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010 能力の話

◆ ◆ ◆


「――とにかく! あれをヒルガオ商会が単独で保有しているなど危険過ぎると言っているのだ!」

「じゃあなんでぇ、この前ベルリーネでやったオークションの時にそう言えばいいじゃねえか。なぁ? エメラルダとグルになって動かねえってわかってるもん売りつけた分際で、動くようになったから今度はうちにも使わせろぉ? 権利があるぅ? 舐めてんじゃねえぞクソガキィ!!」

「静粛に、静粛に」

「退屈だわ……」

『お姉ちゃん、思ってても口に出しちゃダメ』

「うぅ~ん……」


 えーっと……まず昨日の出来事からかな。お姉ちゃんが昨日撃ったエネルギーライフルは、魔獣の群れを一撃で撃退した……というより、魔獣がその威力に怯えて回れ右をして帰って行っちゃった。

 着弾点は直径20メートルぐらいがクレーターになってて、地面は焼け焦げてガラス化。あまりの威力に私もお姉ちゃんも驚いちゃった。あれで威力を20%まで絞ってあったんだもんね。

 

「エメラルダ会長、動かないとわかっているものを売ったのは事実なのだね?」

「ええ、しかし語弊がありますね。こちらの言い分としては、動くとは一言も言っていませんし、それにオークションに出した商品の通り、スクラップ品です。マギアとは書かれていない」

「うぅむ、なるほど……。つまり、エメラルダ商会をはじめとする8つの商会の意見としては、その商品がただのスクラップであり、まさか動くマギアだとは思いもしなかった。よって、本来の商品価値であるマギアの値段として再度オークションに出品したいと。もしくは共同使用権を認めて欲しいということだな」

「ざっけんなクソボケカスがぁ!!」

「シャーク会長、言葉を慎むように。これ以上の暴言は認められない」


 それと後は、賢者の大隊っていう傭兵団の一部(・・)が離反行為を起こして拘束された件。こっちは即有罪、終身奴隷落ち。終わり。ちなみになぜかかわからないけど、皆男性としての機能がなくなった状態で拘束されたらしいよ。怖いね~。


「商会長ではないけれど、発言よろしいかしら」

「ん? なんだね君は」

「こ、これ、システィーナ……!!」

「あのマギアのパイロットのシスティーナ・リリーです」

「あの女が……?」

「ずいぶん若いように見えるが……」

「見たことあるか?」

「知らねえな……」

「静粛に、静粛に!! うむ、マギアのパイロットというのが本当であれば、一応話を聞いておく必要があるだろう。ヒルガオ会長、彼女がパイロットで間違いありませんかな?」

「うぅ~む……。そうじゃ、この者がパイロットじゃ」


 あ~あ、お姉ちゃんったら、一発でこの茶番劇を終わらせるカードを切るつもりだ~。そうだよね、だってあのマギアはお姉ちゃんの作った精錬魔石がないと、そもそも動かないもんね。


「皆さん、ケーキは食べたことがありますか?」

「不要な発言は控え」

「ケーキ、食べたことはありますか?」


 あ~……。そっちか~……。


「まさか食べたことがない人、居ませんよね? 居たとしてもケーキぐらいわかるはずだわ。とっても甘くて、とっても美味しい。そしてなによりも……とっても高い」

「システィーナ、あまり不要な発言は……」

「砂糖を売った。ミルクを売った。上に乗せるいちごを売った。それらを買ってきてケーキを作ったら、それぞれの材料を売ったお店の人達が『自分の店の材料で作ったものだから、一切れ食べさせろ』と言ってくる」

「むっ……」


 お姉ちゃん、私の復活パーティをするんだーって言ってたから、頭の中がケーキのことでいっぱいなんだぁ……。そうだよね、早く帰ってケーキ食べたいよね!!


「ケーキ以外にしましょうか。家を作った材料を売った商会は、材料が使われた家の一角に住んでも良いの? お肉を売った商会は? もしそれをステーキにして食べた人が居たら、後からステーキにした差額分を食べた人から毟り取れるの? こんな主張が認められたら、この国の商売はおしまいですね。明日から何も売れないわ。怖くて何も買えないもの」

「ふぅむ……。なるほど……」

「その材料がマギアだとわかっていれば」

「それを見抜けなかった間抜けが悪いのではないかしら? 貴方、本当に商人?」

「なんだと……」


 いちごのケーキがいいなぁ~。ラズベリームースのやつも好き! イヴちゃんが作ってくれるラズベリームースケーキが、すっごく美味しいんだよね~。


「物の価値がわかりませんでした。高いものだったみたいなので、やっぱり高い値段で売らせてください。それかその差額分を自分にも使わせてくださいって、私には聞こえるわ」

「はっ! まさにその通りのことしか言ってねえな、エメラルダは!」

「飼い犬に手を噛まれたばっかりで機嫌が悪いのでしょうけど、その八つ当たりをされても困るわ。これ以上、自分の無能さを露呈させない内に手を引いてはいかが?」

「き、さま……!!」

「静粛に、静粛に!! うむ、双方の言い分はわかった。エメラルダ会長、ヒルガオ会長、何かこれ以上言いたいことはありますかな?」


 あ、お姉ちゃんが私の日記持ってるんだった。後で返してもらお~っと。バックアップを取った情報と今の自分の記憶が合っているか、ちゃんと確認しなきゃ。それまで暇だから、能力も使って遊んじゃおうかな~。ハロー・トリプルワールド!!


『WWW、起動。こんにちは、エルエニア様。何か調べたいことはございますか?』

「あら、エルちゃんそれは何かしら、お姉ちゃん知りたいわ」

『お姉ちゃん今はダメだよ!! 変な人だと思われちゃうから!!』

「うぅん~……」

『【今起こっている裁判 ヒルガオ商会 勝率】で検索中……。1件の結果が見つかりました。約14分後にエメラルダ商会の主張が却下され、ヒルガオ商会が勝利します』


 そっか~。ここまで馬鹿げた裁判が、後14分も結論を出すのにかかっちゃうんだ~。いや~やっぱり私の能力、【世界広域情報網(WWW)】になってから凄く便利だわ~! 生きてる頃は【限定記憶保管所】だったから、覚えたことを能力に預けないと情報が引き出せなかったけど、この能力になってから調べたいことを入力するとなんでも教えてくれるもん! あ、流石に未来予知は無理だったね。今起きている事象の終了予想ぐらいは出来るけど。


「その能力、名前はあるの……?」


 お姉ちゃんがこしょこしょボイスで耳打ちしてくるけど、それなにもない空間に対して内緒話してるように見えるだけだって~!! お姉ちゃんってば、本当おっちょこちょいなんだから~。

 ん~でも、言われてみたら確かに? どういう能力なのって検索した時に【世界広域情報網】って出ただけで、これが能力の名前ってわけではないかも?


『【私の能力の名前】で検索中……。1件の結果が見つかりました。名前は【世界の正位置】――【世界の正位置 能力 持っている人】で検索中……。1件の結果が見つかりました。エルエニア・リリーのみが保有者(アルカナホルダー)です』


 アルカナ、ホルダー……!? まさかこれが、大昔に世界を破滅寸前に追い込んだイノーマスを撃退したっていう、伝説の能力者達の能力の1つなの……!? え、私が!? そうだったの!?


『【私の生きていた時の能力 名前】で検索中……。1件の結果が見つかりました。名前は【世界の逆位置】、思考パターンから追加検索。【世界の逆位置】等の逆の能力を所持している保有者を、反転保有者(リバースホルダー)と呼ぶ』


 わあ、思考を読まれた! リバースホルダー、つまり能力が反転した状態ってこと……? ええっと、前の能力は限定記憶保管所で、それが反転して正しい能力になったから、世界広域情報網になったってことかー!! ほえー凄い、死んだからかなぁ?


『【エルエニア・リリーの姉 能力 名前】で検索中……。1件の結果と予測検索結果を表示します。名前は【力の正位置の保有者(アルカナホルダー)】、あらゆる力に秀でているアルカナホルダーです。筋力、魅力、免疫力、防御力、視力等、力と付くものを磨き上げることで、その能力を増加させ続けます』


 あ、納得した。納得しちゃった。そっか、これがお姉ちゃんの人外オブ人外である所以かあ! ゴリラの能力なのかなぁって思ってたけど、力の正位置って能力だったんだね! あれ、やっぱりゴリラじゃない? うん、ゴリラだ!! メスゴリラ!!


『【イヴ・リース 能力について】で検索中……。こちらが見つかりました。名前は【悪魔の正位置の保有者(アルカナホルダー)】、相手の要求を受け入れる代わりに、対価を奪うことが出来る能力です。また、無条件で相手のささやかな秘密を知ることが出来る能力も有しており、貴方が――――転生者であることも知られています』


 へ……? 嘘、絶対、バレてないと思ってたのに……!! こんな重大な秘密が、ささやかな秘密としてバレてるってこと!? う、嘘……。ええ、怖い……。今度からプリンを黙って食べたりしないでおこ……。

 まあね、確かに! バレたからなんだって言う話よ! バレたから生かしておけないってわけじゃないし、知られたからってなにか問題が発生するわけでもない。思えばささやかな秘密だわ!


「――以上、エメラルダ商会の主張は却下! 今後もマギアの所有権はヒルガオ商会が保有するものとする! この判決に不服がある場合、エメラルダ商会は本裁判に控訴し――」

「やっと終わったわ。馬鹿馬鹿しいわね」

「システィーナ、お主……。意外と頭が切れるほうなのじゃな……」

「そんなにスパスパしていないわ」

「あ~……。利口なのじゃな、という意味であってな……」

『お姉ちゃん、イヴちゃんがケーキを作って待ってるよ! 早く行こっ!』

「そうね、それじゃあ急いで行きましょう」


 あ、お姉ちゃんの急いではちょっとマズい! でもストップって言う前にお姫様抱っこされちゃったんだけど、これはもう間に合わな――ッ!!


『あぁあああああ~!! お姉ちゃん、幽霊になってもこのスピードは初めてかなぁあああ~!!』

「フィールさんは気を失ってしまうけど、エルちゃんは大丈夫なのね。強いわね」

『んわぁああああ~!! 安全装置なしのジェットコースターは無理ぃいいい!!』

「私が安全装置よ」


 あ~やっぱり、やっぱり飛んだぁああ~!! 飛んだっていうか、跳躍なんだけど! いや無理これ、こんなスピードでいつも騎士の宿舎から屋敷まで来てたの!? ひぃ!! ひえええ!!


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