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第 壱 章 部活巡り

第 壱 章


姫魂冥衣花(ひめたま めいか)は相手が差し出したクイーンを自分のビショップで

取るべきか考えていた


持ち時間の残りは7分、相手は4分

クイーンを奪えば5手先でチェックメイトにできる


しかし相手はチェス部の部長で東京大会優勝経験者

そしてチェス日本ランキング100位以内を2年間維持している実力者


クイーンを無防備にそのまま差し出したのは意味があると考えるのが普通だ

そのため冥衣花は何度も五手先のチェックメイトに見落としがないか

探し続けなければならなかった


一方、チェス部部長の時雨理沙しぐれ りさ(17才)は持ち時間の時間配分を

冥衣花に序盤から狂わされた動揺から気持ちが焦り、自分のクイーンを

最も置いてはいけない場所に無意味に置いた事を後悔していた


冥衣花はクイーンをそのまま取っていいかどうかの判断がつかない


冥衣花はチェス盤越しの時雨理沙を見た


理沙の視線はチェス盤の上で動きをほぼ止め

横で見守っている部員さんに視線がそれた

その上持ち時間を示す時計には一度も視線が行っていない


それを見た冥衣花はビショップを左手で持ち相手のクイーンを

掴んで盤面から退場させ、その場所に自分のビショップを置いた


部長はそれを見てキングを横に倒し、負けを認めた



4月になって高校に新入生が入り入部希望者が来た

その頃入る部活を探していてチェス部の様子を知りたい、と言ってきたのが

姫魂冥衣花だった

黒い長めのボブの髪型に黒いめがねをかけたおとなしそうな

新入生のめいかに、部長の時雨理沙は親切に応対し部員同士の対局を見学させた


彼女はめいかに話しかけた

自由に紅茶やコーヒーを飲んでいいこと

エスプレッソマシーンがあること、お茶菓子をいつでも食べていいんだよ、と

「部費の半分はこういうのに使ってる

めいかちゃん、チェスのルール分かる?」


めいかは理沙に言った

「有限確定完全情報ゲームの中で、チェスの変数は多い方ですか?」


理沙は質問の中の単語、チェス、の部分しか理解できなかった

実際にやって見ましょう、と言うことで

さっき部員さんの対局を見てルールを覚えた冥衣花と時雨理沙との対局が始まった


ただし先ほどの対局で、アンパッサンが行われなかったのでめいかはその手法が

あること自体把握していない


理沙は思った。単純に私が勝ってめいかさんが負けてもチェスの面白さは分からない

複雑な局面に持っていって、最後は私が負けよう、と

最初の10手を動かしてみるまでは


理沙は自ら複雑な局面に持っていったつもりが

気がついたら今まで一度も見たことのない奇妙な状況になっていて、次で何を動かしても

自分が決定的に不利になると気がついた

それもかなりの序盤の段階で


そこから実力を出そうとしたが、もうとっくに遅かった


素直に負けを認め、面白いと思ったら入部してほしい、チェスは奥の深いゲームだし、

部員のみんなも仲良いし、あなたの他にも新入生が3人いるよ、と言った


冥衣花は言った

「わたしは最初チェスは運の要素のないゲームだと思ってました

トランプや麻雀と違って

でも実際やってみると、相手の様子から得られる情報が多い

精神状態が動かす駒に大きく影響をあたえているように思う

 その手に何分かけたか、視線、コーヒーを飲むタイミング、時間の確認、

駒を置く手つき、取る手付き。それから相手の表情も

 

 このゲームは心理戦のように感じます

わたしはむやみにこころを読もうとされたくない」


冥衣花はチェス部に入るのを辞退した

 


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