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034 能力テスト

 殺傷能力のない、空気の力で小さな弾丸を撃ち出すオモチャの銃。これならキャロルちゃんの能力を持ってしても然程の威力にならないはず。そう思って購入してきて、オルカ商会が保有する屋内の訓練所で訓練再開と思ったのだけど。


 ――――パスッ……カンッ……。


「普通だ……」

「普通ね……」

「普通ですね」

『普通だぁ~』

「う~……?」


 普通。あまりにも普通。私達が撃った時と全く変わりなく、普通の威力の弾が発射されるだけ。オルカ商会の警備兵さんが隣で射撃訓練をしていたのだけど、何をやっているんだこいつらはみたいな目で見られてしまったわ。何をやっているのかは、私達のほうが知りたいわね。


「……つまり22口径のペイント弾が威力最小ってことか?」

「そう、なるかしら……」

「22口径のペイント弾ですら、常人が当たったら大惨事な威力だぞ……」

『――能力の解析に失敗しました』

『ん~……。どうして能力が解析出来ないんだろう……』


 オモチャの銃では、オモチャと同じ威力しか出ない。22口径の銃だと、通常ではありえない威力が出てしまう。もしかしたらキャロルちゃんの威力増加現象は、銃かどうかは関係なく殺傷能力に依存しているのかしら。思えばナイフとフォークも威力が増加した武器に該当するかもしれないわね。キャロルちゃんが『これを使えば相手を殺せる』と思ったものは、全て威力が増加するのかもしれないわ。


「キャロルちゃん。オモチャの空気銃であっても、場合によっては相手を死に至らしめる可能性があるわ」

「は、い?」

「これね、当たると結構痛いらしいのよ。目隠しをした人間にこれを撃ち込んで、今お前の腹に撃ったぞ、血が流れているぞと言ってそう思い込ませると、出血していると錯覚して最終的には死に至ったなんて恐ろしい実験記録が残っているの」

「わあ……」

「つまり、人を殺せる武器ということよ」

「それは状況が限定的過ぎるだろ……」


 これでキャロルちゃんの認識が『非殺傷のオモチャの銃』から『殺傷能力を有したオモチャの銃』に変わったはず。この状態で撃ってもしも威力が増加したなら、キャロルちゃんの能力は……。


「さあ、もう1回撃ってみて」

「はい」


 ――――ボンッ!! カァン!!


「!?」

「あっ」

「はぁ!? 威力が上がった!?」

『どういうこと!?』


 やっぱり、そういうことね。いきなり威力が増加したら、皆驚くわよね。隣で訓練していたオルカ商会の警備兵さんも驚いて、思わずこっちを見てしまったものね。キャロルちゃん自身も驚いて『あっ』と声が漏れてしまっているし。


「殺傷能力を有すると認めた武器を強化する能力」

「ほええ……」

「なるほど。認識が変わったから威力が増加したということですか」

「そんな無茶苦茶な……」

「そんな無茶苦茶な能力なのよ。ナイフとフォークからしてそうだったもの。私は普通の人よりちょっとだけ体が丈夫で、50口径のリボルバーで頭を撃たれてもちょっと痛いぐらいで済む程度だわ。でもキャロルちゃんにフォークで刺された時は、ざっくりと刺さったもの。キャロルちゃんが衰弱していて手足の一部が欠損している状態でよ?」

『そういえば、フォークで怪我してた……!』


 これで確信に変わったわ。キャロルちゃんが『これで殺せる』と思ったものは、なんでも威力が強化される。これがキャロルちゃんの能力の1つ(・・)


「間違いなくこれが、能力の1つ(・・)ね」

「は? 1つってどういうことだ!?」

「キャロルちゃんは至近距離でショットガンを撃たれても弾くぐらい頑丈になったわ。恐らく今はそれより頑丈よ」

「確かに最初の頃はシスティーナ様に蹴られただけで腕が折れていましたが、今は痣にすらなりませんね……」

「自分の肉体が相手を殺せる武器だと認識したから、その分だけ肉体を強化しているのかもしれないわ。もしくは別の能力による強化なのか、これは確証がないわね」


 キャロルちゃんは恐らくまだ能力の有している。肉体がどんどん頑強になっているのは、別の能力による作用かもしれない。これに関してはまだわからないわね。


『そしたら、キャロルちゃんは眼力が強いから、目で相手を射殺せちゃうかもしれないね!』

「おいおい、それは流石に……」

『英雄の伝説とかによくあるやつで、あまりの眼力の強さに相手が恐れ慄いて泡を吹いて倒れた、なんてあるじゃない! 目も十分殺傷能力があるってことだよね!』

「まあ、そういう意味ではそうかもしれないが……」

「あ~……」

「…………キャロルちゃん?」

「キャロル、どうかしましたか?」


 目の殺傷能力、確かにあるのよね。心臓が弱い人なんかは、極度の恐慌状態に陥った時、相手と目が合ってしまっただけで心臓が止まってしまった……なんてことが実際にあるぐらいだもの。そういう意味で、目も殺傷能力があるわね……。


「目が、良くなった気が、します」

「キャロルちゃん。望遠装備なしで、射撃訓練所の一番奥にある丸印の切れている方向が読めるかしら? 前は見えなかったわよね?」

「ええと……上から、右、上、下、下、左下――――最後が、左です」

『え? 合ってるの?』

「今望遠スコープで見ているが、合ってるな……」

「合っているわね……」


 そう、目も強化対象になるのね……。わっ、キャロルちゃんとちょっと目が合っただけで、少しドキッとしちゃったわ。イヴちゃんは心が穏やかになるネックレスのおかげで動じないみたいだけど、他の人には刺激が強いかもしれない。


「エルちゃん」

『うん? なぁに、お姉ちゃん』

「メガネが……欲しいわね……」

『なんで? どういうタイプの?』

「キャロルちゃんと目が合ったらわかるわ」

『キャロルちゃんと目が合ったら? なん、ひっ……ほへっ……!!』

「はう……?」


 これで殺意が籠もってる目線をぶつけられた日には、平常心では居られそうにはないわね。イヴちゃんはキャロルちゃんと見つめ合ってもニコニコとしていられるけど、この目は強すぎるわ。自然な装いで目の力を隠せるメガネが必要よ。


「こう、自然な感じに、目の力を隠せるようなデザインのものが欲しいわ……」

『前に作った、自動遮光機能とカラーレンズみたいな可愛いメガネで良いかなぁ!?』

「確かに閃光弾対策も、あったほうが良いわね……」

「ああ、そういや閃光弾を見る訓練とかしてないよな。あっちに何もない部屋があったし、そこでやったほうが良いだろ」

「せんこう、だん……?」

「激しい光で相手の目を潰す、非殺傷のグレネードですよ。相手が目をやられている間に無力化する武器です」

「ほええ……」


 閃光弾についての訓練をやってから、キャロルちゃんのメガネ云々は決めましょうか。これを採用していない部隊はないでしょうし、ボディガードとなると常に襲撃される側。かなりの確率で使われることになるはずだものね。慣れておいたほうが良いわ。


「あの部屋は出入り口が4つあるわ。頃合いを見計らって閃光弾を投げ入れるから、その後突入してきたゲイルを迎撃出来れば勝ちよ」

「なんで俺なんだよ!」

「なんとなく……?」

「なんとなくで全身強化兵器ちゃんと戦いたくねえ!」

「3日前まではやっていたじゃない」

「あの時はここまで強いって知らなかったからだ!!」

「じゃあゲイルが根性なしだから、私が突入するわね」

「あ゛あ゛!?」


 それじゃあ早速移動して、閃光弾訓練をやりましょうか。


「やってやるよ!! 閃光弾で目が潰れた相手に負けるわけねえだろ!!」

「じゃあ、ゲイルが突入役をお願いね。さあ、キャロルちゃん。あの部屋の中で待機していてね。迎撃に使うのはオモチャの空気銃よ」

「はい!」


 やっぱりゲイルが突入役をやってくれるそうよ。それじゃ、今から投げ入れるわよーなんて甘っちょろいことは言わず、キャロルちゃんが入った瞬間に投げ入れちゃいましょう。


「ゲイル、左手方向に回って。すぐ投げ入れるから」

「は? あ、ああ……。酷いなお前!?」


 開始直後が一番身構えていない瞬間だもの、ここを突かない手はないわよね。レネガル総隊長にも何回かやられて、悔しい思いをしたわ……。それじゃ、キャロルちゃんが部屋に入ったと同時に投入よ。


「わぁあ!!」

「ゲイル、突入」

「おっしゃ!! 任せろ!!」


 ごめんなさいね、キャロルちゃん。不意打ちなんて卑怯なことをして……。でもこれはもう、毎回恒例の儀式みたいなものだから……。


 ――――ボンッ!! ボンボンッ!!


「ぎゃあああああああああああ!! うわ、うわああああああああああああ!! いってえええええええええええええ!!」

「ゲイル様、無力化しました!」

「あ~……」


 あら、ごめんなさいゲイル。キャロルちゃんに閃光弾が効いてないみたいだわ……。



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