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第 七 章 遺体安置所

第 七 章


姫魂冥衣花と遺体となった香月あさみ(享年21)はまだ遺体安置所にいた


冥衣花は言った

「あなたは近いうち結婚する事になっていて、勤務している保育園にもそのことは

 伝えてあり、結婚のタイミングで退職する予定でいた

 

 お腹には結婚相手、阿部春翔(37才)(あべ はると)との間でできた赤ちゃんもいた


 しかし、阿部春翔は二人の男の子の父親で既婚者であることが判明した

 そのときあなたは妊娠3ヶ月

 

 そこで首をつってしまおうと」


「さっきっから最初から最後まで全然違うんだけど、この話どこまで聞いてたらいい?

 阿部春翔って誰よ

 たしかに、その名前はなんとなく不倫しそうなクズ男の印象を抱くのよね

 でもほら実在してない上にわたしと関係なかったら意味ないじゃない?


わたしに彼氏いたのは2年近く前なんだしさ、ほら、保育士って男性ウケする職業

じゃない?

でも出会いがないのよ。それって就職してから気がついたわたしの方にも

責任はあるとは思うよ


送り迎えに来る園児のお父さんと仲良くおしゃべりしたりはするよ、

でも流石にそこは除外すべきじゃない」とあさみは言った


「ではお聞きしますが、下腹部がすこし膨らんでいるように見えるのは何故なのですか

  それと胸が張っているようにも見えます」


「胸については目をつぶろう。でもわたしの下腹部についての発言は

 ほんとだったらあなた、とっくに死者に呪われてるのよね

 

 ただし、さっきも言ったようにわたしって、ほら死ぬの初めてじゃない

 呪い方を知らないのよ

 妊娠について知識不足なのは女子高校生だからっていうことで多めに見るとしてもね」


「2年近く彼氏がいないとおっしゃいましたが、先月男性と肉体関係をお持ちですね

 一度だけ」


「肉体関係を持つ間柄に一瞬なりかけたってだけ

 そういうことは一切してない

 

 でもほんとにそこだけ微妙に当たっても意味ないし、それは色々あったの

 この当てっこゲームいつまでも続けるよりは、わたしからお話しした方が

 早いと思うのよね

 もうあなたは霊視みたいなことできないってわかったしさ」


めいかは聞いた

「ではお聞きしますが、2ヶ月前から月経が来ていないのはなぜなのです」


「これまだ続ける?

 

 生理来てないのは、中学の時からずっと生理不順の体質だからだしさ、

 2ヶ月前から来てないって言ってるけど、さっきわたしのこと妊娠3ヶ月

 って言ってたわけじゃない?

 ね、計算合わないしさ

 

 そんなにわたしが子持ちの既婚者と気が付かないで避妊もせず

 結婚だまされる女の子に見える?

 

 ショックなんだけど。そんなちょろくはないのよ

 ほら、あなたと違って中学から大学まで共学だったしね」


めいかはあさみに言った

「あなたのお話をお聞きします」

「やっと話の核心に迫れるわね

 あなたは死者と会話ができる

 

 わたしの代わりに恨みを晴らしてくれたら

 わたしは永久に安らかな眠りにつける

 

 お願いできるよね。だからわたしの棺の前で足が止まり

 全裸のわたしを引き出した」


「あなたの代わりに恨みをはらすかどうかは、あなたの恨みの内容によります

 以前、わたしが亡くなった女性の代わりに恨みを晴らした理由は、       

 その女性が妊娠させられた男性が実は既婚者だったからです

 男性は37歳でした」


あさみは言った

「さっきわたしに言ったのとほぼ同じ内容なのよね

 だから混乱して間違えちゃったのね

 

 でも若い女性が命を断つ理由はその一種類だけじゃないの

 クズ男がきっちり37歳でそれするとも限らないしね」


「時間があまりありません。自分で命をたった状況でも警察は

 あさみさんを司法解剖に回します

 

 この病院でそれはやってない。そして肉体が失われるとあなたと

 おしゃべりができなくなる

 わたしはこれから両親の結婚記念日のため、叙々苑にお肉を食べに行きます

 

 父はわたしがいつも遺体安置所にいるのを知っているので

 いつ父が部屋に入ってくるか

 そのときは即座に死んだふりを」

 

「きのう死んでっから別にそれはいいんだけど

 じゃあどうする

 わたしの恨みを晴らすの時間かかるよ

 男を駅のホームで後ろから蹴っ飛ばす、みたいには行かないのよ」

 

冥衣花は考えた


「蹴っ飛ばしたのではなく、線路に引き込まれるお手伝いをしたのです

 電車を待つあの男性の耳元で、そのとき思いついた一句を詠んだだけ


 その一句というのは」


     みずからの

     墓石に咲くは

   彼岸花 



「めいかちゃん、まじでそういことしてんの

 引くんだけど。わたしのはそこまでしなくていいから

 急になんか怖いじゃんか」


「わたしが服を明日用意する

 それを着て二人で逃げます」


あさみは言った

「きのうから死んでっから身体とか動かないんだけど」


姫魂冥衣花はあさみに近寄り彼女の右の鎖骨をしばらく何度か押していた


「ねえ、いつまでそんなとこ押してんの、動けないんだけど」


「左の鎖骨と間違えた。先に服のサイズを教えて」


あさみは言った

「ねえ、疲れるのよ、きのう死んでるしさ

 Sサイズでいいよ。かわいい服にしてね

 女子高生が着るような安っぽいやつじゃなくて大人の女性が着るような上品なやつね」


めいかは聞いた

「胸のサイズは?」


「 C 」


「Bですね」


「Bでいい」





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