルミネーション、ぬいぐるみ参拝、“参拝者と狛犬シンクロ動画”がバズってトレンド入り」
「うちの分社も“フォトジェニックな神社”で紹介されたけど、願いごとが“推しチケ戦勝利”とか、“ライブ当選祈願”とか、時代やなあ」 イナリがしみじみ。
「“神社の境内でTikTokダンス撮る”って、どんな時代やねん」 タヂカラオが肩をすくめる。
「でも、来てくれるだけマシなんじゃない?」 アマテラスが遠くを見る。「何も祈らなくても、誰かが“来たい”って思うだけで、神は成り立つ。……多分」
「いや、“拝殿にラブライブうちわ”とか、さすがに困るやろ」 スサノオが苦笑。
「まあ、SNS時代の祈願って“映え”の延長やから」 イナリがぼやく。「でも、信仰心ゼロでも、足運んでくれるだけでありがたい、っていう複雑な気持ちや」
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【地震予言・トカラ列島の群発・ご利益詐欺】
「地味に怖いのが、また“7月大地震説”が拡散してることや」 スサノオが真顔に戻る。「トカラ列島で群発地震、福島沖も揺れた。“神が警告した”ってデマ画像が出回ってて、もう何でも神のせい」
「“ご利益グッズ詐欺”も増えてます。“この護符で地震回避”とか、Amazonレビュー星1の嵐やで」 イナリがため息。
「神職さんも、どんどんクレーム対応業に」 オオクニヌシが、現場の声を代弁する。「“この御守り、効きませんでした”ってメールが月百件単位やって。神も商売も楽じゃないな」
「むしろ、“祈っても地震は止まらない”って答えが公式になりつつある時代やで」 タヂカラオがうなずく。
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【大阪万博・工期遅延・不安】
「そういや、大阪万博の話題も出とるな」 イナリが新しいニュースタブを開く。「建設遅れで“神の奇跡を頼むしかない”って関係者が本気で言い出したらしい」
「万博も神頼みになったか……」 スサノオが呆れる。「それで間に合うなら、わし毎日、出張で踊るわ」
「神頼みで工期が縮まるなら、日本の土木技術は要らんやん」 タヂカラオが筋肉をアピール。
「今どきは、建設現場の安全祈願より“工程短縮祈願”やからな」 アマテラスが画面越しに笑う。
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【能登復興・忘れられる被災地】
「能登半島の話題、もうニュースから消えかけてる」 オオクニヌシがぽつり。「復興支援イベントも減って、SNSでの拡散も途切れてきた。あれだけ“絆”だ“祈り”だと騒がれてたのに……」
「被災地の神様って、“災害のあとは忘れられる”のが常やからな」 イナリが苦い顔。「一年経ったら誰も触れん、って、毎度のことや」
「でもな、それでも毎日、誰か一人は手を合わせてくれるんや」 アマテラスが、ふっと目を細める。「神様って、それだけで、救われるときもあるんやで」
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【神々、ちゃぶ台で“現代の祈り”を語る】
「結局さ、“祈る”って何なんやろな」 スサノオが、氷の溶けきった麦茶を眺めながら呟く。
「昔は、雨ごいでも五穀豊穣でも、誰かが“本気で願う”ことが“祈り”やった」 オオクニヌシが静かに言葉を返す。「今は“願いごと”が、“映え”や“つながり”に変わってしもうて、なんや時々、むなしくなるときもあるわ」
「うちなんか、DMで“アマテラス様に推し活成功を祈ってもらいました!”って感謝の画像もらうけど」 アマテラスが画面の向こうで照れ笑い。「そっちはそれで幸せなんやろなって思うし、神様も時代に合わせて役割が変わるんやろな……って」
「それでも“推し”と“祈り”の区別がつかなくなったら、神様の立場ないで」 イナリが扇子でテーブルを叩く。「わしがバズるのは百歩譲ってええけど、“副業の神”タグつけられると正直もやっとするで」
「ていうか、“副収入アップ祈願”って、もう神様やなくてFPやろ」 スサノオが噴き出す。「そのうち、“節税の神”とか“株価の神”とか祀られるんちゃうか?」
「現代人は、神を都合よく使い倒しとる」 タヂカラオがぶっきらぼうに言う。「でも、そんくらいの距離感がちょうどええのかもしれへんな。“ありがたい存在”じゃなく、“生活のとなり”にいるくらいで」
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【“祈り”を失った国と、神々の孤独】
「でもな……」 オオクニヌシが、ゆっくり言葉を紡ぐ。 「ほんまに祈りを失った国って、何が残るんやろな。経済も政治も混乱しきって、信じられるもんがバズだけになったら、心のよりどころなんかどこにも残らん」
「それなりにバズっても、結局、誰も幸せにならんのかも」 イナリが、どこか達観した顔。
「神様のフォロワー数が数十万あっても、困ってる時に“いいね”だけじゃ心は救えん」 アマテラスが苦笑い。「やっぱり、“手を合わせてくれる人が一人でもいる”ってことが、一番うれしいんやで」
「時々、参拝者が“願い叶いませんでした”っておみくじ握りつぶして帰るやろ」 スサノオがぼそっと。「その後ろ姿見るたび、何もできん自分にモヤるで。せめて“今日は麦茶でも飲んで帰って”って、ちゃぶ台から手渡したいくらいや」
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【“八百万の神”という矛盾と、無数の物語】
「八百万の神、言うても、いまやSNSの“いいね”より少ないかもしれん」 イナリがため息をつく。
「けど、無数の物語が生まれ続けるかぎり、神様も意味を失わずに済む」 オオクニヌシがタブレットを指でなぞる。
「今の時代は“信仰”じゃなくて“共感”やな」 アマテラスが遠くを見る。「“わかるよ”って気持ちを、祈りのかわりに流してる」
「でも“本気で願う”ことは、やっぱり特別なんやと思う」 タヂカラオが、拳をそっと握る。「せやからこそ、一人でもええから、誰かが本気で祈ったときは……わしら、全力で支えるつもりや」
「今どきは、“神様の公式LINEスタンプ”も出てるしな」 スサノオが茶化す。「時代やわ」
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【神々、灼熱の夏に思うこと】
「……さて」 オオクニヌシが、ぬるくなった麦茶を一口飲み、ちゃぶ台を見つめる。
「今日の人間界も、やっぱり暑かったな」 アマテラスがぽつり。
「でも、暑さの中でしか生まれない祈りもある」 タヂカラオが笑う。「“倒れそうなときほど、誰かのことを思い出す”んや。……それだけで、十分ちゃうか」
「神々は、完璧じゃない。でも、見てる」 イナリが扇子を置く。「たまにツッコミ入れるだけやけど、それでも誰かが気づいてくれたら、ちょっと救われるわ」
「だから、今日もちゃぶ台で麦茶飲んでるだけや」 スサノオが天井を見上げる。
「たまには“ちゃぶ台返し”したいくらいやけどな」 全員が、少しだけ笑った。
熱波、政局、SNSバズ、祈りと現実逃避。
今日のニュースはどれも、どこか遠くて身近で、けれど一人ひとりの“願い”や“ため息”が積み重なってできている気がします。
神々にできるのは、ちゃぶ台の影で“見守る”だけ。
それが現代の“神の役目”なのかもしれません。
祈りも、バズも、政治も、猛暑も――全部ごちゃまぜで、それでも生きている世界を、
今日もだらだら、麦茶片手に眺めています。
明日も同じ場所で、また新しい“人間界のドラマ”を肴に、神々がちょっとだけ本気で語る――
そんな“八百万の夏”が、もうしばらく続きますように。