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限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら  作者: フオツグ
限界オタクと妹と。

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限界オタクが魔王軍幹部と世間話してみたら

「完全にはぐれたね……」


 イオリとノヴァははぐれたヒナとリブラを探していた。

 聖女降臨祭の事件もあって、街中の警備が強化されているとはいえ危険だ。


「妹聖女様の方は兄貴と一緒なら大丈夫だろうけど、オレ達の方は……。はあ、オレのスキルがもっと使えたらなあ」


 死体を操るスキル《死霊の指揮者(ネクロマンス)》──街中では一切使い物にならないスキルだ。


「自分のことを悪く言わないで、ノヴァくん。大丈夫だよ。騎士団の人もここにはたくさんいるし、魔物が現れてもきっと何とかなる!」


 イオリが慰めても、ノヴァの表情は暗いままだった。


「とりあえず、ヒナ達を見つけよう! 二人も探してるだろうから──」

「そこのお二人さん、うちの店を見ていかないか? 安くするよ」


 イオリが歩き出そうとした時、店主の青年に声をかけられた。

 他の店主は立ちながら大きな声で呼び込みをしているというのに、その青年は地面に座り込み、ひっそりと物を売っていた。

 金髪で金の瞳をした、色素の薄い男。白いローブで体を覆い、フードを目深に被っている。 

 イオリはその青年の顔を見て、顔をこわばらせた。

 ノヴァは歩み寄り、店に並んだアクセサリーを眺めた。


「へえ、シルバーアクセサリーか」

「ああ。ボクが錬金術で作ったんだ。……この場合、〝錬金〟と言うより、〝錬銀〟と言った方が良いのだろうか」


 白いローブの青年は心底真面目そうな顔でそう呟いた。


「は、はあ……」


 ノヴァは反応に困った。


「銀には魔除けの効果もある。どうかな。一つ買っていかないか?」

「じゃあ、少し見させて貰おうかな」

「どうぞ。是非、そちらのお嬢さんも」


 白いローブの青年はイオリに目を向けた。

 ノヴァもそれに倣うようにイオリを見た。


「イオリ? どうしたんだよ」


 ノヴァは顔をこわばらせたまま固まって動かないイオリを心配そうに見つめた。


「……ふむ」


 白いローブの青年は顎に手を当てた。


「どうやら、姉聖女にその者の真贋を見極める力があるという噂は事実のようだ。非常に興味深い」

「え……?」


 ノヴァは首を傾げた。


「の、ノヴァくん」


 イオリは震える唇を何とか動かした。


「その人、魔王軍の──」

「魔王軍幹部スターダスト第二等星・ヴェニュスだ。人間の姿では初めまして、元第七等星・ノヴァ」

「なっ……!」


 ノヴァはヴェニュスからイオリをかばうように前に出た。


「まあ、そう身構えないでくれ。今日はものを売りに来ただけだから」

「信じられるか……!」


 ノヴァはヴェニュスを睨みつけた。

 ヴェニュスは非常に落ち着いていた。


「人間の国で流通している貨幣が欲しいだけだ。魔王軍の貨幣は交換出来ないから、こちらでものを売って手に入れるしかない。だから、錬金術の副産物を売って稼いでいる」

「金を手に入れて、何をする気だ?」

「人間の領地でしか手に入らない材料がいくつかあるんだ。それを買う気でいる」

「だから、それを手に入れて何を企んでいるのかを聞いてんだ」


 ノヴァは足を踏み鳴らし、苛立ったように言った。


「企む……? ああ、ボクが魔王様に命令されて資金を集めてると思われてるのか。それなら、心配は要らない。これは魔王様に命令されたのではなく、ボクの意思で出店している」


 ノヴァは頭をがしがしとかいた。


「埒が明かねえ……。回りくどい言い方はやめる。魔呼びのライアーを妹聖女様に渡すよう、ホムンクルスに指示したのはお前だろう」

「何の話だ?」

「前の【水瓶座の守護者】アルバリ様を使ってアクアーリオ博士や偽アルバリ──ホムンクルスを作ったのはお前かって聞いてんだよ!」

「アルバリ……? それが何かは知らないけど、魔呼びのライアーとホムンクルスを作ったのは確かにボクだ。だが、指示については全く身に覚えがないな」

「ホムンクルスの体内に爆弾を仕込んで、自爆させたんじゃねえか……!」


 ノヴァは自爆したホムンクルスを思い、拳を握った。


「そのホムンクルスはキミじゃないし、キミ達人間の仲間でもない。キミが怒っている理由がわからないな」


 ヴェニュスは心底不思議そうな顔で言った。

 本当にわかっていないようだ。

 ノヴァはそれが何よりもどかしく思ったことだろう。


「確かに錬金術は魔王軍に貢献している。だからこそ、ボクは第二等星の地位を手に入れることが出来た。研究結果は魔王様に報告しているが、それをどう使おうが、ボクには関係ないことだ」

「まるで、他人事だな」

「実際そうだから。ボクとしては、戦争を早急に終えるべきだと思う。戦争は環境を破壊する。錬金術の材料が減ってしまうのは困るんだ。人間が降伏してくれたら楽なんだけど」


 ヴェニュスは「どう思う?」と質問をした。

 ノヴァとイオリは何も答えなかった。

 降伏する訳がないとわかりきっているだろうと半ば呆れていた。


「人間も少しは残して良いと思うんだ。人間の素体は錬金術の材料になるからね。そうすれば、ボクもこうして、人間を買うために資金調達をしなくて済む」

「人身売買に手を染めてるのか!?」

「えっ。買っちゃ駄目だったのか。売ってるから、買って良いものだと思っていた」


 ノヴァは深いため息をついた。


「お前達とは根本的に考え方が違うんだな」

「だからこそ、ここまで戦争が長引いているんだろう。でも、ボクは魔物の中でも異端だから、皆がボクのような考え方ではないとだけ言っておく。あまりボクを参考にするのはおすすめしない」


 今のやりとりで、魔物とは一生わかり合えないと確信した。

 そして、ノヴァは他の魔物とは違うことも。


「魔王軍は人間を劣等種だと思ってる。だからみんな、人間を『愚かだ』と馬鹿にする。ボクもそれには賛成だ。こんな欠陥だらけの体でよく暮らせるものだと思う」


 筋力はオークに全く敵わないし、コカトリスのように自由に空も飛べない。

 五感も全く優れてないし、賢い訳ではない。

 同じ種族同士で衝突することもある。


「野生では絶対に生き残れない。では何故、魔王軍がキミ達に手を焼くのかだが……キミ達が神に愛されているからだ」

「神に愛されている……?」

「気づいていないのか? 各々に与えられる固有スキル……神の寵愛の証だ。ボクがホムンクルスを作ったのは、人間の固有スキルを手に入れるためだ。だが、固有スキルの再現は未だに出来ていない」


 ノヴァの頭にアクアーリオの言葉が過ぎった。

──「ボクは失敗作さ。固有スキルを発現出来なかったからね」

 だから、アクアーリオは失敗作として捨てられた。


「そんな重要な情報を教えて良いものなのか?」


 ノヴァはヴェニュスを睨みつけた。


「嘘をつくべきだったのか? じゃあ、今のは聞かなかったことにしてくれ」

「する訳ないだろ」


 ノヴァは呆れてため息をついた。


「さて……。何か買っていくか? サービスするよ」

「買わない」

「そうか。人間はサービスという言葉が好きというデータがあるんだが、店主に嫌悪感があるとその限りではないみたいだな。またいつでも来てくれ」


 ヴェニュスはそう言うと、黙り込んだ。

 もう用はない、と言うように。


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