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限界オタク聖女が敵の拗らせゾンビ男子を溺愛してみたら  作者: フオツグ
限界オタクと妹と。

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限界オタクが仲間入りを祝ってみたら

 明星寮、イオリの自室にて。


「ノヴァくんの正式な仲間入りを祝して……乾杯

!」


 イオリ、ノヴァ、リブラ、ヴァルゴはそれぞれ、コーヒーカップとティーカップを上に掲げて、乾杯した。


「一時はどうなることかと思ったけど、ノヴァくんがみんなに認められて良かった……!」


 イオリは涙を流して喜んだ。


 聖女降臨祭の最中、魔物の襲撃に遭ってから数日が経ち、火の都は日常を取り戻しつつあった。

 魔物の襲撃は、妹聖女・ヒナが魔呼びのライアーを弾いたことが原因と明言された。

 ヒナ──延いては【星の聖女】のイメージが悪くなるが、仕方のないことだ。

 ヒナがライアーを弾いたところは、広場にいた全員が見ていた。

 その後、魔物が襲撃してきたのだから、誤魔化しようがないことだ。

「魔物の手によって、魔呼びのライアーが国内に持ち込まれた。他にも、魔呼びの品が持ち込まれた可能性がある。注意するように」と国民達にも注意喚起がなされた。


「妹聖女様に襲いかかったのに、何のお咎めもなしとはな……」


 ノヴァは申し訳なさそうに眉を下げた。

 ノヴァがヒナに襲い掛かったこと──それは、魔呼びのライアーを弾くヒナを止めるためだったことにされた。

『嘘も方便』とは、よく言ったものだ。

 その後のノヴァの行動──侵入したゾンビを森に戻したことや魔王軍幹部の一角を追い払ったことが認められた。

 ノヴァは〝協力者〟として、正式に聖ソレイユ王国の一員となったのである。


「なんかみんなを騙してるみたいで悪い気がするな……」

「何言ってるの! そうまでしてでも、ノヴァくんの力が必要だってことだよ!」


 イオリは無邪気に笑った。


「そ、そうかぁ……?」

「そうだよ!」

「……じゃあ、そうかも」


 イオリとノヴァは笑い合った。

 そんな二人の様子を、リブラとヴァルゴは温かい目で見つめていた。


「期待に応えられるよう、頑張らねえとな。また暫く、ここを離れることになる」

「【墓場の森】に遠征するの?」

「ネプチューンに壊された壁の修復を手伝いに行くんだ。工事中、ゾンビがちょっかい出さないように見張ってくれってさ」


 ノヴァは褒められて喜ぶ子供のように笑った。

 誰かの役に立てることが嬉しいのだろう。


「ゾンビだからと迫害する者はこれから少なくなるでしょう」


 リブラが言う。


「え?」

「先日、報告がありました。偽アルバリが見つかったと」

「え!? 捕まえられたんですか!?」

「いいえ。騎士団が捕まえる直前、自爆したようでして」

「自爆……!?」

「体内に爆弾が仕込まれていたようです」


 それにより、魔王軍側の人間がいることが明らかとなった。

 しかも、彼には【星の守護者】の証に似た紋章が頬にあったというではないか。

 見た目が人間でも油断してはいけない。


「近々、偽の【星の守護者】について、注意喚起がされます。偽の【星の守護者】を見つけたら、慌てず騒がず、騎士団に報告するように──と。イオリ様も見知らぬ【星の守護者】を見つけたら、直ぐに我々へ伝えて下さい」

「ああ、私は大丈夫です。【星の守護者】の顔は全員覚えていますから」


 リブラは首を傾げた。


「トローは聖女召喚の儀以来、音信不通となっています。イオリ様は彼と顔を合わせたことはないはずでは……」

「トローさん、結構印象に残る外見をされてるじゃないですかー。だから、覚えてるんです!」


 イオリは笑って誤魔化した。

 聖女降臨祭事件は、人々の認識を大きく変えた。

 イオリを含む【星の聖女】のことも……。

「姉聖女様はゾンビに魅入られ、妹聖女様は魔物に唆され……。一体、どうなっているんだ。今回の聖女様は問題ばかりではないか」……そんな声が聞こえてくる。

──やったことがやったことだし、仕方がないんだけどね……。

 心配なのはヒナのことだ。

 ヒナは人の評価を人一倍気にする性格だ。

──気に病んでないと良いけど……。

 そのとき、部屋の扉がノックされた。


「あれ。誰だろう」


 イオリは立ち上がり、扉を開けた。

 そこには、ヒナとベリエが立っていた。

 ヒナは俯いている。


「ヒナにベリエ王子……? 一体どうしたんですか?」


 イオリはベリエに尋ねる。


「ヒナが姉聖女様に話があると。……ほら、ヒナ」


 ベリエはヒナに言葉を促した。

 ヒナは少し顔を上げ、視線をうろうろとさせた。


「お姉ちゃん……」


 ヒナは頭を下げた。


「ごめんなさい」

「えっ!?」


──ヒナが謝った……!?

 イオリは驚愕した。


「い、いきなりどうしたのよ、ヒナ」

「みんなに迷惑かけたから、謝らないとって思ったの。まずは、お姉ちゃんにって」


 ヒナは手に持った巾着袋をおずおずと差し出した。


「これは……?」

「お姉ちゃんの部屋から盗んだお金、ちゃんと返さなきゃなんだけど、金額を覚えてなくて。とりあえず、これだけ……」


 つまりこれは、返済金ということだ。

 イオリがため息をつくと、ヒナは肩を飛び上がらせた。


「……わかった。受け取るね。返済するのはこれだけで良いから」

「え?」


 ヒナはきょとんとした。


「あはは。実はね、いくら貯まったか覚えてないの。だから、これで十分。その代わり、一つ約束して」

「な、何?」


 ヒナは身構えた。


「周りの人の言葉はちゃんと聞くこと! 特に、お説教はね」

「う……。説教は嫌いだけど……わかったわ。勉強もちゃんとする! ヒナ、知らないことばっかりだし。それでまた、みんなに迷惑かけるの嫌だもの」

「驚いた。ヒナが勉強するって言うなんて!」

「お姉ちゃん、ヒナのこと、なんだと思ってるの?」

「大の勉強嫌い」

「間違ってないけどぉ……。ヒナだって、やるときはやるのよ!」


──ヒナ、成長してるのね。

 イオリは胸が熱くなった。


「いけません、イオリ様。金銭のことはきちんとしませんと、ヒナ様のためにもなりません」


 リブラは真面目な顔でそう言った。


「兄貴って本当に空気読めないよな」


 ノヴァは呆れた。

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